〜魔王と姫の物語G〜


 ある教会の修道女は言います。

「まぁ、魔王さんが教会に!
 改心なさったのですね。
 素晴らしい事です。
 暴力を使うのはいけない事です。
 みなさん話し合いましょう!
 どんなに傷つくことになったとしても。
 私は人々の内側にある、
 善なる心を信じます!」


 しかし、ある剣士は言います。

「仕返しされないのを良い事に、
 増長する輩は後を絶たん。
 相手の暴力を止める為、
 時に暴力を使うのも止むを得まい。
 母を殺した物取りを追うのだ。
 もう悲劇は起こさせぬ。
 ……これにて、御免!」


 さまざまな人と出会い、
 意見を交わし……
 ですがやはり、
 これだという物には出会えません。

「やはり分からぬ。
 死んでしまった方が良かっただろうか」

「まぁまぁまぁ!
 人里以外にも人はいますよ。
 諦めずに行きましょう!」

「住む所が違えば、
 考え方も違うだろうか」


 2人は人里を離れた所にも、
 足を運んでみました。


 山道で出会った山賊は言います。

「日照りと急な長雨で、
 俺の村は作物が全滅だ。
 人でも襲わなきゃ生きていけねぇ。
 だから、頼む! 見逃してくれ!
 仕方がなかったんだ!
 誓って誰も、命までは奪っちゃいねぇ!
 それが俺たちの、
 せめてもの正義って奴だ!」


 森の奥の魔法使いは言います。

「人間、死ぬ時は死ぬモンだ。
 自然の摂理だとか、
 神様の決めたルール通りに、ね。
 あたしゃズルしてまで、
 長生きしようなんて思わない。
 もし、あたしが人を騙したら。
 そしたら、可愛い弟子が、
 嘘つきの弟子になっちまうだろ?
 それだったら、あたしゃ、
 潔く死ぬ方を選ぶねぇ」


 それから何年も、何年も。
 2人は旅を続けますが、
 答えは見つかりません。

 魔王はふと、召し使いに言いました。

「……召し使いよ」
「はい?」

「答えは出ない。
 が、分かってきた事はある」

「それは一体、何でしょう」

「結論を急ぐな。
 もう少し行ってみよう」



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