黒鷲の旅団
7日目(4)乱戦下の実地訓練
そこそこの数の遠射部隊を結成。
今日も高所へ、丘へと登る。
と、少数ながら待ち伏せあり。
隠密スキルないし隠密魔法か。
近寄るまで気付かなかった。
こちらの支援射撃の妨害目当て。
わざわざ始末しに手勢を裂くとは。
そこそこ嫌がられているという事か。
しかし戸惑ったのはお互い様だ。
子供ばかりの分隊。
敵の約半数が躊躇している。
悪いが付け込ませて貰う。
抜き撃ちバーストショットで3人始末。
ガイゼル達が飛び掛かって2人排除。
思わぬ反撃に逃げる敵が少々。
無理に追わなくて良い。
非情が知れると相手も容赦が無くなる。
ロッシィが1名捕縛。
それは後ろの方に転がしとけ。
配置は盾役、銃士、弩兵で3列横隊。
後方に弓・長弓部隊で魚鱗陣形。
側面はサンドラが錬成魔法。
タールの罠を作り始める。
俺も魔法設置、範囲技を少々仕込む。
指示貰わないの?とシャンタルたん。
分かってるもんとサンドラちゃん。
ふふーん?ほほーう?とヘリヤさん。
自発的な行動が評価されている感。
花人チーム、後方。
森の方に茨のバリケードを作ってくれ。
バリケード……分からん?
何かこう、モジャモジャっと通り難く。
手本を見せたら真似してくれた。
周辺準備よろし。
斉射へ移る。
銃士隊、膝射。
弩兵隊、立射。
弓兵隊は放物軌道で狙う。
隊長候補生女子達、ギクシャク。
膝射や放物軌道が分からずか。
ユッタ達に手本を頼む。
と、揃ってムフムフ得意げな顔。
それでは各自、射撃開始。
前に出るな。待ち伏せるぞ。
まず俺が狙撃銃で先手。
気が付いた小隊が向かって来る。
これを遠射で倒す。
新人達の調子は?
横目で見ると、ユッタ。
ノイエの背中をさすっている。
スコープ、拡大視界。
直撃の瞬間を見てしまった?
ショック状態か。
カーチャも震えている。
鎮静魔法。頑張って。
「ひっ! ひいっ!」
「その調子!」
「ナイスガード、ナイスガード!」
矢弾を盾で防ぐエリック達。
ビビりつつも奮起。
トリットとラーナが励ましている。
武器が揃っても訓練不足は否めない。
否めないが、それでもやるしかない。
戦い、身を守り、稼ぐ。
その力を身につけさせねば。
戦わずに稼げるのが一番なんだが。
略奪も来ると言うしな……
まず、鍛える。鍛えよう。
戦わないとレベルが上がらん。
葛藤を一時、頭の隅に追いやる。
索敵、再探知。
サーチエネミー・スフィア。
範囲内の味方で索敵情報を共有。
来てるよと身構えるロッシィ。
待て。引き付ける。
……3、2、点火、今!
「うっ・にゃあーっ!」
タールの罠が広がる所を目掛け。
サンドラの炎魔法が着火。
同時、敵騎兵隊が踏み込んだ。
タールと一緒に炎上する。
転げ回る敵兵、引っ繰り返る馬。
設置系魔法の罠も踏んで大混乱に。
サンドラ、おしゃー!と雄叫び。
追い撃ちだ。追加点を狙え。
サンドラが追加の炎、錬成魔法。
俺も風魔法で火勢を煽る。
一難去った。消火。
サンドラは土魔法をチョイス。
水魔法より堅実ですねとフレスさん。
隊長候補チームも感心して見ている。
煙が晴れて、再度斉射に掛かる。
ヤバいよ、とイェンナ。
敵陣にも長弓兵部隊。
ユッタ、カリマも撃って減らすが。
ちょっと間に合わんか。
こっちの弓兵隊、遠射用意。
マリナに閃光魔法付与。
フェドラに昏倒魔法付与。
俺は錬成、残りの娘は炎付与だ。
可能な限り複数射、撃て。
ぼがががん、と轟音が響く。
爆ぜる炎と閃光。衝撃。
敵長弓兵部隊が浮足立った。
それでも撃って来るのは時間の問題。
隠密魔法展開。移動を開始する。
全員に浮遊魔法フロート。
罠を踏む事は無いと思うが。
茨に引っ掛かるなよ?
左右・後方に罠と茨。
斜め後ろには退路を開けてある。
トゥーリカ、先行して偵察役を頼む。
味方側に抜ける。
挟撃は無いと思うのだが。
それでも一応は用心を。
持ち直したと、ガイゼルチームのジノ。
敵長弓兵隊、再度整列し始めた。
盾役も撤退に移ってくれ。
設置、収束発動。
砂塵魔法サンドウォール。
砂嵐の壁が彼我の間に立ち塞がる。
ダメージは微妙だが目晦ましだ。
砂には質量もある。
矢弾も通り難いだろう。
遮光・黒煙魔法も放り込んでおく。
更にこちらを見え難く。
「ご主人〜!」
アンゼさんが戻って来た。
撤退完了の知らせ。
知らせをしながら植物魔法。
茨バリケード。
よし、俺も罠を仕掛けたら行こう。
敵が追撃に来たとして。
誰もいない陣地で罠を食らう。
ここまでノーミスと思いたいが。
……どうかな。
撤退先の子供達に周辺警戒を促す。
俺も急ぎ合流する。
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