黒鷲の旅団
31日目(19)公主根回し、アンヌがぎゃっと
『行き違いがあったのは認めるわ。
治療費や何かは補填する。
でもあんた達は感情を優先した。
勧告、警告があったハズよ。
申し開きがあるなら……はいそこ』
通信映像。イーディス公主。
市民を相手に説明会。
俺達がトゥルチャで合流を進める中。
丸投げ公主が出張先から帰還した。
彼女は急ぎ大ガーランド領へ。
魔王軍が暴れ散らかした後だ。
市民の鎮静化を図っている。
当の大ガーランド伯爵。
既に馬車で王城へ向かったらしい。
これを黙って待ってやらない。
出迎えには公主派の貴族達も居る。
彼らがまず足止めするだろう。
足止めして、その間。
ガーランド領の領民だ。
公主に反発的。
少なからず吹き込まれている。
領主を罰すれば暴れるかも。
反乱の芽。早い内に潰すに限る。
『攻めて来たかと思って。
抵抗しなきゃって思うだろ』
『怖いからって理性無くすなー?
書状持ってたでしょ。確認せーよ。
あたしに通信魔法は来てないぞ?』
『ま、魔王軍は、敵だし?』
『敵じゃない。敵かもだけど。
休戦中。攻撃しちゃダメ。
そりゃ取られた領地はあるけど。
それだって交渉したりしてて』
『ここで勝っとけばさー。
その交渉だって有利に』
『交渉中に攻撃すんなー?
交渉自体を破綻させる気かあ?
こっちが怒られるじゃん。
自軍の管理が出来てないぞって』
神人冒険者の言い分と。
それを慣れた様に躱す公主。
任せておいて大丈夫そうか。
そんな通信映像を横目に。
「ああ、これね。
ほいほいほいーと」
シャンタル、雑な魔法処理。
子供捕虜2人の前に魔法陣が浮かぶ。
頭の宝珠がキュポンと抜けた。
穴もすぐ塞がってしまう。
そんな簡単な措置で良かったのか?
俺には真似出来まいけれども。
外科的な接続ではなく?
魔法的な……うん、分からん。
詳しい事は分からんけれどもだ。
後遺症もなく外せる物で良かった。
「あんま良くないけどね、コレ。
やり様で爆発させられるんだよ。
これ付けた奴、絶対悪趣味」
不満げに言うシャンタル。
碌でもない代物に違いは無いかね。
ともあれ、命令受信機能を喪失。
これ以上、自害を強要されまい。
もう大丈夫だなと取り出して……
これ、ハンカチじゃなかった。
自害防止にと子供捕虜の口。
突っ込んであったのが、パンツ。
履いてたパンツ?
「咄嗟で思いつかなくて。
でもほら、靴下よりマシじゃない」
そうかもしれんけど。
返すよー。アンヌに放る。
ギャッと避けるアンヌ。
洗浄魔法は掛けたって。
ばっちくない。
「あ、何だ」
アンヌがパンツを拾おうとするが。
「うぇーい」
「ひゃっ!?」
「うわあ! ケツだった!」
「こ、こらあー!」
アンヌの背後からカーチャ。
悪戯者め、尻を触ったらしい。
女の子同士で何やってんだ。
男の子にされるよりマシか。
カーチャを追い回すアンヌ。
捕まえる。じゃれ合う。
ケラケラ笑う。
本気で怒ってるでもないのかな。
実質仲良しなのは良いんだが。
先にパンツを何とかせい。
振り返ればロジェが目逸らし。
バートが両手で顔を覆っていて。
何か見られちゃってないか。
えっちーと笑うアンヌ。
この場合えっちはお前だよ。
まったく……ひとまず引き上げよう。
子供達は屋敷に戻す。
村の駐屯地は大丈夫かな。
「テントとかは無事っす」
「村のがヤベェぐらい」
ヴィダルとテレンシオ。
まあ戦車が蹂躙した後だしな。
明日、復旧とか手伝うか。
子供達は就寝に向けるとして。
俺はもう少し仕事がある。
今度は大ガーランド伯の相手。
文句ぐらい言ってやりたいが。
向こうは何を言って来るか。
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