黒鷲の旅団
32日目(5)不調

「近い! 近いよ!」

 ユッタ、落ち着け。
 順番に倒せ。

 ダンジョン行。
 1つ失敗した。

 ザコ敵を掃討して。
 リポップまでに次の部屋へ。
 その、次にと定めた小部屋が罠部屋で。
 入ったら誰か死ぬレベルの罠。
 戻るか次を探すかで惑う。
 合間に敵リポップが始まってしまった。

 次の部屋は探知した。
 しかし距離がある。
 通路の角に陣取って掃討戦。
 まず安全を確保しなければ。

 ザコ敵の様相にも変化が出ている。
 ゴブリンにオーク。
 コボルドも混ざる。
 敵が多様化するのは厄介だ。
 間合いが変動する。
 思考の乱れ。対応が怪しくなる。

『大変! ヴィヴィちゃんが!』
『だっ、大丈夫です!
 こちらで何とかします!』

 通信。駆け込んで来たペトリナと。
 応じ駆け出して行くらしきはレーネ。

 外部でも事件が起きている?
 ヴィヴィ。雪竜人ヴィルヴァ。
 あまり思いを言葉に出さない娘だが。
 何か暴走しただろうか。

 レーネ達は支援の為、屋敷に詰めていた。
 こちらの戦闘音に気付いているのだろう。
 とは言え全員でもなく。
 外に出ている子も居る様だ。

 大丈夫だと言うが、まず自己保全だぞ?
 迷ったら、とにかく自分達の身を守る様に。

 通信先の状況も気になる。
 しかし焦って罠を踏むのも御免だ。
 一旦落ち着いて情報交換したい。

 ザコを蹴散らす。
 コボルドを斬りオークを撃つ。
 罠を探知、解除を考える。
 ユッタに迫るゴブリンを撃つ。

 ユッタ。彼女も応戦してくれるが。
 閉所。慣れない近距離射撃。
 焦っていて手元が危うい。
 狙撃銃。敵が近過ぎる。
 拳銃に持ち替えようとしてアタフタ。

 弾薬パック。
 ユッタ落とす。
 散らばる弾丸。
 拾っている場合でもないか?

 慌てるな。俺も見てるから。
 軽機関銃を掃射、敵を薙ぎ払う。

「わああ!」
「こあいー!」

 掃射の音に教会組3人が狼狽える。
 急に走り出すと怖い。
 あまり刺激したくも無いんだが。
 近接で取り零しても困る。

 アウローラさんは遊撃中。
 あちらを戻してはこちらも危ないか。

「う、ぐぶ」

 ユッタ不調。
 口元を押さえ、嘔吐。
 駆け寄りたいが俺の前にも敵。
 応戦しつつ呼び掛ける。
 落ち着いて。吐いて吐いて。
 無理に抑えなくて良い。

 ストレスか。閉所。死臭とか。
 精神的な所もあるだろう。
 寝不足だったかもしれない。

 コンツェッタがユッタの背中を擦る。
 擦っていて……吐いた。
 コンツェッタも吐いてしまった。
 ジャンパオロとデリツィアは。
 他人を気にする余裕も無いか。

 看護に回りたいが、手が空かない。
 せめて足止めが出来れば。
 アウローラさんは戻らんか。

『そ、そうだ! 行けー!』
『ユッタしゃんを守れー!』

 不意に、イェンナとサンドラ。
 転移魔法。転送。
 人形素体……いや。人形兵か。

 そうだった。ダンジョン障害。
 無生物なら転移が徹るんだった。
 動くから生き物の様に思っていた。
 人形兵は物品扱いか。

 他の子達も思い立ったか。
 次々に人形兵が送られて来る。
 盾を構えて敵の前に壁になる。

 その隙に俺が看護へ。
 ユッタとコンツェッタの治療。
 治癒、活力、鎮静、解毒、浄血。
 あと空調、洗浄魔法。

 外部からも支援。物資転送。
 タオルと着替え。
 着替えは早いけど。
 まずタオルがありがたい。

 もう少し持ち堪えてくれ。
 何とかするから。

 戦線に戻る。義腕展開。
 バーストレーザー砲、照射。
 少し振って敵を横薙ぎにする。

 少し振って……何だ?

 壁が抉れた。
 向こう側の通路が見える。

 これまた先入観だった。
 何故、壁は壊せないと思っていた。

 壁が崩れる。
 探知が徹り易くなる。
 小部屋があった。
 崩れた壁の向こう。近い。

 すぐに駆け込……いや。
 安全確保が先だ。

 アウローラさんに通信。
 一旦こっちの守りを頼む。
 小部屋を見つけた。
 罠が無いのか見て来ないと。



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