黒鷲の旅団
27日目（９）懸念も残りつつ
「まあ……マシと言えばマシなのかしら」
外縁チームとキャンプ地で合流。
ロジェ達から話を聞いたのだろう。
バルビエ夫人の評価だが。
多少なりとも軟化していた。
勿論、このままでも良くない。
良いとは俺も思っていない。
戦いから離れられるに越した事は無い。
生活環境の向上。
職業技術の訓練も、と提示するが。
夫人の懸念はそこよりも。
むしろ、俺の所帯？
「ほら、その……心配でしょう？
その気が無くても間違いが起きたりとか。
随分とオマセな子も居るみたいだし」
そういう夫人が目で追う先が、アンヌ。
あれはオマセと言うか。
中身が大人なんだけれども。
他の子は……まあ、はい……
考えてみます……
こちらの状況。は、昼飯の支度中。
野営の準備はあまり進んでいないか。
砦がどうだか分からなかったからな。
結論から言って、砦の再利用は絶望的。
更地にして建て直した方が早そう。
土地だけ借りるとして。
今日の野営はここかな。
現在地。コドレアの少し東地点。
ドゥムブラヴィツァも平定後。
まだ治安は改善中の様だ。
交代で見張りを立てないと。
砦の接収は空振りに終わり。
では何が得られたか。
まずは新入り。花人第３小隊。
ガーベルヒルト達。
引き続き連れて行く事にした。
隊長ガーベルヒルト・ガーベラ
・ハイデンライヒ。
副長アルティーア・アルストロメリア
・グートハイル。
カレデリッサ・カレンデュラ・ブロスト。
ガデリア・ガーデンダリア・キューネルト。
ネルネリーザ・ネリネ・クーネンフェルス。
ネフィーラ・ネモフィラ・マイヤーハイム。
相変わらず、どこか仰々しい名前。
アルラウネ亜種。
あるいはアルラウネ貴種。貴族。
「我、ガーベルヒルト
・ガーベラ・ハイデンライヒ。
ここに忠義を誓い。
御身が剣となり盾となりてー」
「あーう。がーべ」
「あんぜー。あーう」
ガーベさん、変貌？
途中まで真面目口調だったのだが。
寄って来たアンゼさん。
求められるままハイタッチ。
同時、緩いノリに。
まあ、こっちがデフォルトなんだろう。
こちらの視線に気が付いて照れ照れ。
まあ、肩肘張らなくとも問題無い。
エルダーデーモン率いる悪魔軍団は、転移。
アンヌの転移魔法で移送された。
魔王軍増員として徴兵されるらしい。
ただ、エルダーだけ残って話をしている。
要調査事項。
１つ問題として残ったのが、召喚。
どうして悪魔が召喚されたのか分からん。
エルダーデーモンの証言。
何か術で召喚されたと言う。
ただ、契約を交わすべき相手が不在。
それで好き放題に動き始めていたらしい。
術者不在で発動する召喚術……という事か？
砦に何か仕掛けがあったのだろうか。
分からん。エルダーデーモンも首を捻る。
呼びっぱなしで従えないとか。
これは誰得なのやらと。
解析魔法には特に反応が無く。
使い捨て？ 地雷代わりか？
完全に消えたなら良いが。
時間や条件で復活しては困る。
その跡地に何か建設して。
それでまた悪魔が出たら……
砦跡地の利用は調査が済んでからだろう。
専門知識のある人材を連れて来ないと。
他方、黒獅子隊の戦果。
投降して来た賊兵。
生存者は10名足らず。
恐怖体験を経た。
軒並み協力的なのは良いとして。
増員と言う意味では少数。
大して足しにならなかったかな。
ただ、手下悪魔を複数撃退したからか。
称号『デーモンハンター』が発生。
取得した者が複数居る。
隊長他、十人長クラスで数人。
加えて……俺もか。
うちの子でも何人か。
バフ効果は悪魔に対して攻撃力＋５％。
活かす機会があるか分からんが。
黒獅子隊の面々は喜んでいる。
まあ、箔が付くという奴だ。
戦果確認は一旦そんな所で。
個々人で成果を見せたい子も居るかな。
昼食は。先にメシにしよう。
メインは、ごった煮シチュー。
肉と野菜たっぷり。
小麦が高騰してパンがありません。
炭水化物は蒸かしたイモがメイン。
バターがある？ それは美味いだろう。
乳製品、畜産品は今の所高騰していない。
「俺の獲った肉はー？」
「おじさんに食べさせたい」
グンター、メリカ。拘らなくても。
外縁チームの獲った肉類もシチューの中。
ダシとかどっか入ってるだろう。
味付けはマイナさん監修。
野菜が不揃いなのは誰かの手伝いか。
ちょっと目を反らしたのは２人。
フランカとヴラスタ。
ちゃんと美味いから大丈夫だ。
ごろごろサイズの方が腹にも溜まる。
皆に行き渡っているのを確認して。
もう２杯目を取りに行ってる子が居る
ツェンタとアイリス。食いしん坊。
カーチャとフリーダも続く様だ。
早いよー。俺もお代わりしたい。
腰を上げたフリーダを目で追って。
その向こう、村の方に騎馬の一団が見えた。
狐の旗はイェルマイン達だな。
ポータルで村から。
これは何かあったかな。
昼メシ食いに来たでも無いと思うが……