〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase21〜
「1機撃破……
それはいいとして。
ぶっちゃけ、これ、
やり難くないか?」
『……ごめん』
と、通信越しでボヤいた俺に、
何だか情けない声で謝るメガネ女。
まぁ、どこも人手不足なんだし、
言っても仕方ないのは、
分かってるんだがな。
現在、高高度から狙撃中。
自機はヘリに吊るされて、
夜の深い闇、暗い空を飛んでいた。
機体のAMSをヘリと繋いで、
そっちの操作もACから行ってる。
やる事が多い。
それだけ脳に負荷が掛かる。
その分ACは動かさないとは言え、
普段と扱う情報が違うだけに、
疲労も溜まる、愚痴も出るってワケだ。
今回の作戦、敵はORCA旅団。
オールドクラークエリアを進軍中の、
特殊AF部隊を攻撃している。
ネクスト保有ってだけでも驚きなのに、
おまけにアームズフォートと来やがった。
ORCA旅団、底が知れない。
やっぱり資本のバックアップが……
ま、そんなモン、
あろうと無かろうと、だ。
敵が出て来るんだ。
迎え撃つしかないだろう。
敵AF。
名前は『ジェット』とか呼ばれてる。
今は無きレイレナード製。
角張った団子虫みたいな形状で、
各部の溝からレーザーブレードを出す。
弱点は機体上部の放熱板。
ブレードの有効射程から、耐久力、
重量やら何やらの情報は、
全部分かっていた。
……タレ込みがあったんだ。
情報提供者はシリエジオの弟子。
どういうつもりかは分からん。
実際に計画が動き出してから、
仲間割れ? 意見の相違でも出たか。
まぁ、ノブリスを倒した手前、
すんなり戻って来るのも難しいんだろうが……
とにかく、だ。
敵の情報が分かってる。
で、上からの攻撃に弱いと。
だから、ブレードの届かない高高度から、
狙撃しているってワケだ。
しかし、結構硬い。
幾ら弱点とは言っても、
狙撃銃一発で落とせる相手じゃない。
ホントは近づいて行って、
こっちからブレードでも使えば早いんだろうが、
そんな度胸は無ぇぜ。
そう、俺はあくまでも粗製。
英雄を気取って死ぬのはご免だ。
スタンスを守るのが生きる道。
「しかし、硬いっつっても、
落とせるからいいけどな……
ヘリの操縦ぐらい、
お前がやるとか」
『……ごめん』
これだよ、メガネ女。
作るのは得意なくせに、
乗るとなると、てんでダメ。
ま、人間だ。
欠点も必要か。
1人で何でも出来ると……
いや、実際そんな奴なんて、
どこにも居ないんだろうが、な。
それでも、1人で出来るって思い込んで、
思い詰めたりしていると、
孤立を深め、道を見誤る事もある。
人間の社会ってのは、
大勢が寄り集まった一蓮托生だ。
多かれ少なかれ。
作るしか出来ないメガネ女と、
乗るしか出来ない俺。
これで丁度いいのかも知れない。
砲火を集中する。
1発、2発。
3、4、5、6……
2機目を撃破。
機体は下向きだ。
背部武器でも真下へ撃てる。
スナイパーキャノンを最小間隔で連射。
対して、AFは抵抗。
巨大なブレードを振り回す。
分厚いブレードに巻き込まれて、
廃ビルが豆腐みたいに切り刻まれ、
崩れ落ちていく。
……ま、足掻いたって、
届かないモンは届きゃしねぇさ。
淡々と撃つ。
キャノンが弾切れだ。
次、腕部装備。
スナイパーライフル。
……っと、少しして、
こっちも弾切れ。
敵、残数8。
こっちの残りの武器は、
レーザーブレードが2つ、か。
俺はメガネ女に聞いた。
「今から補給部隊を出したとして、
どれくらい掛かりそうだ」
『15分くらいかしら。
一旦、帰還したら?』
「ちょっと目に入っちまった。
映像送る」
今、敵AF部隊は、
砂漠地帯を進行中だ。
奴らはこの先、
企業の施設を目指していると思われる。
……で、だ。
奴らの向かう先、
企業施設より手前に、
多数の明かりが見えた。
奴らの進路上に、どうやら、
居住コロニー郡がある。
大した規模じゃあないだろうが……
作戦領域内に、居住区だと?
情報の手落ちか?
それとも、傘下に無い人間なんぞ、
企業の知ったこっちゃ無ぇってか?
……どうする。
あの居住コロニー、このまま行くと、
AFの進軍に巻き込まれて、
壊滅は免れない。
企業からの迎撃は、無し。
今から応援を呼んだとして、
間に合うのか?
『こっちも確認したわ。
こんな所にコロニーだなんて』
「補給に戻ってる余裕は無ぇ」
『……帰還して。
依頼は破棄しておくから』
「ははっ!
俺のオペレーターとしちゃ上出来だ。
だが、今度ばかりは」
『帰還しなさい!
これは命令よ!』
「俺は……お前の部下じゃねぇぞ」
『それでも、相棒じゃない。
せっかく友達になれたのに』
「友達、ね」
『勘違いしないで。
私の“友達”は重いのよ?』
「友達なら友達で、
黙って行かせてくれないか?」
『……決意は固いのね。
分かった。
でも、2分だけ待って。
敵のブレードの、
軌道と死角を割り出すわ。
飛んで来る方向をマーカーで示すから、
全力で回避して』
「避けるだけじゃあ、
解決には成らんだろう。
居住コロニーまで距離が無い。
攻めに転じないと、
8機も押さえられねぇぞ」
と、聞いた所で外部から通信。
接近中の……ネクストだと?
『こちらレイテルパラッシュだ。
状況を確認した。
これより支援に向かう』
『同じくマイブリスだ。
到着まで、あと5分ってトコか。
何とか持たせてくれ』
応援まで呼んであるとは、
手回しのいいこって。
さすが俺の相棒。
それに、ラッキーだ。
近場に居たのが、この状況で、
この状況だからこそ、
動いてくれそうな奴ら。
特にAC【レイテルパラッシュ】。
リンクスはウィン・D・ファンション。
矜持と責任感の女。
ちょい頑張れば助けられる民間人なんて、
そう簡単に見捨てたりしない。
『というワケだから、
貴方は足止め。
まずは回避に集中して』
「はいよ」
ヘリをパージ。
自機、虚空を降りる。
接敵。
無数のブレードに歓迎される。
自機は回避に徹し……
しかし、前には出る。
近くの廃ビルなんぞ、
盾にもならん。
視界の邪魔になるだけだ。
『出来た!
データ送るわ!』
メガネ女からデータ転送。
AMS視界の中に、
敵ブレードの予測軌道が示される。
……これなら行ける。
自機、飛翔。
ほぼ真左、仰角30度。
右45度、仰角60度。
次々にブレードを避け、
敵機上へ飛び乗る。
放熱板にブレードを。
1機破壊。
と、メガネ女の通信。
『無茶しないでって!』
「分かってる!
だが、敵を減らした方が、
俺も楽になる」
援軍到着まで、もう少し。
今日も、生きて帰る。
棺桶に足を突っ込むなんてのは、
ずっと先まで先延ばしだ。
装備と腕前。
信念と平常心。
戦況と友好関係。
掛かる事情を秤に掛けて、
それでも……
今日も、生きて帰る。