Burn Away!
第3焦 第1話
〜Burn the FateD〜


「人類淘汰機関の、クライオ・ディープホワイト?
 死んだと思っていたが。
 いや、それよりも……ここはどこだ?
 っていうか……何だ?」

 と、私に尋ねる、なんたらブルー。

 この町は、リュシオンガルド南沿岸部。
 フォルツェ?とか言う町だ。

 見ての通りの港町。
 交易で栄え、そこそこ賑わって……

 だが、奴が聞きたいのは、そういう事では無いだろう。

 奴が聞きたいのは、この世界の事。
 別世界から飛ばされて来た、経緯やら何やらについて、だ。

「質問に質問で返すようで悪いが、それはこっちが聞きたい。
 貴様らの上役が作った、次元転送なんたら。
 その力によって、我らはこの世界に送り込まれたのだ」

“なんたら”が多くて、すまん。
 戦闘当時、相手をからかって、適当に呼んでいたのだ。
 そのせいでか、本当の名前を思い出せん。

「っていうか、何で貴様まで?
 味方の攻撃に巻き込まれたのか。
 やれやれだな」

「いや、巻き込まれたっていうか……」

 ふむん? 違うと?
 しかし、そうだという前提で、私はペラペラ。

「日頃、怠慢で傲慢な民草どもに、不満の槍玉に挙げられ。
 その挙句、仲間にまで裏切られるとは可哀想に」

「おい……聞けよ」

「この悪逆非道のクライオ・ディープホワイト。
 私でさえ、この仕打ちには涙を禁じえぬ。
 およよよよー。おーいおいおい……」

 と、私は、嘘泣き。からかい調子。
 奴らと私のやり取りなんて昔から、大体こんなモノだ。

「ち、違うって言ってるだろう!
 ただ、あの時は、そうするしか……
 その……ぴ、ぴぴ……ピンクを守る、為には……っ!」

 と、何やら頬を赤らめる、なんたらブルー。

 ここで1つ。
 親切なクライオ・ディープホワイトが説明してやろう。

 奴ら、なんたらレンジャー。
 ありがちな5人チームで、だな……

 いや、中身は子供向けの特撮番組とは違うぞ?
 外部装甲だって、もっと機能的だ。

 で、まぁ、とにかく5人チーム。
 なんたらブルーと同じく、なんたらピンクというのが存在。

 しかし……何を照れている。

 記憶違いで無ければ、なんたらブルーと、同ピンク、
 普通に付き合いがあったのでは?

 ああ、そうだ。
 思い出した。覚えているぞ。

 邪魔なこいつら、なんたらレンジャーを始末してやろうと。
 組織全体で画策していた時期があった。

 で、いつぞや、お色気作戦がどうとか立ち上がってな。
 このブルーに迫ってみたら、実は彼女持ちだったと。

 事前情報はどうなっていると、相当に憤慨しておったな。
 アレは見モノだった。

 ああ、お色気作戦を実行したのは私じゃない。
 別の女幹部だ。

 しかし、この照れ様。

 色恋云々ではなく“ぴんく”って言うのが気恥ずかしいか?
 純情青少年め。

 あるいは仲間を庇ったとか言う所業。
 そっちのが照れくさいのだろうか。

「クライオ、無事か!?」
「クライオさんッ!」

 こんな時に駆けつけて来たのは、ブラックとリリー。
 先程の騒ぎで気付かれたか。

 巻き込まずに済ませたかった。
 来てしまったのは仕方が無いが、遠ざける努力をしよう。

「無事は無事だが、ブラック。
 この場はリリーを連れて、避難を」

「……こちらは?」

 と、相手の顔を、イマイチ思い出せない様子のブラック。
 再び親切な私は説明してやる。

「なんたらブルーだ。敵だ、敵。
“なんたら”が思い出せなくて、どうにも気持ち悪い。
 貴様は覚えていないか? ほら、あの……」

「え? あ、ああ、確か……
 カリビアン・インスパイア・スーパー・ゴージャス……
 センチメンタル・デンジャラス・コバルト“ブルー”?
 とか何とか、じゃなかったか?」

 え、ちょ……そんな長い名前だったっけ?
 そこまで長いハズは無いだろう!
 私を謀ろうとしても無駄だッ!

 ブラック、わざとか?
 いよいよ健忘症か?
 こんな時にボケ過ぎだ。

 ……いや、ブラックも、奴らとの関係。
 普段からそういう遣り取りだったか。

 で、その、変な名前で呼ばれた、なんたらブルー。

「覚えていないからって、適当な事を言うな!」

 ほら違った。
 ほら怒らせた。
 健忘症は大変だな。

「っていうか、お前、ブラックって……
 ブラック・インフェルノ!
 今日こそ決着を付けてやる!」

 と、なんたらブルー。
 奴も外部装甲の下、ブラックの顔は初めてだったか?

 奴は水で槍を作り出し、ブラックにそれを投げ掛ける。

 奴は水を操る能力を持つ。
 高圧で撃ち出される水で、相手を貫通するといった力。
 まぁ、何と言うか、念動力の一種だろう。

 しかし短気なり、なんたらブルー。
 これでは説得どころでは無い。

 因縁の相手を前にしては、無理も無いだろうが……

「危なーいッ!」

 相手の攻撃姿勢に、慌てたのはリリー。
 彼女はブラックを突き飛ばそうと……

 いや、でも、質量差だ。
 小柄なリリーが突き飛ばして、ブラックがどうなる。

 実際は飛び込んだリリーを、ブラックが受け止めた。
 そのまま抱えて逃げた、という次第である。

 そんな2人を見て、なんたらブルー。
 憤懣遣る方無い様子。

 奴はブラックに不平を言う。

「くっ……子供を盾にするのか、卑怯者!」

「え、いや、この子は……誤解するな!
 この子はただ、訳あって面倒を見ているだけだ。
 誰が盾になんか!」

「お前が子供の面倒を……?
 お前が人の中に紛れられるなんて、本気で思ってるのか!」

 ブルーの顔に、深い憎悪の色が浮かぶ。
 彼は激昂のままに叫んだ。

「俺の両親と、幼い妹を殺しておいて!
 忘れたのなら、何度でも思い出させてやる!
 お前が殺したんだ! ブラック・インフェルノッ!!」


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