〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase6〜


 対アームズフォート作戦、
 相手はアルゼブラの【カブラカン】。

 作戦現場は広大な砂漠地帯だ。

 GA側の企業は、
 本社や主要施設の防衛強化に手一杯。
 少数で迎え撃たなきゃならん。

 そんなワケで、対抗馬は俺1人。
 ホントに少数だな。

 泣けて来たぜ。
 AMSが涙でボヤける。

 ……比喩的な表現だ。
 本気にすんな。

 それはともかく、タチが悪い事に、
 天候は砂嵐になった。

 何も見えないし、
 レーダーも機能障害。

 普段なら数百m先まで狙える火器管制も、
 索敵範囲が半分以下だ。

 ……こいつは好機と見るか?

 相手は、やたらデカいアームズフォート。
 目視でも何とか狙えるだろう。

 で、こっちはネクスト。
 アーマード・コアだ。

 まあまあ機敏な中量2脚で、
 しかもアームズフォートに比べたら、
 遥かに小さい。

 撃たれる前、見つかる前に、
 上手く懐に入り込めれば……

 と、遠くで爆発音。
 微かに光が見えた。

 とうとう来やがったな。
 カブラカンだ。
 仕掛けておいた地雷に引っかかったらしい。

 接敵する。背部ブースタ点火。
 距離500……400……300……

 とっくに敵は、銃の射程の中だ。
 しかし、自機の火器管制、FCSには反応無し。
 ロックオン不可。

 やっぱり砂嵐のせいだな。
 目視で攻撃するしかない。

 と、奴はスラッグガンをバラ撒いて来た。

 その狙いは甘い。
 直撃する気配は無い。

 ミサイルみたいな誘導武器も無い、
 というか、撃って来ない。

 どうやら砂嵐のお陰で、
 奴もロックオンがままならないらしい。
 しめたモンだ。

 だが、それでも撃って来る、か。
 向こうさんも、それなりに必死。

 自機はカブラカンの足元へ。

 いや、コイツの移動手段は、
 装甲つきのキャタピラだ。
 だから、足なんか無いが……
 まぁ、とにかく下の方へ、だ。

 事前情報じゃ、カブラカン、
 キャタピラを殺れば停止するって話だが、
 それを覆っている装甲が邪魔。

 で、対抗策。

 自機は、肩から伸びている、
 無駄にデカい実弾ブレードみたいな物……
 長いスパイク状の物体を、
 敵の装甲に突き刺し、切り離した。

 こいつは爺さんとメガネ女で作った、
 設置型の大型コジマ爆弾。

 AC相手じゃ使えたモンじゃないが、
 相手がAFなら使い様がある。

 爆弾を仕掛けて、
 すぐに移動。距離を取る。

 と、数秒で爆発だ。
 コジマ粒子特有の、緑色の爆発。

 こいつは相当な破壊力で、
 その被害は広範囲。
 半径300mってトコか。

 その圧倒的な破壊力は、
 たった2発で外装をズタボロにした挙句、
 中のキャタピラまで破壊しちまった。

 こいつは早ぇ……
 ってか、怖ぇな。

 迂闊に巻き込まれたら自爆モンだ。
 ACなんか一溜まりも無ぇぞ。

 さて、カブラカン。
 キャタピラを殺られ、一応停止したワケだが、
 その時……

 自機後部に衝撃。

 何だ? ミサイルじゃねぇ。散弾だと?
 スラッグガンの角度じゃないが。

『いい的よ、貴方』
「……シャミア!」

 ランク15、シャミア・ラヴィラヴィ。

 ACは赤い4脚で、
 そっちの名前は【レッドラム】。

 ACの外見と戦い方のせいで、
 ついたあだ名が“蜘蛛女”。

 今までどこに……
 いや、この砂嵐の中。
 隠れ様は幾らでもある。

 しかし、マズイ。

 アームズフォートってだけ聞いていたから、
 AC戦の用意が足りん。

 設置爆弾が重過ぎて、
 自機の両手にゃハンドガンだけだ。

 情報屋ぁ……
 愚痴っても仕方無ぇのは分かるんだが、
 今回ばかりは恨むぜ、畜生め。

 もう1つ他にも、
 強力な武器があるにはある。
 が、こいつは隙が大きい。

 外さないだけの接近戦を挑むとなると、
 問題になるのは自機の装甲だ。

 奴の散弾相手じゃ、
 装甲がチョイと薄過ぎる。

 攻撃が届く前に、
 こっちが先に蜂の巣にされる。

『ふふふっ、
 いつかのお礼をさせて貰うわ』

「シツコイねぇ……
 根に持つ女は嫌われるぜ?」

『……いつまでそんな、
 減らず口を続けられるかしら』

 軽口が気に触ったか、
 容赦なく撃って来るレッドラム。

 砂嵐対策は完全らしい。
 それに元々、奴は局地戦が得意だ。

 それに対して、こっちは……

 ああ、クソ!
 視界の悪さが半端じゃねぇ!

 撃たれた方向から、
 多少は、次の予測が出来る。

 が、それにしたって、
 全部避けるのは無理だ。

 クイックブースト。
 後退。右ターン。

 右前から被弾。
 切り込みつつ反転…

 …するも、ロック不可。

 どっちだ?
 どっちへ行った?

 後部、被弾。
 左、被弾。

 自機、左前へ前進。
 右を向きながら索敵。

 と、左から被弾?
 いつの間に回りこんだ?
 ダメだ。追い切れん。

 被弾、被弾、被弾……

 プライマル・アーマー減衰。
 予測装甲値は減少の一途。

 自機のコクピット内に警報。
 警報が止まない。

 ……こりゃあ、
 いよいよ死ぬか?

 あっけないが、戦場で傭兵だ。
 こんなモンだろうか。

 と、フッと、
 レッドラムの気配が無くなった。

 銃撃が来ない。
 弾切れか? いや、早過ぎる。
 それに、銃声はする。

『形勢逆転ですね。
 ご自分が狩られる側に回るご心境は、
 如何でしょうか?』

『くっ、こ、この……
 小娘がぁあああっ!』

 ……何だ?

 シャミアは何だか焦っている様子だが、
 一体、誰と戦っている?

 レッドラム、
 苦し紛れにアサルトアーマー。

 自機の右でコジマ爆発だ。
 衝撃で砂が吹き飛んだ。

 レッドラムの姿を目視で確認。
 奴の他に、白い機体。

 あれは……

 いや、そいつは後だ。
 レッドラムが足を止めている。
 やっちまうなら今しか無ぇ!

 自機はレッドラムに、
 ワイヤーつきのアンカーを打ち込んだ。

 そしてワイヤーを巻く。強制接近。
 どっちが引っ張られているのか、
 近づいているのか。

 そして自機、アサルトアーマー起動。
 無理矢理間合いに入れて、
 コジマ粒子をあるだけ全部ぶっ放した。

 奴の機体もアサルトアーマーがあるが、
 奴は先に撃った。

 アサルトアーマー、コジマ収縮だ。
 粒子をあるだけ使っちまうから、
 普通に考えて連発は効かない。
 今、奴は撃てん。

 下手を打つと共倒れになるから、
 普段はAC相手に使わないんだが……

 ま、2対1ならやり様がある、か。

 さて、レッドラムだが、
 一応は沈黙したか?
 攻撃の気配は無い。

 代わりに、さっきの白い機体。
 こいつが自機に寄せて来る。

『お久しぶりですね。
 いつ以来でしょうか』

 リリウム・ウォルコット、か。
 AC名【アンビエント】。

 BFFのリンクス筆頭にして、
 管理機構カラードの2番手。
 若いが才能のある女リンクスだ。

 昔、俺がノーマル乗りだった頃。
 奴はまだ、リンクスの成り立て、
 ヒヨッコだったな。

 それが今ではカラードの2位、か。
 暫く見ない間に、立派になったモンだ。

『件の節では、
 大変お世話になりました』


「さあ、な。何の事だか、
 もう忘れちまったぜ。

 しかし、お前1人か?
 王小龍が付いてないってのは意外だぜ」


『王大人はGA本社にて、
 会議に参加しておられます』


「マザーウィルが落ちて、責任追及か。
 応対やらに大忙しってか?

 そんなのは、
 経営サイドに任せときゃいい。

 何でまた、
 可愛い秘蔵っ子を1人で出し」


『私の独断です』

「……何?」


『GAサイドにおいて……

 マザーウィル陥落の穴埋めとして、
 BFFがGAの為に動いたという事実は、
 後々、有効になります』


「なるほど。
 まぁ、無くは無い話、だ」

 と、話を合わせるが……

 もしかしたら、奴は俺に、
 いつぞやの借りを返しに来た?
 のかも知れない。

 リリウム・ウォルコット。
 名門の出、BFFの象徴。

 そんな奴が、
 私情で動いたんじゃ支障が出る。
 そうならない様に、気を回して、か?

 昔は融通の利かないお嬢ちゃんだったが、
 生の人間相手に、頭を回せる様になったか。
 頼もしいこった。

 まぁ、ホントに単純に、
 会社の為なのかも知れないが。

 ……というか、普通に考えて、
 そっちの比重の方が高いだろう。

 ロイ・ザーランドの冗談を真に受け過ぎだ。

 相手はイイトコのお嬢さんだぜ?
 俺なんか歯牙にもかけるかよ。

 仮にそれもあったとして、
 俺の事なんか、ツイデだ、ツイデ。

『くっ……なんてデタラメなの!
 覚えてなさい。
 次こそは、風穴だらけにしてやるわ』

 おや。

 しぶとく生きてたか、レッドラム。
 アサルトアーマーを至近距離、
 モロに食らったハズだが……

 砂でもクッションになったかね。
 まだ動くらしい。

 向かって来るかと思いきや、
 奴はオーバード・ブーストを起動。
 緑色の光を撒き散らしながら、逃げて行った。

 と、リリウムが俺に聞く。

『追いますか?』


「放っとけ。

 シャミアなんか倒して、
 下手に有名になると、
 名を上げたい馬鹿どもに狙われる。
 メンドクセエ。

 そうでなくとも、
 あんなシツコイ女だ。
 殺したら取り憑かれそうだぜ?

 シャミアのお化けなんて、
 二重に怖い。やだやだ」


『相変らずですね。
 少し、安心しました』

 と、リリウムは軽く笑う。
 昔を少し思い出して、か。

 意外と俺なんかの事でも、
 幾らか記憶に残っていたらしい。

 ……昔、か。

 そりゃ、まぁ、
 協働していた時期が時期だ。
 記憶にも残るだろう。

 数年前の、もっと不安定だった時勢…

 …ああ、もう、考えるの止そう。
 余計な事を思い出して、
 ちょっとイラついて来たぜ。

 俺は話を変える事にする。

「まぁ、何にせよ、だ。
 1つ借りだな」

『“もう忘れちまった”ので、
 お気遣いは無用です』

「そいつは、どーも」

 と、ようやく砂嵐が晴れて来た。

 赤くそびえ立つ、
 カブラカンの全容も見渡せる。

 ……何だ?

 カブラカン、外装が外れて、
 中から自律兵器が飛び出して来た。

 大きくは無いが、多数。
 50、いや、60機は居る。

 一難去ってまた一難、か。

 まぁ、おっかないシャミアに比べたら、
 こんなガラクタ、何でも無ぇ。

「リリウム、そっちの状況は?」

『アンビエント、被害ありません。
 残弾は充足しています』

「よし。じゃあ、
 ちゃちゃっと片付けちまうか」

『貴機の装甲は芳しくありません。
 お逃げ頂いた方がよろしいのでは』

 ホントに頼もしくなったな、
 リリウム・ウォルコット。

 この俺に諫言とは、恐れ入る。

「ランク2とは言え、
 仮にも後輩の前だぜ?
 少しはカッコつけさせろよ」

『友軍を死なせては、
 BFFの信用に関わります』

「だからって逃げたんじゃ、
 俺の方の信用に関わる」

『……分かりました。
 背中はお任せします』

「はいよ」

 自機とアンビエント、
 黒と白の機体が砂上に舞う。

 1つ、派手なゴミ掃除と行こう。



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