〜竜と女の子の物語@〜
ある所に竜が居ました。
全身を赤い鱗で覆われた、
とても大きくて強い竜でした。
竜が一度暴れると、
その大きな口は炎を吐き。
大きな翼は大風を起こしました。
その度に、山が崩れ、
谷が埋まり、町が壊れました。
山の動物達も、町の人間達も、
竜を怖がり近づきません。
竜は、ずっと、ひとりぼっちでした。
キレイな物に囲まれていれば、
寂しくなんてありません。
竜は宝物を集めるのが好きで、
住み家に財宝を溜め込みます。
それを知った町の男達。
竜を退治して、
宝物を手に入れようと考えました。
しかし、竜の鱗は硬く、
剣でも槍でも傷つきません。
住み家に押し入られて怒った竜。
仕返しに町で暴れ、町を壊します。
「竜が暴れて困っているんです」
事情を知らない人々は、
お城の兵隊達に頼ります。
竜を退治してくれるように頼みました。
大勢の兵隊が竜を退治しに行きます。
ですが、誰も帰って来ませんでした。
それからも、竜の宝を狙う者は
後を絶たちません。
住み家を荒らされる度に
竜は怒り、暴れ回ります。
竜と町の人々は、
日増しに仲が悪くなって行きました。
そんなある日の事。
どこから迷い込んだのか。
竜が住み家の山に帰ると、
1人の女の子が居ました。
酷く痩せ、粗末な服を着た、
とても小さな女の子でした。
竜は女の子に聞きました。
「ここで何をしている」
「お母さんが病気で、
薬を買うお金が要るんです。
宝物を分けてもらえませんか」
暴れて疲れていた竜は、面倒になりました。
宝物を1つまみ、女の子に差し出します。
それは大きな竜にとって、
ほんの1つまみの宝。
しかし小さな女の子には、
両手いっぱいの宝物でした。
「これだけやるから、
さっさと帰ってくれ」
次の日の事。竜の所に、
また女の子が現れました。
どうやら昨日と同じ子です。
「今度は何の用だ」
「お母さん、おかげで元気になったの。
だから、お礼を言いに来ました」
「何だ、用事はそれだけか?
用が済んだのなら、帰ってくれ」
それから、次の日も、その次の日も。
女の子は竜に会いに来ます。
「昼寝の邪魔だ」
「用は無いんだろう」
「親が心配するぞ」
竜がそう言えば、帰って行く女の子。
ですが、次の日になると、
女の子はまた現れます。
「お前は人間だろう。人間の子と遊べ」
竜がそう言うと、その女の子。
少し悲しそうな顔をして帰って行きました。
そして次の日、また現れた女の子。
先日の様子が気になっていた竜は、
聞きました。
「お前、友達が居ないのか?」
女の子は小さく頷きます。
竜は、もう、帰れとは言いませんでした。
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