〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase13〜


「まぁた、面倒な事になってんな……」

 現在地、BFF社の支配領域。
 コジマエネルギー施設スフィア、
 防衛任務中。

 地形は山岳。
 低温の雪原地帯だ。

 そして天候は最悪な事に、
 吹雪いて来やがった。

 視界が悪過ぎる。

 俺はレーダーの機能を切り替えた。
 サーモ、つまり熱源探知機能を使って、
 戦況を窺う。

 今回の敵は、例の新進気鋭。
 シリエジオの弟子だ。怖ぇ怖ぇ。

 奴は崖の上の方から攻めて来ていて、
 1つ、また1つと、
 味方の反応が消えている。

 ……サーモで機種が、
 判別出来るかって?

 ネクストの方が熱量が高い。
 慣れれば、何となくだが、分かる。

 で、とにかく味方が大苦戦中。
 とっとと応戦に行ってやりたいが……

 困った事に、俺用のネクスト機体、
 用意が間に合ってない。

 ま、こっちの都合で動かないのが、
 戦況ってモンだが、な。

 そんなワケで、
 今回の自機はノーマル。
 BFFからの借り物。

 ロートルなコクピットが、
 何とも懐かしいぜ。

 懐かしいのはいいんだが、
 ノーマルだから装甲が弱い。
 プライマル・アーマーも無い。

 そして、得物は、
 スナイパーライフル。

 ……と、来りゃあ、
 待ち伏せが常套手段。

 上からの指示もあって、
 持ち場は離れられない。

 だから、
 崖の上で応戦中の味方には悪いが、
 援護には行けないぞ、っと。


 百戦錬磨の王小龍も、
 さすがに手駒がノーマルじゃあ、
 あの若造を止められるとは思ってない。

 だから、今回の作戦、
 目的は時間稼ぎだ。

 資源やら何やらを運び出す、
 その為の時間を稼ぐ。

 適当に時間を稼いで、撤退。
 そう難しい仕事じゃない。

 しかし……愚痴も出る。


「捨て石つっても、
  もうちょい配置だとか、
 工夫が無いモンかね。

 時間を稼ぐんなら、
 もっと分散するとか……

 ってか、終わったらコレ、
 どうやって引き上げたらいいんだ?
 救援でも来るのか?

 味方が全滅したら、この吹雪だ。
 余裕で遭難するだろうぜ?
 あー、やだやだ」


 と、まぁ、
 提言込みでの愚痴だ。

 早期撤退にせよ、
 作戦変更するにせよ、
 何とか対策したら……ってな。

 だが、そんな俺に、
 いの一番に飛んで来たのは、
 お叱りの言葉。

『おい、そこの新入り!
 無駄口が多いぞ、集中しろ!』

「へいへい、スイマセンねー」

 文句を言ってきた友軍に、
 俺は適当な返事をくれてやった。

 奴はここの防衛担当、ノーマル部隊、
【サイレント・アバランチ】のリーダーだ。

 ノーマル部隊……

 AMS適性が無くても扱える、
 普通の機動兵器アーマード・コア。
 通称ノーマル、か。

 性能はネクストに到底敵わんが、
 それでも、大多数の凡人を、
 戦力に出来る道具だ。

 今時でも結構、
 出回ってるよなぁ……

 ま、それはともかく、
 そろそろ味方が残り少ない。

 残り、俺のを入れて6……
 いや、5。

 いや、4機?
 減るペースが早い。

 石頭のリーダーは放ったらかして、
 自己判断で引き上げるか?

 それもまぁ、
 無くは無いが……

 そんな折、後方より接近機。
 どうやら味方だ。

『俺達は上に行く。
 あんたには踏み台になって貰うさ』

『悪いな』

 味方の援軍、ネクストだ。

 いつも協働している2人組、
【エメラルドラクーン】と、
【スカーレットフォックス】。

 連中も、運が無いな……

 確かに、シリエジオの弟子を殺れば、
 名は上がるだろう。

 しかし、リスクの方が高過ぎる。
 踏み台になるのは果たして?


 シリエジオの弟子、
 レーダーは完備の様子だ。
 この豪雪の中、良く当てている。

 狙われているのは、
 スカーレットフォックス。

 被弾とプライマル・アーマーの反応で、
 温度が大上昇中。
 サーモの温度表示が酷い。

 対してシリエジオの弟子、
 ほぼ被弾無し。

 マシンガンやらミサイルやら、
 クイックブーストで巧みにかわす。

 ……こりゃあ、もう、
 時間の問題だろう。


 と……ふと、
 自機の間近に黒い機体。

 接近に気付かなかった。
 強力なECM?

 それとも、何か、
 レーダーに映り難い装甲でも、
 使ってるってのか?

『ご存命ですか?』

 通信はリリウム・ウォルコット。
 だが、機体はアンビエントじゃない。

 って事は、
 用意された俺の機体、か。

 リリウムは機体の膝を折り、
 コクピットを開ける。

 俺は自機を降りて、
 そいつに乗り込む。

「貴方の回収に参りました」
「他の連中は」

「……後回し、です」

 言葉を選んだな、
 リリウム・ウォルコット。

 恩師・王小龍の手前、
 勝手な戦闘は出来ない。

 一応の恩人・俺の手前、
 仲間を見捨てる様な事も言い難い。

 奴の立場は複雑だ。

 だが、企業の専属って事は、
 そういうこった。
 思い通りに戦えない事もある。

 だから俺は、
 フリーの立場が好きなんだが……

 命を拾われた手前、
 借りを返してやるまでは、
 文句も言えやしない。


「ま、手に余る事情もある。

“天才坊や”ならぬ、
“天災”坊やってトコか。
 相手がアレじゃ仕方無ぇ」


「申し訳ありません」

 俺が察したのを察してか、
 リリウムが謝る。

 俺は無言で軽く、
 奴の頭に手を置いた。

「行くぞ」
「……はい」

 何か、俺の言葉に対して、
 反応が遅れたリリウム。

 頭を撫でられたのが意外?
 気を使われたって方が意外か?

 はたまた……

 ま、俺には、
 奴の心を知る由も無いさ。

 リリウムはAMSの接続を切り、
 俺に座席を譲った。

 まだ病み上がりの俺だ。
 自分のペースで帰れ、
 ってトコだな。

 俺は座席に座る。
 AMS、接続。
 メインシステム起動。


 今回の俺の任務は完了だ。

 リリウムが迎えに来たって事は、
 ここまでで予定通り、
 王小龍の掌の上って事なんだろう。

 まだ戦ってる味方を見捨てて、か。
 何とも後味の悪い撤退だ。


 治りかけの傷が痛むのも省みず、
 オーバード・ブースト起動。

 俺は不快感のまま、
 自機をメチャクチャに飛ばした。


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