〜魔王と姫の物語I〜
曲がりなりにも答えを得た魔王。
今度は、あの女の子を探します。
噂では、大きな竜を従えて。
どこかの国の領主になっているのだとか。
女の子を探す旅の途中、
魔王は召し使いに言いました。
「お前には随分と世話になった。
くじけそうな時、励まして貰った。
何か、私から、
叶えてやれる願いは無いか?」
「そうですねぇ……
私は魔王様と違って、
ごく普通の人間です。
長旅で、さすがに疲れました。
どこかで落ち着けたらなぁ、なんて」
「それは……すぐには無理だな」
「あはは。いいですって。
それより、まずは、
あの女の子を探さないと」
それから、幾つか町を渡り歩いていると。
とある町で、何やら
騒がしいのに気が付きました。
殺気立った住人達が、
往来を行き交っています。
農具を武器にして
町を歩き回っています。
「これは一体、どうしたのだろうか」
「ああ、これは革命ですね。
市民が立ち上がって、
悪い王を倒したのでしょう」
見ると広場には処刑台。
処刑台の上には、美しい姫。
姫の顔には覚えがありました。
魔王がかつて塔で出会った、
あの囚われの姫君です。
すぐにも助け出したい所。
しかし、むやみに力を使ったのでは、
昔の魔王に逆戻り。
魔王はまず、近くの人々に、
話を聞いてみる事にしました。
「私は旅の者だ。
何か革命が起きている様だが、
どういった事情なんだ?」
「どうもこうも!
俺たちが飢饉で苦しんでいるのに。
城の奴らは何不自由無く、
贅沢に暮らしていやがったんだ」
「誤解です! お城にだって、
もう、食べる物が無いんです!」
「嘘をつくな!」
「きっと、どこかに隠しているんだ!」
頭に血が上った市民たちは、
姫の言う事に耳を貸しません。
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