Burn Away! 第2焦 第1話
〜Burn the BeastB〜
お兄ちゃんは町の門を抜けます。
草原の中を通っている、曲がりくねった道を行きます。
私も、その後を追って……
橋を渡って、小さな川を2つ越えます。
道はそのまま、南へ。
獣人の賊が居るという、森の中へと続いていました。
森の手前まで来ると。
お兄ちゃん、足を止めて言いました。
「……リリー、いつまでついて来るんだ?」
やばっ! 気付かれてた!
私は咄嗟に、近くの岩の陰へ。
ネコのフリをしてやり過ごします。
「にゃ、にゃあ〜ご……」
「そんなデカいネコは、居ないと思うけど…」
ああっ、しまった!
お兄ちゃんは夜目が効くんでした。
よく見えないのはこちらだけ。
向こうからは見えているみたい。
えっと、どうしよう……
「あっ、え、えーと。
私、リリーじゃないよ?
ネコの獣人です。にゃーご」
「街道に出るネコの獣人じゃあ、賊の1人じゃないか。
誰かに退治されたら、どうするんだ。
そうでなくても……声で丸分かりだし」
ううっ!?
ここまでバレては、もう誤魔化しようが無いです。
私は観念して、月明かりの中へ。
お互い顔が見える距離まで、近づきました。
「ご、ごめんなさい!」
怒られるかと思いました。
私は思わず頭を下げます。
でも、謝ったのは、お兄ちゃんも、でした。
「あー、うん……こっちこそ、ごめん。
黙って抜け出して悪かった。
心配させるかと思って。
でも、かえって心配させたみたいだ」
「うん……心配した」
「ごめん。でも、今日の所は様子見だけだよ。
勝ち目が無い相手なら、森を迂回しなきゃならない。
とにかく、下調べだけさ」
「じゃあ……戦ったりしない、よね?」
「少なくとも、リリーを連れていたんじゃ、ね。
危ない事は出来ないよ」
ああ、そういう事ですか。
私がついて回る限り、お兄ちゃんは無理をしない。
……よし。
これからは、なるべく離れない様にしよう。
それから、私達は森の中に入ります。
森の中は、暗く……
ほとんど何も見えませんでした。
でも、灯りは点けません。
森の中には賊が潜んでいるのです。
こちらの姿だけ見えて、向こうが見えないのでは不安です。
頼りは木々の間から差し込む僅かな月明かり。
そして、夜目が効くお兄ちゃん。
何が出て来るか分かりません。
なるべく音を立てない様に、慎重に進みます。
それから暫く行くと……
何か、明かりが見えました。
火ではない……みたい。
火よりも、ずっと白っぽい光です。
何かの魔法かしら?
と、声がしました。
私達は身を屈め、木の陰から様子を伺います。
「何だ、これは。
どうせなら、食える物を取って来い。食える物を」
「ンな事言ったって、仕方ないだろー?
店はあらかた閉まっちまってるし。
昼間は……憲兵っつーの?
武器持った奴らがウロウロして、やり難いったらないぜ」
声の主は、顔が横に長いヘビ?
と、黒いネコ?の獣人です。
彼らが賊みたいですね。
彼らは倒れた木を椅子代わりに、座っていました。
手にはそれぞれ、光の出る物を持っています。
何か、光を出す筒状の物……
何だろう?
見た事がありません。
「あれは……もしかして」
「勝てそう? 危なくない?
……お兄ちゃん?」
と、気付かれない様に、小声で聞く私。
ですが、お兄ちゃんは……
お兄ちゃんは何を思ったのか。
急に立ち上がって、フラフラと前へ!?
「だっ、誰だ、貴様!」
「えぇい、見られたからには生かしておけん!」
当然、気付かれました。
どうしてそんな……
「ま、待て! 話を……」
と、何か言いかけるお兄ちゃん。
ですが相手は問答無用。
ネコの獣人は光る筒を捨てると、戦闘態勢。
凄い勢いで、お兄ちゃんに飛び掛って行きます。
お兄ちゃんは左足を引いて半回転。
突進を避けながら、ネコの獣人の足を掴みます。
そのまま振り回して、木に投げつける……
でも、お兄ちゃんが手を離した所で、ネコ獣人。
空中で姿勢を変えます。
木の側面に、両足で着地。
すぐまた飛び掛かりそうな、反撃の姿勢。
お兄ちゃんはネコの方に気を取られます。
その隙を突いて、ヘビ獣人。
サーベルを手に、お兄ちゃんの背後から斬りかかります。
同時にネコ獣人も木を蹴って飛びました。
両手の大きな爪で、お兄ちゃんを挟み撃ちに。
危ないっ!
でも、お兄ちゃんは平気な顔。
彼はヘビ獣人に背中を向けながら、斜め左後ろへ。
少し姿勢を下げて、サーベルを避けながら体当たり。
怯んだヘビ獣人。
動きが一瞬止まります。
と、お兄ちゃん。
後ろ手に、ヘビ獣人のサーベルを持つ手を掴みます。
そのまま捻って、サーベルでネコ獣人の爪を防御。
爪を防ぎながら、ネコ獣人のお腹を蹴って……
ネコ獣人は下がります。
と、お兄ちゃん、追撃。
ヘビ獣人を投げ飛ばして、ネコ獣人の所へ。
「どわっ! ……くっ、クソ!
この俺のスピードに、ついて来るだと!?」
ネコ獣人はヘビ獣人に潰されて、声を上げました。
速い……速かったです。
私は目で追うのがやっとでした。
何か手伝えるかと思っていましたが、こんなに強いなんて。
でも、お兄ちゃんも負けてない。
警戒を強める獣人達。
ヘビ獣人が重々しく言います。
「むぅ……その身のこなし。只者ではないな。
我々を始末しに来たのだろうが、そう易々とは殺られんぞ」
「だ、だから、話を聞いてくれって!」
説得を続けるお兄ちゃん。
ですが獣人達は、尚も襲い掛かって来ます。
……どうしよう。
お兄ちゃん、大変そうです。
何か手伝えないかな?
目くらましの魔法?
でも、お兄ちゃんの目までくらんだら困ります。
攻撃する術はまだ、魔法使いさんに習って間も無く。
あまり上手ではありません。
それに、上手く当たるかどうか。
もし間違えて、お兄ちゃんに当たったりしたら。
そんな事を考えていると、突然……
「貴様、目が追いついているのか?
面白いな」
突然、私の隣から声がしました。
……賊の仲間!?
「誰っ!?」
驚いて私が振り返ると、そこには……綺麗な女の人。
真っ白な、ドレス? 違うかな?
とにかく白い服を着た、髪の長い女性。
私の隣に立って居ました。
彼女はどこか、勿体つけた様な仕草で言います。
「誰だと問うか。ならば答えよう。
我が名は、クライオ・ディープホワイト。
人類淘汰機関の幹部である。
貴様、面白い素材だ。
我らが同志として、改造人間になってみないか?」
カイゾウニンゲン!
……って言われても、私には分かりません。
何の事でしょうか。
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