〜悪魔と老人の物語B〜


 悪魔のお陰で、老人は、
 切った木を高く売る事が出来ました。

「いいねぇ。今夜は、ご馳走にしよう」

「爺さんよう。
 そんな目で料理なんて出来んのか?」

「慣れてるから、ねぇ」

 そして、老人と悪魔が家に辿り着いた時。
 戸口に死神が待ち構えていました。

「ご老人、あんたの寿命は終わっている。
 お迎えに来たよ」

 これは魂の横取りです。
 老人には悪魔が先に、
 目をつけていたというのに。

 悪魔は死神を遮って言います。

「ちょっと待ったぁ!
 この爺さんは先約済みだ!
 大体、寿命なんて、まだ先だろう。
 魂が欲しいからって騙す気だな!?
 俺より先に爺さんを殺そうなんて、
 百万年早ぇぜ!」

「おや、何でこんな所に悪――」

「言うんじゃねぇッ!
 と、とにかくだ。
 俺は悪魔だから、
 寿命なんて一目で分かる。
 それによ、どーせ魂集めるなら、
 町の方に行けよ。
 いっぱい人間居るんだからよ!」

「なるほど、それもそうだ。
 邪魔したな、悪――」

「だーから、言うなっつーの!」

 とうとう悪魔は、
 死神を追い払ってしまいました。

「爺さん、もう安心だぜ。
 死神の野郎は俺が追い払ったからな。
 ……おい、爺さん?」

 悪魔が振り返ると、
 老人の様子がおかしいです。
 その場にうずくまって、
 動けなくなっていました。

「おい、爺さん! どうした!」

「ああ、すまないねぇ。
 どうにも身体の具合が悪くて。
 すぐに晩御飯の支度をするから」

「いいから薬飲んで、大人しく寝てろ!
 すぐ医者を呼んで来っからよ!」

 悪魔は大急ぎで家を飛び出します。
 医者を呼びに、町へ飛んで行きました。


「風邪ですな。薬を飲めば治るでしょう。
 しかし、まぁ、ご高齢です。
 暫くは安静にしていて下さい」

 町から連れて来た医者。
 彼は老人を診断すると、
 薬を出してくれました。

「それから、そちらの悪――」

「言うなっ!」

「あー、まぁ、何でも良いですが。
 見た所、貴方が病気の原因
 というワケでもなさそうだ。
 彼を助ける気なら、
 間違っても無理をさせない様に。
 それと栄養です。
 元気が出る物を食べさせてあげて下さい」



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