黒鷲の旅団
27日目(8)パンツが飛んで
悪魔が土下座して?

『イェンナちゃん、パンツパンツ〜』
『おー。パンツ来たぜ、パンツ』

 フェドラとイェンナ。
 言いながら持ち出した大物。
 DNAG パンツァーファウスト3。
 3-IT600かな。

 使うのは良いとして。
 もっと他に略称は無かったのか。
 パンツで倒される悪魔。字面が酷い。
 通信魔法の映像の端。
 アンヌとか笑い転げてるし。

 強化魔法で補助。
 数人がかりで持ち上げて、発射。
 パンツもとい対戦車擲弾が飛んで行く。

 悪魔の軍団に、子供達の矢弾が降り注ぐ。
 対抗する悪魔達は障壁魔法を展開。
 生身の魔法耐性を活かしつつ。
 物理投射を魔法で防ぐ。
 魔法反射魔法と物理障壁魔法。
 この同時展開は難しい。
 悪魔でも、この魔法運用は避けられない。

 矢弾自体の攻撃力。
 これは障壁魔法で消失するとして。
 付与で矢弾に載る魔法の量。
 矢弾の体積と魔法の親和性に寄る。

 魔法を直接撃ち込むのに比べ。
 付与は魔法自体の威力が落ちる。
 それでも数を撃って魔法も強力だ。
 ダメージが重なって来る。

 魔法全般が得意なフェドラ。
 燃料気化爆発魔法。

 あと誰か、雷系が得意な子。
 重陽子爆発魔法など覚えたか。
 いや、アレは数人での連携技かな。

 半堕天使ノイエの神聖魔法なども効果的。
 他の魔法矢弾に混ざっている。
 油断している所に抜けて来る。

 特に手下のレッサーデーモン。
 知能も幾分低いもので。
 不意の神聖ダメージ。
 慌てて魔法反射に切り替える。
 途端、ユッタ達の狙撃。
 頭を撃ち抜いて行く。

 魔法防御に寄せて来たら、今度は射撃。
 高火力兵器の出番だ。
 パンツ……ァーファウストもそうだが。
 銃士隊の狙撃銃、黒獅子隊のカルバリン砲。
 屈強なグレーターでも無傷とは行くまい。

『ティルアちゃん、やるよ!』
『アレか! あいよっ!』
『『るるらららららららー!』』

 通信の先。
 声を合わせるエメリナとティルア。
 途端、味方全体にバフが発生した。

 マーメイドとセイレーンの歌声スキル?
 各種パラメータ増加。
 高揚。恐怖耐性付与。
 各種攻撃力も増加している様子。
 脳内ログのダメージ表示が明らかに増えた。

 子供達、黒獅子隊も。
 大して慌てる様子もなく。
 隊長、十人長の指示でよく戦っている。
 耐性付与のお陰もあろうが。
 何しろズメイを見た後だ。
 アレと比べれば、悪魔など可愛い物か。

 対し、守っていてもジリ貧。
 遅れながらも悪魔軍団は前進を開始。
 開始するが、今度はジュス姉さんが妨害。
 連中の出足を止める為に潜伏していた。

 悪魔エルダーデーモン、レベル130。
 魔人ジュスティアーヌ、レベル1029。
 この差は歴然だ。文字通りに桁が違う。
 殴り掛かるエルダーの剛腕。
 姉さんはこれを片手で止める。
 攻撃魔法も気合みたいなので掻き消した。

「う、ぐ……ま、参りましてござる!」

 エルダーデーモン、土下座……ござる?
 手下の悪魔達もそれに倣う。
 降伏、という事で良いのかな?

「いや、降伏されても。
 どうしよっかコレ」

「馬鹿め、掛かっ
 うぼろごぶろぼぼぼぼお!?」

 俺に振り返るジュス姉さん。
 に、襲い掛かるエルダーデーモンだったが。
 軽く捻られ投げ飛ばされた。
 激しく転がるエルダー。
 悪魔らしい狡猾さだが相手を間違えたな。
 レベル差を知る手段を持ってないのか。

「ん? まだやんの? ん?
 良いよー。ヘイヘイ、カモンカモ〜ン?」

「ひぎゃあああ!
 ごめんなさいごめんなさい!
 嘘です嘘ですゴメンナサイもうしません!」

 流石に力の差を実感しただろう。
 再びの土下座。もう戦意は無さそうだ。

 改めて……どうしよっか、の件だが。
 変に残すより、お帰り頂けないか。
 エルダー曰く召喚の儀式は一方通行。
 送還は送還で面倒な儀式が要るらしい。

 戻れない、と。
 なら、魔王軍に編入して貰ってはどうか。
 ジュス姉さんの直轄部隊か何かに。

「キミの部下にプレゼント〜って、どうかな」

 俺だと必殺・土下座返しされたら怖い。

「あ、じゃあ、共同財産的なのは?」

 部下は財産じゃないだろう。
 ふぇーいと口を尖らせるジュス姉さん。
 そんなに要らないか。
 役に立ちたかったか何か。

「あのー、どういったご関係で」
「あれがそれにふんふーんな感じの」
「ほうほうほう、それはそれは」

 ひそひそ話しているのはエルダーと。
 寄って来ていたアンヌ。
 誰が誰それで何がふんふーんだ。
 エルダーデーモンも何を分かり合っている。

 えー……状況。
 まあ、細かい確認は後だな。
 待っている子達も居るし。
 帰って昼飯にしよう。

 バルビエ夫人はまだ居るか。
 これは正直分からんけれども。



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