Burn Away!
第3焦 第3話
〜Burn the ChainA〜
「帰った所で、遠からず処分される。
なら、こちらで自由にやればいい」
「何の支援も無いのだぞ?
あまり迂闊な真似をしては……」
所変わってフォルツェの町。
一際豪奢な屋敷の中。
ここがブレイズら、後期型能力者の接収した拠点。
……なのだが、そのブレイズとグレイは揉めていた。
議題は私の持ち込んだ情報。
『元の世界に帰る方法』について、だ。
現時点で判明しているのは、魔法の力。
召喚魔法だかが、カギになるという事。
もっと調査研究してみなければ。
しかし、その為には、この世界の住人の協力が必要。
やたらと殺していては、帰る方法が見つからなくなる。
が、連中は、この世界の住人と既に交戦してしまった。
どう収拾をつけようか、という話。
「迂闊ならば、もうやった。
町1つ壊滅させたのだ。
和解など、今更だろう」
「しかし、総数も知れぬ難敵を相手にするよりは、だ。
早急に元の世界に戻り、他に道を探す。
その方が、まだ良いだろうと言っている」
「敵が来るなら迎え撃つ。それだけの話だ。
どこの世界でも変わらん」
「相手を間違えるな。
殺すべきはあちらの世界だ。
こちらでの殺戮に報奨は無い」
結局は殺すつもりか。
戻るにせよ、留まるにせよ。
こんな連中と、よく話が出来た物だ。
私やブラックらは穏健派。
彼ら無差別殺戮肯定派との間には、甚大な軋轢がある。
誰を殺すか。
どう殺すか。
その方針の問題だ。
そして、前期型能力者と、後期型。
その間にもまた、概ね軋轢がある。
序列はどちらが上か。
素質を誇るか経験を誇るか。
組織への貢献・忠節がナンタラカンタラ。
要は組織の内部もまた、くらだん人間関係の集まり。
社会の縮図というワケだ。
で、致命的に不仲なのである。
情報提供が無ければ、話し合いの機会すら無かっただろう。
ついでだから、連中を少し紹介しておこうか。
まず1人目。炎使いだ。
ブレイズ・ヴァーミリオン。
年は大体、中学生の半ば。
幼少より組織の中で育てられた。
出自はアメリカ人だったか。
金髪のブロンド。
同年代では比較的、背が高い。
が、そもそも子供なので、私とそう大差無い。
性格は乱暴。
何かと力を誇示し、他者を屈服させたがる。
人類を殺し回る前衛としては優秀だ。
しかし部下を扱う幹部としては、少々落ち着きが足りん。
それから、2人目。
グレイ・サンダークラウド。
こっちは雷使い。
もう気付いているだろうか。
幹部に与えられる呼称は、能力・特性に由来する。
雷使いだから“灰色の雷雲”。まぁ、安直な事だ。
で、そのグレイ。年はブレイズより上。
以前、経歴の書かれた資料を見たが、高校生程度だ。
褐色の肌の……どこ人だっけ。
中東から来たとか聞いた気がする。
ブレイズよりは理知的だが、やはり好戦的。
こちらは武人気質とでも言うか。
彼ら後期型能力者は、幼少より組織で育てられた。
人格形成は、組織内部の教育による所が大きい。
まさに戦闘向けの情操教育。
まぁ、用が済んだら、始末するつもりだったのだろう。
組織の運営側、なるべく手間を省きつつ。
とにかく戦力を作ろうとしていた、と思われる。
詰まる所、連中もまた、ある意味では被害者なのだ。
道を選ぶ機会を奪われて、後に引けない所まで来た。
だからと言って、人を殺していい理由にもならんか。
……しかし、埒が明かん。
ブレイズとグレイは平行線。
当分、決着は着くまい。
こちらの用事を済ませるか。
「お取り込み中の所、すまないが。
誰か、ブラック・インフェルノを見てないか?」
「知らんな」
「見ていない」
と、そっけない返事。
特に嘘を吐いている様にも見えん。
現状、隠した所で利害も無いだろうし。
しかし、それならば。
ブラックは、奴らと交戦しなかったのか?
本当に、どこへ行ったのやら。
と、首を捻る私。
怪訝そうにグレイが私に聞く。
「この町に来たという、確証でもあるのか?」
「……分からん。
まぁ、見ていないのなら、構わんさ」
この2人が見ていないとすると。
後は戦闘員どもと……ペイルか。
また来るとだけ約束して、私は屋敷を後にした。
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