〜魔王と姫の物語K〜


「な、何をする!
 お前も王の仲間か!」

 リーダーは剣で魔王に斬りつけます。

 しかし、魔王の魔法は絶大でした。
 剣は魔王に当たった途端、
 粘土のように折れ曲がります。

「ば、化け物め……!」

 恐れおののく革命軍のリーダー。

 ですが魔王は彼を傷つけるでなく、
 言葉で質します。

「私はただの、通りすがりの魔法使いだ。
 お前たちこそ何なのだ。
 革命軍か? それとも、
 ただの暴徒なのか。
 本当に、お前たちは正しいのか。
 それを証明出来るのか」

「お、王が間違っているんだ。
 俺たちが苦しいというのに、王は」

「なるほど、民を顧みない王は、
 確かに悪なのだろう。
 だが、相手が間違っているとして。
 だからって、自分も間違えて良いのか?
 村を追われた腹いせに、
 村を丸ごと焼き払った魔王の所業。
 それと一体、何が違うというのだ」

「た、対等な者同士の間なら、
 あんたの言う事も分かる。
 だが王は、俺たちとは違う!」

「自分たちと違えば殺せるのか。
 今、お前たちのしている事は何だ。
 貧しい者に石を投げる、
 貴族の子供と何が違うのだ」

「そうじゃない!
 王には、民を安んじるという
 義務があって……!」

「ならば義務を果たさせる事こそが、
 目的ではないのか。
 苦しい生活を改善したいのだろう。
 それとも首を跳ねた後、
 皆で王を食べるのか?
 この大勢の市民で、
 この老人と娘を分けるのか。
 この騒ぎに見合うだけ、
 誰の腹が膨れるというのだ」

 あくまでも冷静に説く魔王の態度。
 リーダーも市民たちも、
 次第に革命の熱が冷めていきます。

 やがてリーダーは、観念して言いました。

「ああ、そうだな。認めよう。
 我々も間違った事をしているのだろう。
 だが、食料は見つからなかった。
 凶作に次ぐ凶作だった。
 我々にはもう蓄えが無い。
 ……王よ、言ってくれ。
 パンはあるのだと。
 そうでなければ、我々は。
 これから来る冬を、
 どうやって乗り切れば良いのだ」



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