黒鷲の旅団
11日目(1)村落防衛戦
〜転落の始まり〜
午前、3時過ぎぐらいか。
何かが動く気配で目を覚ます。
見ると、イェンナ、ペトリナ。
もそもそ動き出していた。
寝付きが良かったからな。
探知、空間魔法。
数キロ先に魔王軍の気配。
敵マークの赤い点が塊になっている。
残りの子を起こす。支度を始めよう。
歩哨のジゼルに手を振る。
交代か聞かれるが、戦闘準備を促す。
準備……どうしたらって?
まずは武具の用意を。
あと食事と排泄を済ませておくぐらい。
聞いていたユッタ。
いそいそとトイレへ。
トイレへ向かい……しかし。
凄い顔で慌てて戻って来た。
その後ろから追って来る小さい影。
敵襲! 入り込まれてるぞ!
黒ずくめのゴブリンを拳銃で排除。
数、4。いつの間に入られた。
再度探知。
約500m地点へと敵反応が集結中。
ジゼルが慌てて仲間達を起こしに行く。
俺は倒した相手を確認する。
ゴブリンの、恰好は忍者か暗殺者風?
探知に引っ掛からなかった。
隠密系の魔法かスキルでも使ったか。
便所周りを確認。
もう隠れていないか。
ユッタ、行っといで。
まだ大丈夫だから。
「あ、えと、聞かれてると恥ずかし……
わああ、やっぱり怖い! 見張ってて!」
ドアの前で、お便所の護衛。
……ちょろろろろ。
聴覚スキルが余計な音を拾って来る。
一度意識してしまったせいか。
出て来るユッタ。
頬を赤らめ、複雑そうな顔。
気まずいとか言ってる場合じゃないな。
彼女を連れて村の正面へ。
「おっちゃん、ユッタ、遅いぞ!」
「おじさま、ご采配を!」
他の子供達はもう並んでいた。
3列横隊、3段射撃態勢。
敵の距離は。
空間・探知・解析と演算。
ふと、測量魔法を生成した。
ここへ来て、どの要素が噛み合った?
便利だから構わんけれども。
敵反応、西門正面から接近中。
空間・演算魔法により測定。
距離およそ300m。
強射・遠射の複数射。
照明魔法付与で矢を放つ。
……見えた、が。
あんまり見るんじゃなかった感。
百を裕に超えるゴブリン大集団だった。
トロールが居ない。
こいつらは前座だろうか。
しかし、この数はゴブリンでも脅威だ。
次の手を。
閃光魔法付与。強・遠射・複数射。
ゴブリン集団の中に強い光が落ちる。
すかさず狙撃。
ユッタ、イェンナ、フェドラ。
あとの子は射程外だ。待て。
もう少し引き付けろ。
距離、250m。
行けます、とルーシャ。
随時撃ってよし。
カリマ、カーチャ、ノイエも続く。
ぴょいん、と矢が1本だけ飛ぶ。
見えてるけど届かないにゃ、とジェマ。
ネコ科の獣人、夜目が効く様だ。
こうだよ、とマリナが弓を上げる。
弓兵隊、総員遠射態勢。
距離、200m。
マリナの得意な射程に入った。
エメリナは腕力で劣るものの。
その精度はフェドラ、マリナに次ぐ。
180m辺りからジェマの矢も届く。
アンゼさん達、花人チームも狙えるか?
マルカとフレヤの矢は飛び過ぎ。
もう少し狙いを下に。
もう照明が及ばなくとも。
薄らボンヤリと敵が見える。
俺も迎撃。鎧の奴を狙撃銃で狙う。
距離、150m。弩兵隊も斉射用意。
レーネ、号令任せた。
「撃てぇーっ!」
早ッ。レーネの号令。
綺麗に揃って太矢が飛ぶ。
ティルアやツェンタ、上手く仕留めた。
アイリス、当たってる。次の矢を。
テルーザ、撒いて撒いて。
装填ハンドルの音が忙しい。
見かねたペトリナが駆け寄って手伝う。
距離、120m。
焦れた村の子達が攻撃に参戦。
グレン、レスター、もう少し上を狙え。
リンダは少し飛ばし過ぎだが。
当たってるからそれでも良い。
距離、80m。
敵からも応射の気配。
障壁魔法で対処。使い手は花人達だ。
結構な人数を揃えてくれている。
標的は弓兵ゴブリン。
ユッタとフェドラが率先して撃破する。
もう弓は無いのですか!と近衛隊。
それと悲鳴……悲鳴? 側面方向。
「ハインリヒ君、マズいぞ!」
バロンの声。村の中?
オオカミに乗った騎兵ゴブリン。
近衛隊が戦っている。
捌き切れていない。
村人に被害が出始めている。
探知を掻い潜られた?
騎兵だろう。暗殺者じゃない。
側面のバリケードを突破されたのか。
一体どこから……
反省は後だ。対応しないと。
横目に村人が目に入った。
宿屋のデイジー、木こりのユアン。
やられた後だ。
内臓をぶちまけている。
くそ、後退だ。
教会まで下がって立て直す。
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