〜魔王と姫の物語@〜
昔、ある所に、1人の若い男がいました。
男はとても力のある魔法使いでした。
「強いからって、いい気になりやがって。
仲間に入れてやらないぞ」
共に魔法を学ぶ同僚たちは、
その男を嫌いました。
しかし彼は、それを気にもしません。
「弱いからって、ひがみやがって。
仲間なんか要らないぞ」
男は人付き合いが苦手でしたが、
大体の事は1人で出来ます。
だから友達が居なくても、
不自由はしないのです。
才能があり、驕らず努力も重ねます。
男は同僚の中で誰にも勝る、
一番の魔法使いになりました。
その力を恐れた彼の師匠は、
ある時、彼に言いました。
「お前の才能は大した物だが、
決して悪用してはいけないぞ。
魔法に限らず、人の力は、
人を助ける為にある物だ。
必ず正しい事に使うのだぞ」
「はい、先生」
ところが、その一方で。
彼の師匠は欲深な所がありました。
師匠は人々の頼みを聞く度に、
法外な見返りを要求します。
ある時、男が村を出歩いた時。
村一番の美人と評判の娘が
泣いているのを見つけました。
聞けば彼女は、
父親が重い病を患っています。
街の医者でも治せなくて、
頼りは魔法使いの師匠。
しかし師匠は、ただでは治してくれません。
美人の娘は師匠から、
結婚を迫られてしまいました。
父を助けたく、しかし望まない結婚。
娘は心を痛めています。
「力は正しい事に使うのだ。
自分の言った事も守れないのか」
娘の話を聞いた男は、
師匠の家に押し入ります。
すると師匠は寝ている様子。
男は師匠を氷漬けにして、
殺してしまいました。
事情はどうあれ、
人を殺した魔法使いの男。
彼は村を追われる事になりました。
「悪人を退治したのに、
どうして私が出て行くのか。
こんな村は間違っている。
こんな村を放っておくのは、
世間の為にならないだろう」
男は魔法の杖を一振りすると、
村に火を放ちます。
村は見る見るうちに、
焼き払われてしまいました。
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