〜Piercing the Sky/ACfA別解 Phase32〜


「状況は?」
『待って。すぐスキャンするわ』

 カーパルスへと向かう橋の袂。
 俺はメガネ女と通信。体勢を整える。
 まずは状況の確認。

 連中はカーパルスに戻っていた。
 一度は陥落したが、企業も多忙。
 守りは手薄だったんで、な。

 残してあった物資を回収して、
 補給に充てたって所か。

 で、敵の構成。

『無人機……厄介なのが居るわね。
 小型機多数と、プロトタイプネクスト』

「プロトネクスト。
 レイレナードに引導渡したっつー、アレか?」

『そう、それ。あと、AC2機。
 レイレナードの002B』

「そりゃまた、団体様だな。
 こっちの増援は?」

『無いわ』

 サラッと断たれる望み。

 まぁ、他の連中はクラニアム近傍。
 まだドタバタしてんだろうし、なぁ……

「ま、考えても仕方無ぇ。
 一丁、やってみるかね」

『無茶しないでよ?』

「ヤバくなったら、逃げる。
 ダサかろうが何だろうが、な。
 俺はヒーローじゃない」

『それは良かった。
 じゃ、行こうか?』

 メガネ女、気取った様な口調。
 ありゃあオッツダルヴァの真似だな。
 笑かしてくれるぜ。

 ラインアークのとは違う、細い橋。
 相方はオペレータだけ。
 この辺から既に、オッツと俺の差かねぇ。

 だが、まぁ、不足も感じないがな。

「はい、そのつもりですー、ってか」
『ぷふふっ』

 フラジールを真似て無機質な返事。
 メガネ女を吹かせつつ、自機は前進。

 まずはACノーマル、002B。
 長距離で狙ってみるか。

 バックウェポン、起動。
 肩越しのスナイパーキャノンが2つ。

 ほぼ立ち止まって交互に撃つ。
 着弾。1つ、2つ、3つ。

 向こうも応戦。
 コジマ粒子砲か?

 だが、スナイパーの距離だ。
 届きゃしねぇ。

 向こうは距離を詰めて来る。
 自機は後退。距離を保ちつつ連射。

 まず1機撃破。
 と、2機目からの射撃。射程内。
 詰められて来たな。

 自機、スナイパーキャノンをパージ。
 折り畳まれていた2つ目の背部ユニットが、
 変形して肩越しに顔を出す。

 肩部装備……になるのか、コレ。
 拡張バックパック。
 背部装備を複数ブラさげて来れる。

 当然、重くなるが、
 機動戦になる前に外せばいい。

 第2背部ユニットは、
 チェインガンと連装ミサイル。
 瞬発火力で捻じ伏せる。

 002B、2機目アウト。

 自機、残りの弾で雑魚を蹴散らしつつ、前進。
 橋の中程でオーバード・ブースト。
 プロトネクストとの距離を詰める。

 プロトネクスト、ガトリング砲でお出迎え。
 派手な弾幕で行く手を阻む。

 自機、OB中にクイックブースト。左、前。
 プロトの脇を抜ける。
 OB切ってクイックターン、左方向。

 左、レーザーブレード。
 次いで右、実弾ブレード。

 プロト野郎に近接武器は無い。
 クロスレンジで一気に仕留める。

 多数の小型無人機……こいつは雑魚だ。
 カブラカンに詰まってたアレに似てる。

 問題のオールドキング。奴の姿は無い。
 野郎、どこに隠れて居やがる。

『ほぉー。やる様になったじゃないか。
 あの時の腰抜けが』

 オールドキングから挑発。
 どこだ? まだ姿が見えん。

 と、レーダーに感。
 ……真下だと!?

 海中から飛び出した、奴の機体。AC【リザ】。
 至近からショットガンを見舞って来る。

 カーパルス、敷地の内側。
 浅い所で隠れてやがったか。

 自機、被弾。
 遺憾ながら派手に食らった。
 ミサイルとチェインガンで応戦。

 敵機は縦横無尽に飛び回る。
 退いてはかわし、ミサイルの雨。
 距離を詰めては散弾。
 空中戦、機動戦闘。

 自機は遠距離FCS。
 距離はともかく、
 ロックオン速度が悪い。
 距離を取らんと……

 自機、弾をばら撒きつつ後退。
 雑魚を蹴散らし対空戦闘。

 オールドキングは一先ず無視。
 奴に集中出来るだけの状況を作る。

 状況を作りながら……
 俺は通信回線を開いた。

「何で、ストレイドを巻き込んだ」

『今更、それか?
 あいつは自分で乗って来たのさ』

「どうして、あれだけ殺した!」

『それこそ、今更だな。
 革命なんざ結局は、殺すしかないのさ』

 そう、今更だ。今更の話。
 それでも俺は話す。

 話しながら、AMS。脳直の機体操作。
 呼吸のリズム、トリガー制御。
 射撃のタイミングが単調になる。
 そいつを見越して回避運動。

 腕の不足を駆け引きから補う。
 こちとら粗製だが、
 経験量なら負けてねぇ。

「革命だの何だの……
 気に入らねぇんだよ!」

『気に入らないのは、お互い様さ。
 綺麗事を掲げながら、体勢に尻尾を振る。
 とんだペテンだぜ、亡霊野郎。
 綺麗事を並べれば、人を殺せるのか?』

 お互い様。ああ、そうだろう。
 自分が嫌ってる奴からは、
 大体において嫌われてるモンだ。

 ミサイル弾幕。
 後退、回避。

 敵、隙をついて側面から接近。
 近距離から散弾。

 自機、咄嗟にブレードを盾に。
 被弾したブレードは爆散。

 実ブレードもパージ。
 両手にハンドガン。応射。


「ペテンはテメェだ!
 革命だなんて耳当たりのいい言葉で、
 若造どもを先導して殺し合わせる。

 社会の不条理に、折り合いを付けられない。
 テメェは純粋過ぎたんだ!」


『……はははははは!
 お前こそ、革命家に向いてるぜ。
 よくもまぁ、口が回る』

 同族嫌悪とでも言いたいのかよ。
 アレに似てるとか、冗談キツイ。

 雑魚、掃討完了。
 残るはオールドキング。

 ミサイル弾幕。
 アサルトアーマーで相殺。
 復肺ジェネレータ、消費粒子は半分。

 アサルトアーマーが薄くなる。
 敵機が狙い澄まして接近。

 自機、背部装備をパージ。
 第3肩部兵装、アサルトキャノン展開。
 カウンターで敵機左腕を、
 肩から根こそぎ吹っ飛ばす。

 が、こっちも散弾を貰う。
 弾を食らい過ぎたか。
 両腕、共に動かん。

 アサルトアーマー消失。
 コジマ粒子、再生間に合わず。
 アサルトキャノンも使えない。

 敵機、こっちの不調を悟ったか。
 張り付いて離れない。
 ショットガンでトドメを狙う。

 一見すると万事休すだが、

『終わったな』
「……まだだ!」

 自機、クイックブースト。
 ショットガンを掻い潜りつつ、
 パージ、“右足”。

 足の中、仕込んであった刀身。
 狙いはコア、コクピット。
 蹴りを見舞って串刺しにする。

 嫌な赤。鈍い手応え。
 刀身はコクピットを穿った。

『グハッ……いいな、それ。
 どこで売ってんだ』

「生憎と、非売品だ」

『そうかい……
 相棒、ここまでが俺の器らしい。
 お前とは、楽しかったぜ』

『……お休み、オールドキング』

 どこで聞いているのか、
 ストレイドの返事。

 オールドキング、AC【リザ】沈黙。
 問題は……この状況で、あと1機、か?

 身構える俺だが、
 ストレイドは穏やかに言った。

『少し、話がしたい。
 私なりに答えが出たと思う』

「答え? 戻る気にでもなったか?」

『違う。そうだとして、戻れない。
 私の答え……何の為に、戦うのか』

 それか。真面目な野郎だ。
 まだ拘って、迷ってやがったのか?

 ストレイドは語る。
 奴なりの答え、選んだ道を。


『共通の敵があると、人は纏まる。
 企業とORCAでさえ、協働した。

 私が共通の敵として存在し続ける事で、
 何らかの抑止力になるかも知れない』


「そりゃあ、状況から生まれた結果論だろう。
 お前自身はどうしたいんだ」


『状況から選べる最善を選ぶ。
 選びたいと、今は思う。

 私が人類種の天敵になるという事。
 それが最善だというなら、
 私はそれでいい。それがいいと思う』


「最善を選ぶ、か。
 なら、今までのは、
 最善じゃなかったってか?」


『分からない。体制を正すのに、
 他の手段はあったかも知れない。

 ただ、大きな犠牲を出した事を、
 無駄にはしたくない。

 回り道をしてしまった。
 その感は否めないが……』


「人生、回り道だらけだ。
 そいつを咎めた筋じゃあねぇ……

 ただ、姐御は悲しむだろうな」


『先生には、代わりに、
 謝っておいてくれないか』

「お断りだ。自分で謝れ。
 お互い生き残ってりゃあ、
 また会う事もあるだろ」

『……そうかも知れない。
 とにかく、今日は見逃してくれ。
 そちらは疲弊しているし、
 私は今、乗り気じゃない』

 奴がそう言うなり、
 海中から現れる巨大な影。

 ……アームズフォートだと!?

 白い、トゲトゲしい外装。
 こいつは……

『AF【アンサラー】。
 クラニアムのドサクサに紛れて、
 オーメルから強奪した』

「1人で、これを……
 いや、違うな。AI制御か」

 AI制御のアームズフォート。
“コントロール可能な多数の凡人”の代わりに、
“コントロール可能な多数のAI”を突っ込んだ奴。
 例の発明爺さんの発案。

 ……って事は、
 爺さんは未だに奴の味方か。

 今後も企業対ストレイド、
 メンドクセェ戦いが続きそうだ。

『企業への体裁もあるだろうが、
 ここは通して貰う』

「止められる状態じゃ無ぇっつの。
 見逃して欲しいのはこっちだ、こっち。
 さっさと行ってくれ」

『ははっ、そうか……
 では、さよならだ。
 お互い、良い戦を』

 殺し合いに、
 良いも悪いも無いだろうが……

 AF【アンサラー】、浮上。
 ストレイドはどこへともなく、
 飛び去って行った。

「……戦闘終了、か。
 今日は静かだったな」

 俺はメガネ女に通信を取る。
 と、何だか情けない声がした。

『あ、えと……ごめん、祈ってた』

「おい、ナビ! オペレータ!
 技術屋が神頼みって!」

『ごめんって!
 でもほら、邪魔しても悪いと思ったし、
 逃げるって言ってたし……』

 ったく……まあ、いいや。

 俺は生き残ったんだ。
 ご利益があった事にしておいてやるか。

「こっちは、もう動けねぇぞ。
 迎えを寄越してくれ」

『はーい、了解でーす。
 超特急で向かわせまーす』

 軽いノリで力が抜けるぜ。

 ともあれ、状況終了。
 ストレイド、あとは企業に任せたい。
 いい加減、疲れたぜ。

 ストレイドは俺に、
 俺は奴に道を譲った。

 それぞれ自分の道、
 その先へ行くだけ、か。


 俺は帰還する。

 最初の約束を片付けなきゃならん。
 交わしたかも曖昧な約束だが、
 それでも……な。


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