〜竜と女の子の物語B〜
竜と女騎士の戦いより、十年前。
ある所に、1人の女の子が居ました。
彼女は早くに父親を亡くしていて。
母親が女手1つで彼女を育てていました。
母子の暮らしは、
とても貧しい物でした。
女の子はいつも
ボロボロの服を着ています。
それを見た町の子供達は、
事あるごとに彼女を虐めました。
やがて女の子は
町の子供達に近づかなくなります。
代わりに野山で遊ぶようになりました。
母親は昼も夜も働き詰め。
女の子はずっと、ひとりぼっちでした。
ある時、母親が働き過ぎて、
病気になりました。
しかし、2人の家には、
薬を買うお金がありません。
女の子は町に出て、
助けてくれる人を探します。
「お願いです。助けてください。
お母さんの薬を買うお金が要るんです」
「見ず知らずの人に、
お金なんてあげられないよ」
「そんなにお金が欲しいのなら、
山にでも行ってみな。
竜が財宝を隠しているんだってさ」
女の子は意を決し、山に向かいました。
竜の住み家はすぐに見つかります。
中には宝の山。しかし、竜は居ません。
「勝手に取ったら泥棒だよね。
お父さんに怒られちゃう」
母親を助けたいのも山々です。
しかし死んだ父親との約束もまた、
大切にする女の子。
竜の帰りを待つ事にします。
それから女の子と竜は友達になりました。
毎日、家の手伝いを済ませると。
女の子は、竜の住み家に向かいます。
竜の背に乗って野山を散歩します。
初めて出来た友達。
竜にとっても女の子にとっても、
楽しい日々が続きました。
しかし、ある日。
女の子が町へ帰る途中の事。
恐ろしい形相をした竜が、
凄い勢いで山から飛んで行きます。
竜が向かうのは、女の子の住む町。
町への道の途中には、
宝物が点々と落ちていました。
「泥棒が入ったんだ!」
事情を察した女の子は、
すぐに竜の後を追いました。
女の子が町に着くと、
竜の姿は無く、町はボロボロでした。
幸い、死んだ人は居ません。
竜が手加減したのでしょう。
ですが、女の子の家もボロボロです。
親戚の所へ引っ越す事になります。
女の子は、竜と会えなくなりました。
それからしばらくして。
女の子の母親は、
病気を悪くして死んでしまいました。
いつまでも、親戚の家には居られない。
女の子は仕事を探します。
美しく成長しましたが、
取り立てて学はありません。
ずっと虐められていた事もあって。
町で上手くやっていく自信も
ありませんでした。
彼女の取り得と言えば、
野山で育った丈夫な身体。
ある時、女の子は、
武術で身を立てる事を思いつきます。
親戚たち心配しましたが、
彼女の決意は固い様子。
それを知ると、
剣を一振り与えてくれました。
旅に出た女の子。
彼女は、とても勇敢した。
森の盗賊と戦って。
山の山賊と戦って。
海の海賊と戦って。
女の子は、人々に感謝されました。
西の魔物を退治して。
東の魔女を退治して。
南の魔王を退治して。
女の子は、とても有名になりました。
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