〜魔王と姫の物語B〜


 そのまたある時も、その次の時も。

 男は人々の為を思って行動するのですが。
 そして確かに悩みは無くなるのですが。

 男の、加減を知らず、
 独り善がりなやり方。
 それは事あるごとに
 大惨事を引き起こします。

 男はいつしか、
 魔王と呼ばれるようになりました。
 素性を知られると、
 人々から恐れられます。

「良い事をしているハズなのに、
 どうしてだろうか……」


 そんなある日の事。

 男が森の中を歩いていた時。
 人里離れた所に、
 石造りの塔を見つけました。

 塔の上からは、すすり泣く声。

 男は魔法で飛び上がり、
 窓から中を覗いてみます。

 すると塔の中にいたのは、
 1人の美しいお姫様。

「そこに居るのは、どなたですか?」

「通りすがりの魔法使いだ。
 お前は何を泣いている」

「私を大切に思うあまり。
 父が私を、ここに閉じ込めたのです」

 では、この塔が無くなれば……

 とは思ったのですが、
 助ける度に嫌がられてきた男。
 慎重に、慎重に、姫の願いを確認します。

「では、お前は、ここから出たいのだな?」

「いいえ。私がここを出ると、
 父が私を心配します」

「では、その父親がいなくなれば」

「いいえ、いいえ!
 確かに困った人ですけれど、
 私には大切な人なのです」

「……では、お前はどうしたいのだ」

 何やら複雑な、話が長くなりそうな予感。
 不作法とは思いつつ、
 男は窓から部屋に上がります。

 すると姫は男の手を握り、
 真剣な顔で言いました。

「どうか、お願いです!
 私のお友達になって下さい!」



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