Burn Away!
第3焦 第3話
〜Burn the ChainE〜
「お兄ちゃん!?」
「ブラック、どこへ行っていた!」
「話は後だ。
まずは、ここを切り抜ける!」
並み居る敵。
組織の下級戦闘員。
右手に剣、左手に炎。
ブラックが正面に当たる。
私の武器は氷塊。双方向の円刃長斧。
長い武器は不慣れだが、リリーを守るには都合がいい。
ブラックを背に反転、右後方を討つ。
残る左方はレッドの担当。
爆ぜる拳が炎を呼ぶ。
リリーの雷撃がこれを援護。
「リリー、殺しは!」
「分かってる!」
ブラックの声に答えながら、リリーは魔法の杖を振るう。
彼の存在を取り戻し、冷静になったのだろう。
狙いは手足。感電、無力化。
もはや雷撃に殺意は無い。
「何という事だ!
ブラック・インフェルノ様が!」
「我々では歯が立たん!
グレイ様に連絡を!」
7、8人、無力化した所で、不利を察したか。
戦闘員達は退いて行った。
その中には、ペイルの姿も。
「ペイル!」
「来ないで!」
私を拒む彼女の力。
巨大な霜柱が道を塞ぐ。
その向こう、走り去る白い影。
傷つけてしまっただろうか。
孤独な彼女に、仲間を、孤独でない様を見せ付けて。
来ないでと言った、彼女の震える声。
私の耳に焼き付いて離れない。
…………ならば、私は。
「すまない、ブラック。
後を任せる」
「クライオ!? 状況は!」
「リリーに聞いてくれ!」
私はブラック達を置き去りに。
迂回してペイルを追う。
私はリリーに、ブラックに救われた。
今度は私がペイルを救おう。
私の受けた優しさを、私の所で止めては居られない。
放っておけないのだ。
私が、かつて抱えていた、孤独と痛み。
恨みつらみの数々。
彼女は“今”、それを抱えて苦しんでいるのだ。
それを差し置いて、私だけ救われると思うのか?
私が受け入れられるなら。
彼女だって、受け入れられてもいいじゃないか。
私は走る。
薄暗い町の中を。
上空には暗雲。
ペイルの冷気が呼んだのか?
いや、これは……
「やはり、と言うべきか」
轟音と閃光。
雷撃が私を狙った。
私は咄嗟に氷柱を地面から出す。
同時に、左方へ横転。
姿勢を低くして、雷撃を氷柱へ反らす。
体勢を立て直しつつ、私は襲撃者を探した。
これは“奴”の仕業だ。
……見つけた。
屋根の上に人影。
見覚えのある、黒い耐電コート姿。
屋根の上から飛び降りて来た。
「その様な気はしていた。
組織の監視が無い、この世界。
現地人との繋がりを持ち、頭も回る貴公の事だ。
対立する我らを討つ機会あらば、実行しないハズは無い」
「……ふふん、買い被りだな。
全てが意図した所でもない」
「いずれにせよ、覚悟せよ。
敵対するならば、容赦はせぬ」
グレイ・サンダークラウド。
雷使い。雲も奴が呼んだのだろう。
奴の怒気を体現するかの様に、幾筋もの稲妻が雷雲に煌く。
撃ち下ろされる時を待っている。
サウザント老らは、どうしただろうか。
奴と当たるハズだったのだが。
道に迷ったか、戦闘員の足止めを受けたか。
ブレイズの襲来に本隊の不利を悟り、引き返したと見るか?
どうあれ、居ないものは仕方ない。
私が対抗するしかない。
しかし能力的に、奴の方が上。
マトモに取り合った所で、倒せる相手ではない。
が、それでも。
「私は行かねばならんのだ!
どけ、グレイ・サンダークラウド!
私はペイルに用がある。
ここは通して貰う!」
「意気や良し。だが、易々とも通せぬ話だ。
まずは、この者達から相手をして貰おうか」
グレイが指を鳴らすと、姿を現す戦闘員達。
その数は15ばかり。
町に残っていた、ほぼ全戦力だろう。
私1人で、どこまで出来るか……
と、突如、後方左翼。
敵の包囲が乱れた。
戦闘員の囲みを突き破り、姿を現す黒と赤。
「クライオ、無事か!?」
「1人で突っ走るなっての!」
「ブラックに、レッド!?
何故、追って来た!
状況ならリリーに聞けと!」
「ごめんなさい!
でも、私、あの人に謝りたくて」
と、ブラックの陰から、リリーまで……
どうやら彼女なりに。
ペイルに悪い事をしたと思ったらしい。
やはり、受け入れてくれる者は居る。
誰かは受け入れてくれる物だと思う。
ペイルとは、もっと、きちんと話をして……
しかし、どうする。突破か? 後退か?
ペイルの事は一度諦め、本隊への救援を急ぐべきか?
そんな葛藤も、今更だ。
グレイも見逃しはしないだろう。
後方から追われて、リリーを危険に晒せない。
ペイルを放っておいて、本隊後方を突かれても困る。
そして何より、
「起きた事は変えられん、か。
ならば、さっさと蹴散らすぞ。
ペイルを捕まえて、本隊の救援に向かうまで、だ」
各自、抜刀。
ここは押し通る!
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