〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase8〜
「ちょっと出て来るぞ」
クソ暑い搬送用車両、格納庫の中、
手で仰ぎながら、俺が言う。
その背中に、
爺さんとメガネ女が声を掛けて来た。
「おお、丁度いい!
ついでにビール貰って来てくれ。
ノド乾いちまった」
「私、紅茶がいいなー。
断ッ然、冷たいヤツ。
ホットで持って来たら殺すからねー」
「もう、水でいいだろ、水で」
今度の作戦現場は、ロロ砂漠。
また砂漠だ。クソ暑い。
GA社の輸送部隊を護衛中。
AC用の輸送車両の1つで、
俺の機体は調整を受けている。
輸送車両は移動を止めていた。
山の陰で休憩中だ。
俺も休憩。
この暑い中、
ずっとコクピットの中じゃ、
気が滅入る。
作業は爺さんとメガネ女に任せて、
ちょっと散歩。
今回の依頼、そもそもは、
爺さんの試作品の試射だ。
長射程で大口径。
広い場所が居るってんで、
砂漠を目指してる。
で、GAの輸送部隊が近くを通るってんで、
俺達は輸送車両を一台追加して貰って、
そいつに便乗した。
護衛になるから輸送費は要らねぇし、
何かあったら戦う。
それでまた、追加報酬が出る。
まぁ、何も出なかったら、
それもいいさ。
爺さんの報酬は大した事無ぇが、
その分、危険も無い。楽な仕事だ。
レーダーに敵反応無し。
空も晴天、砂嵐の気配も無い。
順風満帆ってヤツだな。
……今の所は。
「おい、聞いたか? 例の」
「ああ、今度は、
グレートウォールを殺ったって」
何やら輸送部隊の連中が、
噂をしているのは。
新進気鋭のリンクスの噂。
マザーウィルと落とした若造、か。
なかなか大した腕らしい。
ヤツはどうやら、オーメル寄りの様だ。
依頼を受ける傾向から、そう取れた。
それが教導者の勧めか、
本人の意思なのかは分からんが……
いずれ俺も、戦う日が来るのか?
それもメンドクセェな。
それはそうとグレートウォール。
こいつもAF、アームズフォートだ。
GA製、全長7km、列車型のAF。
ミサイルに、グレネード・ガトリングなんて重武装、
おまけに重装甲の輸送車両。
更に護衛もついていたハズだが、
どうなったんだ?
俺は連中の一人に声を掛ける。
「今、グレートウォールつったか?
有澤さんはどうした。
護衛に行ったんじゃなかったか?」
「ん? ああー……
負傷したって聞いたが、
それでも一命は取り留めたらしい」
さすがは雷電。
重装甲サマサマだな。
重タンク型AC、雷電。
機動性が悪い、ほぼ固定砲台だ、
なんて評価もあるが。
それでも、ACにとって、
一番大事な部分を守った。
そこは大したモンじゃないか。
有澤さん……か。
今度、見舞いに行ってみるか。
向こうも社長さん、
会えるかは分からんが……
件の若造とは、
いつか戦うかも知れん。
戦った事があるヤツが生きてるなら、
話ぐらい聞いておいても、損は無い。
ま、それは先の話だ。
俺は輸送部隊の連中に飲み物を貰って、
自機の所へ戻る。
爺さん達の作業は、
概ね終わっていた。
「ゴツイな。コレが?」
「おう。これぞ、対艦巨砲!
待ち伏せとパージを前提とした、
超大型砲じゃよ」
自機の前方に、
この間のウルスラグナみたいなサイズの、
馬鹿デカい物体が繋がっていた。
これが大砲だって?
まるでVOBを前につけたみたいに見える。
片手じゃ支え切れんから、
両手で扱うシロモノらしい。
パージを前提にしてるってのも、
まぁ、分かる気がする。
これだけの重量、
どんなACでも加重になるだろう。
撃って、捨てて、
それから動こうって算段だな。
「まぁ、撃てば撃てるんだろうが、
実用性なんてあんのか?」
「大丈夫よ。コレ、
レーダーとFCS内蔵型だから。
長い捕捉距離も、
十分なロックオン速度も、
コレ1個に全部入ってるし。
パージずれば機体のFCSにって、
切り替わる様にしておいたから、
後は普段通りに戦えるわ」
と、メガネ女の解説。
幾らデカいからって、銃の中に、
火器官制までブチ込むか?
幾ら大型砲とは言え、
まぁた無茶苦茶な事を……
「コレ使うのはいいとして、
実戦だと、後はどうすんだ?
レーダーは外せない。
残りは肩に1つと、内蔵武器だ。
ハンドガンじゃ、火力がな」
「大丈夫。
肩に、腕武器を収納出来る、
武器ラックをつけるよ」
「武器ラック?
手が届かないんじゃ、
意味が無いだろう」
「ロボットアームついてるから、
ACの手に届けられるの。
銃を取り終わったら、
アームはパージして。
面倒だと思うし、
自動で外せるようにしたいけど、
まだその辺の調整が出来てなくて」
爺さんも爺さんだが、
コイツはコイツで、
また妙なモン作ってるな。
「そりゃあ、何だ。
銃でなくても使えるのか?」
「あんまり重いのとか、
複雑な形のは難しいけど……
ブレードぐらいなら行けるわ。
それから、コレ」
メガネ女が俺に、
資料を放って寄越す。
それに目を通す。
……組み立て式のアサルトライフル?
2箇所にバラして格納して、
取り出したら組み合わせて使う。らしい。
「格納場所、
2つ使っちゃうけど……
その分、性能は保証する。
悪くないでしょ?」
「んんー、まぁ、
データ上は、な。
だが、使ってみん事には」
と、警報が鳴る。
輸送部隊の奴らが慌しくなる。
どうやらお客さんだ。
「やれやれ、
試射する暇も無ぇってか」
俺はコクピットに乗り込む。
AMS、接続完了。
装備チェック。
右肩の武器ラックには、ブレード。
愛用の可変ブレードだ。
組み立て式ライフルとやらも、
格納場所に存在を確認。
それから……笑えるのは大型砲。
“残弾1”って何だ、
“残弾1”ってのは。
本当にパージ前提の使い捨てだな。
再装填する装置も無いってか。
「あんま無理しないでよ!
ACにとって、一番大事な部品は、
リンクスなんだからね!」
と、見送るメガネ女。
コイツも、分かった様な口を利きやがる。
以前は機体・機械しか見てなかったが、
この間、自分でもACに乗ってみて、
少しは成長したかね。
「へっ、俺は部品かよ。
……出るぞ!」
ブーストを噴かす。
が、案の定、過重だ。
イマイチ動かん。
クイックブーストを使ってみる。
と、ようやく動いた。
大型砲のブーストと連動したらしい。
FCSに続いて、
ブーストまでアリかよ?
いっそ、もう1機、
AC造った方が良くないか?
まあ、いいか。
こんなんでも使って見せりゃあ、
報酬は出るんだし。
大型砲内蔵のブーストは、
まぁまぁ軽快だった。
爺さん達や輸送部隊に影響が無い様に、
自機は前進。距離を取る。
直進する事、2km少々。
ここらでいいだろう。
目標も確認。ロックオンだ。
大型砲を発射する。
本当に大した射程と、
馬鹿げた威力だった。
まず、有効射程が5千超。
で、ランドクラブを2機貫通。
一撃で沈めた。呆れるぜ。
しかも……ああ、爺さんよ!
その馬鹿げた熱と衝撃で、
自機のプライマル・アーマーまで減衰したぞ?
どうなってんだよ、まったく。
大型砲、パージ。
組み立て式アサルトライフル、用意。
ブレード装備。
武器ラック及び、
ロボットアームをパージ。
……取り回しは悪くないかな。
敵の残りは、
ノーマル部隊、雑魚だけだ。
戦う前から損傷状態だが、
まぁ、まだ楽な仕事か。