〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase4〜


「この下……か?」

 現在は、クーガーの技術屋・メガネ女の回収任務、継続中。

 俺は奴を探して、音源を探った。
 地下だった。戦闘が続いている様子だ。

 少し探すと、エレベーターがあった。
 が、穴だけだ。搭乗部は下にあると思われる。
 その縦穴を降りて行く。

 勿論、小刻みにブーストを吹かしながら、だ。

 急に長距離を降りて着地して、バランサーがフリーズ。
 反動で動けないトコを撃たれるとか、マヌケだからな……

 それと同時に、センサー系をチェック。

 銃声とか、被弾した様な音だとか……
 そんな戦闘の音は、次第に減っていく。
 いよいよ護衛は全滅か?

 だが、焦っちゃいけねぇ。

 俺まで一緒に全滅したんじゃ、本当の無駄足だろう。

 まだあの馬鹿メガネが生きてるかすら、現状では分からない。
 が、それでも。他に生存者が居れば、拾って行ってやるさ。


 それから……着地。
 結構降りたな。10kmぐらいか?

 天井こそ低いが、前後左右には広い。
 まぁ、ACが入れるって時点で。
 施設としちゃあ、かなりの規模だ。

 レーダーに機影、生存者は……1機だけ。
 真っ直ぐに向かって来る。

 早速お出ましだ。
 薄暗がりを突っ切って、敵はその姿を現す。

 相手は本当に、逆間接な4脚だった。

 いや、正確には違うか?
 全部の足が同じ方を向いている。
 正面を向いた逆間接、だ。

 脚の配置は前後に長い。
 つま先を線で結んだら、正方形じゃなくて長方形になる。

 そしてその上に、ACの上半身が乗っている。
 中心と言うよりは、少し前に寄ってるか。

 珍妙だぜ。何タウロスだよ、お前。
 アルゼブラ社製? 嘘だろ?

 確かにアルゼブラ。
 他とは違った発想の製品云々と、言われちゃいるが……
 そんなブッ飛んだ製品、今まであったかぁ?

 だが、そのフザけた風体とは裏腹に。
 勤務態度は真面目その物。

 距離が詰まるなり、右腕のブレードを起動。
 侵入者、つまり俺を殺しにかかって来る。

 俺はクイックブーストで後退、
 すぐ左へ切った。

 その脇を掠めて、敵のブレードの閃光が走る。
 コアの表面を斬られ、自機の装甲が火花を散らした。

 ……速い! なんて瞬発力してやがる。

 逆間接2脚特有の、縦方向の瞬発力。
 あれを前に向けたって事か。
 それも2倍の足で、だ。

 自機はクイックブースト連発。
 左右に揺さぶりつつ、後退しながらライフルを撃つ。

 ブレードに持ち替えるには間合いが近過ぎる。
 捨てたライフルをすぐ潰されて、後で要り様になっても困る。

 が、どうやら奴の武装は、ブレードだけ。
 用意が無いのか、使い切ったか。
 飛び道具を使わず追って来る。

 勿論、その瞬発力を最大限に活かしながら、だが。

 下がりながらでも、距離を詰められる感覚。
 やり難いったら無い。

 ついでにもう1つ、厄介事。
 奴の左腕武装。

 腕に直結する外見、一見するとブレードだが。
 それが、こっちの弾が当たる直前、展開。
 緑に光って弾を無力化した。

 要するに、ありゃあ盾だ。
 AC用の……何だ。コジマシールドってか?

 BBFのノーマルにも、似た様なのがあった気がする。
 が、ネクストに盾ってのは初耳だな。

 守りは前面だけだが、コジマ粒子が集中する。
 プライマルアーマーよりも守りが厚い。

 ただでさえ、そのプライマルアーマーがあって、その上、盾だ。
 こっちの弾が貫通して行かない。

 ……メンドクセェ。

 だがそうか、4本足。
 こいつは動物と同じだ。後進は苦手。

 そして、ここは閉所。
 付け入る隙はある!

 意を決した。ライフルを捨てる。
 収納していたブレードを用意。

 オーバード・ブースト、起動。
 奴の右半分狙いで進路を取る。

 が、噴射と同時に、すぐ解除。
 フェイントだ。

 クイックブーストで逆へ切って、
 前へ飛び込みながらクイックターン。

 ブレードを斜めに振りながら、自機が相手の横をすり抜ける。
 後ろへ回り込んで行く。

 奴も振り返るが、テンポが悪い。
 対応が間に合ってない。

 予想通り、だ。脅威は正面への突っ込みだけ。
 側面、背面へと突いていけば、旋回性で押し切れる!

 ……と、こんな時。
 自機の右足がポッキリ折れた。

 あンのクソジジイ!
 いや、ジジイのトコの作業員!

 何が、右腕がまだでーす、だ!
 右足もじゃねーか!

 ……いや、それとも、さっきの戦闘で痛んだのか?
 煙をばら撒く辺りから、多少は被弾していたが。

 しかし、何が幸いするか、分からんのが戦場。

 自機が倒れるのとほぼ同時。
 敵のコア両脇、外殻が外れた。
 そこから大型ミサイルが複数発、飛び出して来てやがった。

 ……隠し玉があったのか。

 だが、足が折れてバランスを崩す自機。
 ミサイルを掻い潜って、右側面から地面に倒れる。

 で、当然だがミサイルは外れる。命拾い。

 虚を突かれたのか、殺ったと思って油断したか。
 敵機は一瞬だが停止。

 その隙に、倒れた反動とブースト噴射。  自機はその身を跳ね上げる。

 至近距離から、短いながらも大出力のブレードを突き出した。
 敵のコア目掛けて叩き込む。

 ブレード、コアの下腹から、深めに命中。
 すぐに追撃に備え、距離を取った。

 片足だが、オートブーストを起動。
 何とか水平は保てる。

 オートブースト……知らないか?
 水上で使う、墜落防止の機能だ。

 まぁ、リンクスだ。機体と頭が直結してる。
 意識しないで使ってる奴の方が、多いんだろうが、な。

 しかし、この敵機、追撃は無い。
 リンクスが死んだか。
 あるいは、動力系でも壊れたか。

 どっちでもいい。
 どちらにせよ、止まってくれた。

 ったく、冷や冷やしたぜ。


 さて、敵が居なくなったんなら、本題だ。
 例の技術屋、馬鹿メガネを探す。

 ……と、向こうから通信。

『おお、救援ご苦労っ♪
 随分早かったじゃない』

「……全然無事みたいだな」

『丁度いい避難場所があったから、隠れてたのよ』

「だが、さっき、通信の時は」

『ああ、アレ?
 迫真の演技だったでしょ?』

 ――――っ!!

 こいつ、ピンチのフリをしてやがったんだ。
 俺を誘い出す為に。

 これには、温厚な俺も流石にキレた。

 温厚には見えない?
 そんな苦情は受け付けねぇ。

「この、馬鹿女ッ! いいか、よく聞け!
 プロの情報屋が一生懸命調べたって、状況が変わる。情報が食い違う。
 食い違った分だけ、準備が遅れてリンクスが死ぬ。
 それを……言うに事欠いて、騙しただぁ!?」

「え? え?」

「大丈夫だって分かってりゃあ、腕も付けて来た!
 その分、武装も2倍あったんだ!
 ああぁー、クソッタレ! 俺がどんだけ苦労したと!
 腕1本でネクスト2機と、さっきのアレだぜ!?
 下手すりゃ、死ぬトコだったんだぞ!! ぁあ!?」

『っご、ゴメン、ゴメン!
 ちゃんと報酬は払うから』

「金の問題じゃねぇッ!
 世の中には、金で買えない物が、少なくとも2つある!
 そいつは命と信用だ。
 今度やったらお前が依頼主だろうが何だろうが!
 俺がぶっ殺してやるから、覚えとけ!」

 っとまぁ、脅かしたんだが。
 返って来たのは意外にも、感謝の言葉。

『う……あ、ありがとう。
 詰まる所そこまで本気で、心配してくれたんだ?』

「……ケッ、そんなんじゃねぇよ。

 知ってる顔がホイホイ消えるのは、気分が悪いってだけの話だ」

『や、でも、結構嬉しいよ?
 感動したよ? ホントよ?』

 こいつ、褒めちぎって、怒りを散らせようとしてねぇか?

 ……あーもー、いいや。

「座標を送れ。迎えに行く」


 それから目標の場所を確認。
 いい加減ダルくなって来たんで、オーバード・ブーストで急行する。

 と、その音でビビった目標を発見。
 踏み潰しに来たとか思ったか?

 自機は、奴の近場に着陸……
 しようとして、ちょっとコケた。

 片足で着地するのは難しいぜ。
 嘘だと思うなら、やってみろよ。

「う、うわ、ボロボロ……」

 俺の機体を見て、メガネ女は愕然とした表情。
 そりゃ、腕は無ぇわ、足は無ぇわ?

 で、今更、罪の意識か?
 それとも修理代の方を想像して、頭が痛くなったか。

 ……もう何でもいいや。

「とっとと乗れ。
 片足だが、まだ飛べる」

「あ、待って。もう少し」

「お前、いい度胸だな。
 これ以上、俺を……」

「わ、すいません!
 行きます、行きますってっ!」

 メガネ女は慌てて機材を纏めた。
 コクピットに乗り込んで来る。

 これで任務は概ね完了。
 後はまぁ、何が出て来たって逃げるだけ。
 これまでに比べたら楽なモンだ。

 ったく、馬鹿な依頼だった。
 この女も馬鹿なら、騙された俺も大馬鹿野郎だ。


 馬鹿メガネ、回収完了。
 これより帰投する。

 ……ってか?



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