Burn Away!
第3焦 第1話
〜Burn the FateC〜
「さて、私は情報を集めて来る。
ブラックはリリーの護衛をしていろ。
後で落ち合おう」
「……すまない」
町に着いたリリーは、取引先に向かう。
ブラックは、それに同行。
そして私は2人と別れ、一足先に情報収集だ。
道行く人々に、私は声を掛ける。
先日現れたという、異世界からの来訪者。
その所在を聞いて回る。
そして可能であれば、相手の人となりを探ろう。
あまり気が進まん様子のブラック。
いきなり顔を合わせたのでは、何か失敗するかも知れん。
だから、説得可能か否か、下調べをして。
まずは相対する心の準備をさせてやろう。
その為の時間をやろう……という算段。
……というのもまた、建前で、だ。
私は対象が見つかり次第、説得を開始。
それが叶わなければ、さっさと始末をつける気でいた。
対象は町で暴れ、負傷者を出し、しかし退けられている。
こちらの世界の住人も強いが、私に及ぶ程ではない。
それぐらいの相手なら、私1人でも何とかなるだろう。
また、ブラックらが先に、目標に接触した場合だが……
ブラックには、リリーが一緒だ。
彼女に危険が及ぶ様な事になれば。
奴は説得を放棄し、対象を抹殺するだろう。
そう、これは、選択する手間を省いてやったという事だ。
引くに引けない状況になれば、後はただの結果。
後悔なり何なり、すればいい。
ブラックには悪いが……
いや、奴も、どこまで察していたのやら。
“すまない”と言ったのは、どこに掛かる“すまない”だ?
まぁ、“先に調べておいてやる”にしても。
“始末しておいてやる”にしても、私のやる事は変わらんさ。
私は町の人々に、先日のについて、尋ねて回る。
「ああ、町の北の方に逃げたって」
「憲兵に追われて東の方に……」
「港の方じゃないか?
それっぽい奴を見たって……」
存外、目撃情報は多い。
が、なかなか目標に辿り着けない。
ターゲットも逃げ回っている様だ。
これは簡単には行かないか。
日も傾いて来た。
少々だが腹も減った。
一度ブラック達と合流し、日を改めるべきか?
と、私が諦めかけた時。
私はふと、視界に違和感を感じた。
一瞬だが目に飛び込んだ、不自然な色合い。
他の住人達とは違う、合成繊維的な生地、服装……
私は立ち止まり、来た道を引き返す。
どこだ、どこで見た?
と、路地裏に人影。
薄暗くてよく見えないが……
そいつは私を見た途端、奥へ向かって走った様に見えた。
私はそいつを追う。
と、そいつは逃げる。
路地の先、向こう側の通路、光の中へ。
何のつもりだ。
手間を取らせるな。
私は更に追う。
奴は更に逃げる。
警戒しているのか?
私に怒られるとか思っているのか。
そこまで嫌がられるほど、部下を虐めた覚えは無いのだが。
いや、それとも、完全に無関係の人間か?
我々の来た世界とは、更に違う世界の人物か?
あるいは単に私が、憲兵の仲間と思われて?
……何でもいい。
違うなら違うで確認して、それで終わりだ。
だが、確認しない事には。
幸い、人気の無い路地だ。
私は奴の逃げる先を予測。
氷を操る能力を使った。
氷柱が高くそびえ立ち、相手の進路を塞ぐ。
「くっ……!」
立ち止まる逃亡者。
追いすがる私。
「えぇい、逃げるな! 話を聞けッ!
私は貴様を捕らえに来たのではない!」
私は氷の剣を形成。手に取り、相手の前に停止。
相手の出方を警戒しつつ、様子を伺う。
相手は特に獣人ではない。
そこそこ端正な顔立ち。
見た目、普通の人間だった。
……はて。
こんな奴、組織に居ただろうか。
あまり見覚えが無い。
まぁ、ブラックも、他の奴にしても。
組織の中では大体、変身スーツみたいな外部装甲姿だ。
故に、本当の顔の印象が無かったりするものだが……
……いや、まてよ?
こいつ。この顔。
確か、以前、どこかで。
私は懸命に、己の記憶を辿る。
「貴様、もしかして。ほら、あの……
アレだ。青い奴。
なんとかレンジャーの」
「レンジャーって言うなッ!」
……おお? んんん?
“なんとかレンジャー”の“なんとか”。
思い出せなかった無作法より、“レンジャー”の方が不満と?
奴らの指導者、人類淘汰機関から逃げた科学者ども。
そんな風に公言していたと思ったが。
当人達からしてみれば、気が乗らんのだろうか。
子供向けのヒーローみたいで。
大人でも好きな輩は好きだとか、聞いた気が、なぁ……
しかし、どうあれ。
これは面倒な事になった。
仲間かと思って来てみたら、敵だったとは。
彼は、人類淘汰機関とは敵対する勢力の一員。
組織から逃げた科学者たちが作った集団。
何とかレンジャー……だったと思う。多分。
この遭遇。
これはこれで、どうしたものか。
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