〜魔王と姫の物語C〜


 友達になって欲しい。
 そう言われて、男は困ってしまいました。

 男は今まで、友達なんて居ませんでした。
 どうしていいか分かりません。

 男はシドロモドロに言いました。

「そ、そのっ、願いは……
 かか、叶え、られな、い」

「そんな! どうしてです!?」

「準備が足りない……というか」

「そうですか。きっと、お忙しいのね。
 では、また準備が整いましたら。
 私はずっと、ここに居ますから」

「あ、ああ、うむ。
 魔法使いは困っている者の味方だ。
 いつか必ず、戻って来よう」

 その時父王が、姫の様子を見に、
 塔までやって来ました。
 兵隊たちを引き連れて、
 姫の部屋まで上がってきます。

 王は男の姿に驚いて言います。

「むむ、何奴!」

「陛下、あの者は確か、手配書に。
 近頃ウワサの魔王です!」

「えぇい、曲者め! 姫から離れろ!
 弓兵! 射殺してしまえ!」

 王様の命令で、
 兵隊たちは弓矢を放ちます。

 男は姫を守ろうとして、
 矢傷を受けます。
 窓から転げ落ちて行きました。

「酷いわ、父上!
 どうしてこんな事を!」

「姫よ、落ち着くのだ。
 あれば魔王だ。悪い奴だ。
 お前を連れ去りに来たのだろう」

「そんな、でも……
 優しそうな人だったのに」


 一方、傷を受け、窓から落ちた男。
 彼は姫を脅かした不届き者だと、
 国中に手配されました。
 日々、兵隊たちに追い回されます。

 傷は痛み、手当てをする暇もなく……
 男は次第に荒んでいきました。

「そんなに魔王がお望みなら。
 本当に、魔王になってやろうじゃないか」

 男は人里を離れます。
 そして無尽の荒野に城を築き、
 そこに住みつきました。

 彼に従うのは、
 魔法で動く石の人形や、
 骸骨の兵隊たち。

 男は彼らと共に、
 近くの国を荒らして回ります。

 とうとう男は本当に、
 魔王になってしまいました。



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