〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase3〜
「ったく、しつこい連中だぜ」
オーバード・ブーストを休み休み吹かして、かれこれ10分足らず。
俺は例のメガネ女から送られて来た、位置情報の場所を目指している。
その付近まで辿り着いた。
目指すだけならいいんだが……追っ手だ。
事前通告も無しに、企業の領域に入ったんだ。
警戒もされれば、警告。迎撃。命だって狙われるか。
『どういうつもりや?
腕一本で、強行偵察も無いやろ?』
追って来たのは2機。
まず1機が、AC【スタルカ】。
テクノクラート所属。
ここらはアルゼブラの支配領域か。
当たり前だが、奴もアルゼブラ側の人間だ。
ACを降りれば、気さくな兄ちゃんなんだが、なぁ……
俺が助けに行こうってのが、敵側、GAサイドじゃあ、な。
事情を説明して、通して貰う訳にもいかないだろう。
『解せんが、まぁいい。
手負いでもネクストだ。
手柄を上げさせて貰う』
こっちはAC【トラセンド】。
ローゼンタール所属。
企業からの評価に拘ってる奴。
さて、テクノクラートにローゼンタール。
ここはアルゼブラの領域だ。
なのにアルゼブラ本社の機体が出て来ない。
ちょいと妙な話だが……
まぁ、ここら辺は、大した資源があるワケじゃなし。
重要視されていないかな。
でも、ま、一応は社有地。
侵入者を放置するのも格好悪い。
だから、こうやって申し訳程度に、ACが出て来るワケで。
さて、何はともあれ2対1。
分が悪いんで俺は、手近な施設に逃げ込んだ。
ここら辺は……何だ?
蜂起された、旧時代の居住コロニー郡か?
あのメガネの馬鹿女。
何だってまた、こんな所に……
っと、今は他人の事より、まずは自分の心配。
俺の機体はバックユニットから、スモークをばら撒く。
スモーク。煙だ、煙。
これだけだと原始的。
だが、合わせ技が合ってな。
煙の中で、今度は肩部からECM装置を射出。
こうなりゃレーダー探知も、有視界戦闘もヘッタクレも無ぇ。
施設の中、密閉空間だ。
煙は晴れねぇし、ECMは相乗効果。
『チッ! フザけた真似を』
『ダリオ、焦ったらあかん!
あいつ、ランクは低いが腕はええで!』
痺れを切らしたトラセンド。リンクスはダリオ・エンピオ。
こいつにスタルカのリンクス、ド・スが自重を促す。
面識がある奴は、これだから面倒臭ぇ。
ナメてくれたら戦り易いってのによ。
ともあれ、鬼ごっこは此処までだ。
クイックブーストから切り返し、高速反転。
戦闘を開始する。
お出迎えは、トラセンドのチェインガン。
スタルカのマシンガン。連射。
ロックオンも目視射撃も、ままならない状況。
それでも数撃てば、当たるだろうと言わんばかり。
こっちの得物は、単射のスナイパーライフル。
火線から敵の位置を予測して、狙い撃つ。
撃ったら、すぐ移動。
ブーストは控えめに。
こちらの位置を悟らせない。
距離を取りながら、1射……2射、3射……
ECMが効き過ぎだ。自機までロックオンが不安定。
おまけに煙で、何も見えん。
『くっ! こいつ!』
『何ちゅう奴じゃ!
これで当てて来よる!』
見えんが、リアクションあり。
一応は当たっているらしい。
……俺の腕も、まだ捨てたモンじゃないか?
『こんな奴が、解体屋よりも下だと!?
カラードのランク付けは、一体どうなっている!』
相当頭に来ているダリオ・エンピオ。
口ぶりじゃあ、事前情報と話が違うってか?
俺の方がランクが下だ。
だから弱いハズだ、と。
俺の機体は、爺さんの試作品に始まり、改造パーツ、偽造品……
マトモなパーツを使っていない。
だからオーダーマッチに出られない。
ってか、出させて貰えない。
そりゃ番付にも上らねぇよ。そうだろ?
そもそもオーダーマッチの意義。
それは企業の製品のデモンストレーションやら、パーツのデータ収集。
あるいは、保有戦力の誇示なんかの為に使われる場だ。
そこで規格外のパーツなんか使われて。
ましてや、それで勝たれたら具合が悪い。
下手すりゃ企業の沽券に関わる。
だから出て来るなって事だ。
だが、ここは戦場。これは実戦。
不正なパーツだろうが何だろうが、生き残ったモンが勝ち。
大体なぁ、噂のホワイトグリントとか見てみろよ。
あの腕でもランクは9位だろうが。何を今更……
……少し煽ってやるか。
「おい、そこの……アレだ。赤い奴。
ローゼンタールの上から2番目。
名前なんつったっけ?
『何だと貴様!』
「話が違うぐらいでアタフタすんなよ、見っとも無ぇ。
それだから、いつまでもジェラルドの下ぁ〜扱いなんじゃねぇの?」
『言わせておけば!』
よっしゃ、来たぁ!
上手い具合にキレやがったダリオ。
突っ込んで来るトラセンド。
オーバード・ブーストの派手な噴射。
煙の中でも楽に見える。
俺の機体は足を止め、ライフルをパージ。
格納していたブレードを取り出し、姿を隠して待機する。
4……3……2……今!
トラセンドが間合いに入るより、一息手前でブレード起動。
クイックブーストと同時に抜き払う。
……取った!
横をすり抜けざま、火花と共に。
トラセンドの右腕が宙に舞う。
俺の機体はクイックターン。
やり過ごした敵機を追う。
もう一撃を狙う。
『ぐうっ!』
トラセンド、クイックブーストを2段。
後退から直ぐ右へ切った。回避行動。
紙一重でブレードを避けて行った。
慌てている割には、結構やるじゃねぇか。
それともマグレか?
『ダリオ、下がっとき!』
トラセンドの後退。
その空いた所へ、スタルカが割り込んで来る。
奴の得物は、大型の実弾ブレード。
あんなモン食らったら、ACどころか、中の俺にまで風穴が開く。
自機、ブレードをパージ。
転がしておいたライフルをかっさらう。
クイックブーストで、ブレードを避ける。距離を取る。
ついでに自機、続けざまに1射、2射。
スタルカの足を狙って、バランサーを揺さぶる。
追撃拒否。ご遠慮願う。
……と、ぼちぼち目くらましも晴れて来た。
ライフルの残弾は、まだ十分。
お互い手負いだ。後は腕次第か。
『な、何じゃと?
ええい、こんな時に!』
『くっ! これでは評価にならん』
ふと、敵機2機。急に撤退を始めた。
何だ? 何か通信を受け取った様だが。
「おい、どういうつもりだ?」
『あんたもニュース見てみい!
大変な事になっとるで!』
俺は言われるままに、自機内部の端末から情報を探る。
と……何だコリャ。
クレイドル21が占拠された?
声明文は、反体制勢力リリアナ……?
……って、ああ、アレか。
ちょっと知っている奴を思い出した。
同じリンクスだが、あんまり思い出したくない奴だ。
『おい、貴様……この屈辱は覚えておくぞ。
それから、俺は負けた訳じゃあない。
決着は次回に持ち越しだ。覚えておけよ?』
と、ダリオ・エンピオから、何かと念入りな捨て台詞。
野心家は大変だねぇ。ご苦労なこって。
「あー、分かった、分かった。
早く行けよ、2番目」
『2番目って言うな!』
トラセンドは怒り任せにチェインガンを連射。
空薬莢をばら撒きながら、派手に帰って行きやがった。
……ちょいとばかり、やり過ぎたか?
次にあったら面倒臭そうだ。
さて、連中は帰還。
さしずめ企業連からの召集か。
俺みたいな小物は放っておいて、対策を立てるんだろう。
テロの排除やら、重要施設の防衛やら。
クレイドル……高度7kmに浮かぶ、人工の大地、か。
ま、俺には関係無ぇ。
こちとら天涯孤独の独立傭兵。
そんなトコに住んでる知り合いも居ない。
俺はさっさと、あの馬鹿メガネを回収して帰るとしよう。
しかし、思ったより時間を取られちまった。
あの馬鹿、まだ生きてんだろうな?
焦っても仕方無し。
パージしたブレードを拾い、再格納。
自機のブーストを噴かしつつ、同時にレーダーを調整。
俺は付近の音やら映像やらを拾ってみる。
この近くのハズなんだが……
と、レーダーに感。
どうやら戦闘が続いている。
……間に合ってくれよ?