黒鷲の旅団
29日目(19)身を挺するってもこれは酷い

「あっ、ごめ……ぶーっ!
 ぶふはははは!
 あーっはっはっは!」

 アンヌ、膝を叩いて大爆笑。
 怒ったアンヌを止めようとした折。
 引き摺られた俺はズボンがずり下がった。
 半分ぐらい尻が露出。すぐにしまったが。

「おっとぉ、衝撃映像」
「いいぞー、ナイスヒップ〜」

 少し離れてヘリヤとシャンタル。
 いかんのに見られた気がする。
 くそう、忘却魔法使ったろうか。

 振り返ればジュス姉さん硬直。
 何とも言えない表情。

 フレスさんはいつもの笑顔……
 笑顔だが、鼻血吹いて横に倒れて行く。
 ああ、もう、大惨事じゃないか。

『見た!』『えっ、見てない!』
『えー、ずるいー』

 子供らからも通信が飛び交って。
 カーチャ、ずるいではなく。

『転写です! 誰か転写魔法を!』

 転写を欲しがってるのはレーネか。
 他人の恥ずかしい格好を拡散しない。

『ちっ、違います!
 個人的に鑑賞するだけです!』

 それはそれでヤメテクダサーイ……

『ほーい。行ったー?』
『前は? 前はー?』

 ティルア、さっそく配るんじゃない。
 ツェンタ、前はもっとダメ。

 まったくもって、何て無様だ。
 おっさんの尻1つで。いや2つか。
 アンヌの足が止まっただけ幸いだ。

「ぶっふふ! そうね。
 気が削がれた。
 パンチは勘弁してやっても良いわ。
 ナイスヒップに免じて」

 もう、ホント、忘れてくれ……

「え、えっと……何が?」

「何か聞こえていたんだろう。
 彼女が怒って彼が止めようと」

 よく分かってない様子のパティさん。
 見られてないのはむしろ良かったか?
 アウグストさんが説明している。
 俺からも、ちょっと釘刺しておく。

 聞き取り調査は構わない。
 ただ、アンフェアな誘導尋問は歓迎しない。
 それと、給料分の仕事はしてください。

 無言で激しく頷くパティさん。
 何だ。妙に素直だな。
 解析でアンヌのレベルでも見ただろうか。

 さて、ホントに気を取り直して。
 新魔法を模索する……前に。
 フレスさん、大丈夫ですか。
 鎮静魔法を掛けて助け起こす。
 特許の話もしないと。

 昨日の申請。
 催涙魔法は補助Bクラスで確定。

 伝承はSクラス5件、Aクラスが33件。
 Bクラス27件、Cクラス16件と……
 やや控えめ。売り上げ総額1160万。

 飢える様な状況ではない。
 しかし、捕虜の身請けだとか金を使う。
 それは俺が好きでやっている事だ。
 そこに子供らの金は使えまい。
 撃破報酬を稼がせているとは言えだ。
 借りずに済む様に稼がないと。

 今日の新魔法。
 構想は幾らか練ってある。

 反射、減退、鎮静魔法より。
 魔法消滅魔法デリート。
 魔法の効果を消滅させる。
 反射魔法では跳ね返る。
 跳ね返したくもない時用に。

 転写、反射、再現魔法。
 反転魔法インバート。
 魔法の効果を反転させる。

 反転……上手く行くかな。
 反転、温熱魔法より派生。
 冷却魔法チルド。

 フレスさんに確認を頼む。
 冷却魔法……は、既出か。
 申請前から特許取得ならず。
 魔法消滅と反転魔法を新規申請する。

 反転魔法は確かに有用だろう。
 逆が出てない魔法に試す価値がある。
 消えるだけのもあるかも知れんけど。

 もう少し、もう少し探したいが。
 既存魔法を見直して反転させるか。

 そうなると、意見を聞いて回るとか。
 図書館に少し籠っても良いかなあ。



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