Burn Away!
第3焦 第3話
〜Burn the ChainD〜
町に残された経路は3つ。
北・東・西だ。
騎士団と魔法使い達は、町の北、丘の上に布陣。
町の正面から攻撃を掛けた。
接敵後、後退。
調子付いて追って来る敵を、カウリーの罠へと誘導。
草原に設置された魔法のトラップ。
魔法の炎が戦闘員達を焼く。
敵軍、半壊。
半日掛けて仕掛けただけの事はある。
悪くない威力だ。
半壊した敵軍に、騎士らと魔法使いらが殺到。
トドメを刺さんとする。
と、退屈していたのだろう。
血の気が多いブレイズが出た。
ブルーがこれに当たる。
その隙に、サウザント老らは西から。
私は町の東から、再度、侵入を試みる……
……つもりだったのだが、1つ大きな誤算。
町に入った折、リリーが単独で先走った。
ブラックを探そうと、焦っていたのだろう。
これは非常にマズイ。
戦闘員の主力は、丘の方へ誘導された。
しかし、まだ3割ばかり、町に残っている。
遭遇してしまったら、リリーは……
とか考えていると、前方から戦闘員の群れ。
「クライオ様! 侵入者が!」
どうやら私の離反には気付いていない様子。
ここは機転を利かせよう。
「分かっておる! 侵入者は私が追う!
お前達は丘に行くのだ!
ブレイズが今、なんたらブルーと戦っているぞ!」
と、私は戦闘員を誘導。
ブルーや騎士団には悪いが、今はオトリになって貰う。
後で必ず加勢する。
……と、虫のいい物言いであるが。
ここでリリーを失うなら、私には戦う理由すら危うい。
リリーはどこに?
瓦礫の町を私は走る。
と、突然、路地が光った。
魔法の光? リリーか?
私が駆け寄らんとすると、雷光が大気に煌いた。
それを逃れて宙を舞うのは、色白の華奢な身体。
ペイル・フローズン。
バク宙と共に放つ氷槍の雨。
それをかわし、彼女を追って出るのはリリー。
「この、人殺し!
お兄ちゃんを返せ!」
「……お前、嫌い」
うーむ、最悪だ。
最悪の状況だ。
先にリリーを庇った場合。
ペイルの説得が難しくなる。
先にペイルを説得したのでは。
今度はリリーの猛攻でペイルが危うい。
私が態度を決めかねていると、
「クライオさん!」
「……クライオ?」
2人同時に気がついた。
あーもー、どうするんだコレ。
「クライオさん、こいつ分からず屋なの!
お兄ちゃんを出してって、ずっと言ってるのに!」
「ブラックなら居ないって、ずっと言ってる、のに」
「うるさーい!
クライオさん、一緒に戦って!
説得するより倒した方が早いよ!」
「油断するなリリー!
彼女はまだ本気でないぞ!」
「クライオ、そいつの仲間?
私を殺しに来た。敵だ」
「待て待て! 話を聞けって!
私は君の敵じゃない!」
「クライオさん!?
まさか裏切ったのね!
私、信じてたのに!!」
「違うってば!
リリーも落ち着け!
ぎゃーっ!!」
私の話も聞かず。
私に襲い掛かって来る、リリーとペイル。
息、ぴったりじゃないか。
絶対、友達になれると思うんだが……
いや、それよりも。
これが修羅場と言う奴かッ!
対人関係が不出来な私に、かような展開が訪れようとは!
とか感動している場合ではない。
ペイルが強いのもそうなのだが。
リリーも私と別れて以降、修行を積んでいたらしい。
術の腕が増している。
雷撃が、氷槍が、私を狙って降り注ぐ。
いっそ、このまま誘導して、2人とも戦場から遠ざけるか。
とも思ったが、
「あっ、居たぞ! 侵入者だ!」
「ペイル様がご乱心だ!?」
「いや、クライオ様が裏切ったのか!?」
あーもー、逃げ切れんじゃないか!
残りの戦闘員まで集まって来た。
敵に味方に挟まれて、万事休すの私。
袋小路に追い詰められ、もはやこれまでか。
覚悟を決め、天を仰ぎ見る。
……と、何やら、どこかで見た様な光。
あれって、なんたらレンジャーの、アレだ。
異空間に相手を飛ばす、技だか必殺武器だかに似て……
が、降って来て?
私と、リリーやペイル達を分断。
そして、その光の中に人影。
現れたのは……
「クライオ、無事か!?」
「うわ、ホントに異世界なんてあるんだな」
ブラック!?
と、なんたらレッド!?
今度はどういう状況だ。
ついて行けんぞ、まったく。
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