〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase31〜


「急ぎで頼むぜ!
 お客さんを待たせてんだ!」

 クラニアム内部は派手に壊されたが、
 外部の被害は軽微だった。

 クラニアム外周の拠点に着いた俺は、
 姐御をメガネ女の所に放り出して、
 すぐに弾薬補給と、装甲の補修を頼む。

 補給を待つ間、
 メガネ女がコクピットまで来た。

「ブレードライフルが破損してるわ。
 替えが無いんだけど、普通のでいい?」

「撃てりゃあ何でもいい!
 ライフルでも、アサルトでも」

「一応、射程が近いの探してみるけど……
 他に注文とかは?」

「何でもいいから、
 早くしろってんだよ!」

 焦りから、声を荒げた俺。
 少し驚いた顔のメガネ女。

 正直、言い過ぎたかと思う。
 バツが悪い。

 が、メガネ女は気にするでもなく、
 ヘラヘラとした態度で話を続けた。


「OK、OK。
 何でも適当にねー。

 あー、あと、それ。
 新しい背部ユニット。
 邪魔なら外してもいいけど」


「……何だ、これ?」

 背部ユニット。
 見慣れない装備がついていた。

 外見は……そうだな。
 ノブリスの破壊天使砲。
 アレに少し似ているだろうか。

 この女がゴキゲンなのは、
 新作が出来たからか?

 俺の問い。こいつは何だ。
 メガネ女は説明する。


「扇状に展開するの。
 自機後方の力場で指向性を与えて、
 アサルトアーマーを前に飛ばす。

 実験兵器アサルトキャノン、だって。
 どこかの企業の……って言っても、
 多分トーラスあたりだと思うけど」


「そんなネタ、どっから……」

 と言いかけて、ふと思い当たる。

 ネオニダスの乗機、ネクスト【月輪】。
 背中に、ちょっと似た様な物がついていた。
 アレはもっと丸かったか?

「お前、ORCAと交渉したのか」


「まぁね。でも、こっちのが優秀よ?
 月輪のと違って、開閉出来るし。

 射程も初速も伸びてるから、
 そこそこ当て易いんじゃないかな」


「性能はともかく、
 あんまりヤバい事に首突っ込むなよ。
 何か要求されたんじゃないのか?」

「大した事じゃないわ。
 ちょっと情報提供。貴方絡みで。
 大した役には立たなかったみたいだけど」

 俺と鉢合わせして勧誘した時、
 こっちの素性が知れてたのは、それか。
 地上育ちがどうとか。

「それが元で、俺があっちについたら、
 お前はどうする気だったんだ?」

「貴方に限って、それは無いでしょ。
 信じてるから平気よ」

「簡単に言いやがるぜ、まったく……
 で、何だ。トーラスが連中のスポンサー?」

「さあ、そこまでは。
 一部の資本家の独断かも知れない。
 こっちも図面見せて貰っただけだし」

「図面だけ、って、
 それでよく作れるよな、お前。
 原理とか難しいんじゃないのか?」

「へっへー♪
 偉い? 見直した?」

「あー、はいはい。
 偉い偉い」

 適当に頭を撫で繰り回してやる。

 ふと見ると、整備の連中が、
 機体の周りから離れていく。

 補給が終わったらしい。
 メガネ女も気が付いて、言う。

「えっと、行くのね」
「……ああ」

「じゃ、まぁ、いつも通りに」
「はいよ。いつも通り、な」

 メガネ女は軽く手を振って、
 コクピットを離れた。

 俺はハッチを閉じる。


 いつも通り、か。


 正直、俺は少し熱くなっていた。

 命の公平さを理解して、
 それで尚、虐殺に手を貸す男。
 あのリンクス、オールドキング。

 かつて、あいつの率いた組織。
 反体制勢力リリアナ。
 昔、好きだった女も居た……


 っていう私怨だの義憤だの、
 内に秘めた憤りやら何やらを、
 メガネ女に軽く折られた。

 ……ったく、出来た相棒だ。
 自分を釣り合わせんのが大変だぜ。


 接敵前、待機モード。
 ブースト出力70%。

 いつも通りの発進で、
 取り戻した冷静さとローテンションで、
 俺はオールドキングを追った。


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