〜魔王と姫の物語J〜


 やがて、
 隠れていたのが見つかったのでしょう。

 王様が捕まって、
 処刑台に連れて来られました。

「分かった、悪かった! わしを殺せ!
 だが、姫には手を出すな!」

 自分の命と引き換えに、
 姫を助けようとする王様。

 ですが革命のリーダーは、
 冷たく言います。

「要求できる立場か、邪悪な王め!
 食料をどこに隠したんだ!」

「無い物は無いと言っている!」

「まだ嘘を言うか!
 もういい! 王を殺せ!
 姫もすぐ、後を追わせてやる!」

「そうだ、殺せ殺せ!」
「死ね! 邪悪な王め!」

 目の血走った市民たちは、
 王が死ぬのを心待ちにしました。

 そして、今にも王が殺されようという時。
 魔王は処刑台の前に歩み出て、
 革命のリーダーに言います。

「本当に、城には食料があったのか?」
「そうに決まっている!」

「根拠は何だ?」

「王は俺たちを助けてくれなかった。
 城に閉じこもって隠れていた。
 きっと、隠れて贅沢をしていたんだ」

「お前たちが税を納められないぐらい。
 苦しんでいるのに、か」

「そうだ!」

「お前たちが税を納めないのに、
 贅沢していたというのか」

「……そっ、そうだ」

「何も納めないのに、どうやって?
 その贅沢は、
 どこから出て来たというんだ?」

「うっ……それは、その……
 蓄えか何かがあって……?」

「それを見た者はいるのか?」
「いや、それは……」

「見た者がいないのに、
 どうしてそれが分かるのだ」

「……う、うるさい!
 とにかく王と姫を殺すのだ!
 やれ! やってしまえ!」

 リーダーの合図で大男が、
 大きな斧を振り降ろしました。

 しかし、魔王は指一本でそれを止めます。
 斧をつまんで大男もろとも。
 遠くへ投げ飛ばしてしまいました。



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