〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase25〜
『そろそろ燃料が危ういわ。
パージして』
「はいよ。VOB、パージ。第一段階。
第二段階を点火」
オペレーター役、
メガネ女に言われるままに、
俺は自機の端末を操作。
自機後方、最外殻VOBの部品が外れ、
中から次のVOBが現れる。
多段階VOB。
これはアルテリア・ブースターの前に、
メガネ女が考案した奴らしい。
その、VOBが幾つも重なったみたいな、
ゴテゴテした塊を背負って、
自機は海上を飛んでいた。
クレイドルに向けられた、
衛星軌道掃射砲【エーレンベルク】。
こいつを止める為に、
俺は今、作戦領域へ急行中だ。
俺が作戦領域に向かう間、
通信が聞こえて来た。
リリウムが気を回して、
企業の連中と、通信回線を中継。
エーレンベルク近辺では、
砲を奪還すべく、企業連のリンクスが、
先んじて攻撃を仕掛けていた。
が、状況は悪そうだ。
『近づいたらハリネズミだな。
キツイ仕事でやれやれだ』
呆れた声はロイ・ザーランド。
今動けるリンクスの中では、
最高ランク、最有力者に当たるのか。
独立傭兵が現場指揮官。
普段と勝手が違うだろう。
やる奴も、率いられる奴も大変だ。
それでも指揮官らしく……
いや、らしくなく、か?
ロイは仲間を気遣ったりする。
『そっち、大丈夫か?』
『こ、こんなの無理だろ!』
情けない声。
ありゃあ、ダン・モロか?
幾ら人手不足だからって、
あんなのまで駆り出しやがって。
ああいうのは、ウニかナマコだ。
ヒトデ違いもイイトコだ。
リンクス、ダン・モロ。
AC名【セレブレティ・アッシュ】。
性格は消極的。
上手くいった時ぐらいは、
大きい口も叩けるんだが……
ランクは今、25くらいか?
何人か死んだり、
引退したりしてるからな。
しかし、ランクも上がったんだから、
もうちょい自覚して欲しいぜ。
曲がりなりにも生き残ってんだ。
もっと自信を持ちやがれ。
セレブレティ・アッシュの名が泣くぞ?
っと、右前方に光。
エーレンベルクの砲撃が、
クレイドルを狙って飛んで行く。
……間に合わなかったか。
『8千万……1億……1億5千……
ははははははは!』
混線か、敵側の通信。
予想される犠牲者を数えて、
ご満悦だな、オールドキング。
『最高だぜ、相棒。
上手い事を考えやがる』
『こっちは人手が無いんだ。
効率的に行こう』
ストレイド。こいつはこいつで、
淡々と言いやがるし。
自機、第二、第三VOBをパージ。
……くそ、まだ着かんのか。
『作戦領域に入るわ。
警戒して』
と、メガネ女から通信。
ようやくだ。
自機、作戦領域に到達。
と、ほぼ同時に、前方から砲撃。
高出力のエネルギー兵器。
まだ結構、長距離だろうに。
ギガベースの砲台でも設置してんのか?
左方、クイックブースト。
砲撃を回避。
途端に第二射。三射、四射。
砲台は複数居やがる。
普通にやったら避け切れん。
「さあ、どうする」
『右脇のレバーを!』
俺がレバーを引くと、
自機後方、VOBの中から、
ワイヤーつきのアンカーが射出。
アンカーは海に刺さって……
ああ、この辺は浅いのか。
ワイヤーは千切れるが、
方向転換には十分な作用。
自機の軌道がガクンとズレる。
自機は速度を保ちながら、
砲撃に側面を向けた。
真っ直ぐ近付くならともかく、
高速で横切っていく状態だ。
これなら撃たれても当たり難い。が、
「これじゃ明後日の方向だぜ?」
『アンカー、まだ19本あるから』
「へいへい」
繰り返し方向転換しながら、
自機は目標地点へ肉薄する。
ようやく目標地点上空。
俺は自機後方、
引っ張ってきたパーツをパージ。
こいつはオーバード・ブースタと、
ジェネレータを繋いだみたいな代物で、な。
即席の、投下型コジマ爆雷だ。
それが、8基。
自機から外れ、着地と同時に、
それぞれアサルト・アーマーを発動。
だが、その攻撃目標は、
エーレンベルクじゃなかった。
眼下に広がる電源施設群。
コジマの光、緑色の粒子の氾濫。
電源施設、壊滅。
それと同時に、
空を貫いていた砲撃が、
ピタリと止んだ。
『おい、どうなってやがる』
『ははっ! やられた!
オールドキング、カーパルスだ。
あっちを落とされた』
そう、俺の現在地はカーパルスだ。
連中の押さえている電源施設は、
今現在、ここだけ。
エーレンベルクへの電力供給を断つ。
それで発射不可能になる。
……次のアルテリアを、
落とされるまでの話だが、な。
『各機、慌てる必要は無くなりました。
一時撤退してください』
リリウムから撤退の合図。
賢明だ。敵の罠の中に、
わざわざ捻じ込む必要は無い。
生き残った事で士気も上がるだろう。
改めて策を練ればいい。
『なんてこった。
花火は終わりか?』
『次を取りに行くさ』
忌々しげなオールドキングとは裏腹に、
ストレイドは楽しそうに言いやがる。
そんなに死にたいかよ、
馬鹿野郎が……
それはそうと、
連中の狙いは見えたな。
次は、どこぞのアルテリアで待ち伏せだ。
今度こそ、罠を張る番だぜ?