黒鷲の旅団
5日目(8)少女冒険者隊、すくすくと

「もうゴブリンなんて、怖くありませんわ!
 おじさま、エールお代わりですわ〜!」

 冒険者ギルドにて。
 上機嫌に豪語するステラさん。
 あんなにベソ掻いてたのに。
 しかし自信が付いたのは良い事だ。

 サナトス隊は冒険者ギルドで夕食。
 俺達の夕食は東区の酒場で取るが。
 戦果の確認と、納品依頼。
 昇進申請だけ済ませて行こう。

「あああ、あのあの。
 私達、強くなってるんでしょうか」

 ルキュアさんに聞かれ……
 お前さんトコは解析魔法を持ってない?
 見てやっても良いけれども。

 レベルはサナトスが19。
 ルキュアが11。
 ステラ3、ルーナ3、アクア4だな。

 俺の所は……まず俺が17。
 サンドラが13、トゥーリカ6。
 ユッタ11、イェンナ10、マリナ8。
 フェドラ12、レーネ7、ペトリナ4。
 カリマ5、ティルアは6になった。

「ま、負けてる……だと……!?」
「うしゅしゅしゅしゅ♪」

 ルキュアさん驚愕。
 サンドラちゃんが得意げ。

「あれ、俺のが上になってんのか?」

 首を傾げるサナトス。
 ダメージ量、経験値配分の差だろう。
 俺のトコは大人数。
 お前の方が経験値が集中する。

 サナトスが銅等級冒険者。
 ルキュアが鉄等級に昇進したとか。
 等級には特典が付く。
 宿はギルド付きのを確保出来るらしい。

 こちらでは、俺が黒鉄等級に昇進。
 子供達も全員、鉄等級に昇進した。
 鉄等級。真っ当な等級を持った冒険者。
 いよいよギルドお墨付きというワケだ。

「お嬢ちゃん達も頑張ってるんだって?
 サイクロプス退治まで倒したって。
 街の外が平和になる。
 行商や薬草摘みなんかも楽になる。
 みんな、感謝してるんだよ」

 ギルド支部長ウェストンから賛辞。
 どこで聞いたんだか。
 戦績はNPCに共有されるんだったか。
 噂として戦績が広まって。
 噂の広まり具合が評価値かも知れんが。

 それと、MVP案件。
 当該地方1日でのサイクロ5体討伐。
 この一番乗り、表彰。
 何気にトドメ刺してたサンドラちゃん。
 表彰されてしまった。

「ふぉ、ふぉおおおおー……!」

 サンドラちゃんの目がキラキラ。
 次いでキョロキョロ。
 視線が俺と表彰状、そして外?
 行ったり来たりして……

 あ、ああー……行ってこい。
 魔女協会でも見せておいで。

「ウシャシャシャ! うっふぅー♪」

 スキップ気味に走って行く
 危ないな。俺達も後を追おう。
 証拠の品、素材の売却しないと。

「ボア肉って素材になるかなぁ?」
「それはお肉屋さんに売った方が?」
「でも、それだと……うーん?」

 確かめる様に見上げて来る子供達。
 食料は素材に入りますか、だな。
 素材だったら子供達の取り分で。
 良いよ、素材で。
 料理の素材も、素材は素材だ。

 サンドラに追いつけない。
 ので、シャンタルに通信。
 サンドラちゃんの迎えを頼む。
 俺達は肉を先に売って行こう。

 ストレージから出して肉屋に見せる。
 これが、そこそこの価格に。
 新鮮との評価だが。
 ストレージ内は腐り難いのかもな。

 残りの魔物素材を持って、魔女協会に。

「こんなに……こんなに立派になって……」

 門の所で、フレスさん。
 モロモロ泣いていた。
 報告したサンドラ自身が硬直、驚いている。

「そろそろ試験に挑戦しないかい?」

「論文も悪くなかったよな。
 筆記はパスすっか」

 ヘリヤとシャンタルも上機嫌だ。
 以前ケンカしたチェチーリア先輩も。
 気まずそうに褒めて来る。

「ま、まぁ、その……やるじゃん」

 フレスさんに繰り返し礼を言われ。
 名残惜しまれつつ。
 夕食の前にカーラの仕立屋へ。

 子供冒険者隊の標準装備を考える。
 丁度お金も入った。
 前のデュエル報酬も残っている。

 革靴、皮グローブ、ケープ。
 幅広帽子も付ける。
 サンドラちゃんは魔女帽子だが。
 総額にして1人頭5万。
 一式を旅の装いセットとでも名付けよう。

「わー、オシャレだー♪」
「トゥーリカのも作るってよ!」
「やったね!」
「こんな頂いてしまって」

 先行投資。先行投資だよ。
 これからも助けて貰うからな。

 テンションが上がる子供達。
 しかし、ユッタの顔が暗い。
 まだ昼間の事を気にしているか。

 子供らを分散して、送金だ。
 マリナの家と教会の孤児院へ。
 カリマとティルアはマルカの宿へ。

 ユッタは俺と2人で鍛冶屋へ。
 途中、少し話そう。



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