〜暴君と侍女の物語B〜


 度重なる王子の無理難題。
 何度も失敗する、侍女の女の子。

 ですが彼女は、めげる事無く、
 繰り返し挑戦します。

 誰も見向きをしない中。
 ただ1人、自分を救ってくれた王子。

 彼にまで見放されたら、
 生きて行けない気がします。
 何とか期待に応えなければ。

「崖を登るには、
 筋力が足りないのかも知れない。
 もっと体を鍛えてみよう」

「ケンカを収めるには……
 巻き込まれて負けないだけの力。
 それと、言い負かすだけの知恵が欲しい」

「あの怪物、お城の剣が効かなかった。
 もっと強い武器は?
 無ければ作るしかないかなぁ……」


 王子は王子で、無理強いをする一方。
 いつも女の子を気遣っていました。
 陰から見守っていて、
 必要になると助けを呼びます。

「あいつ、崖から落ちそうだぞ。
 そこのお前、受け止めるのを手伝え」

「武術の師範。それと家庭教師。
 俺に教える片手間でいい。
 あいつも見てやってくれ」

「良い金属は手に入らないか?
 装飾品ではない。
 剣を作るのに良い金属だ。
 それと、鍛冶屋。
 小娘が剣を作りたいと言って来たら、
 作り方を教えてやれ。
 褒美を出してやるぞ」

「何でこんな事をさせるか、だと?
 そんなの、決まっているだろう!
 手柄を立てさせて、
 俺ではなく父上の家来にして貰う。
 そうなれば、俺に何かあっても……」


 可哀想な女の子の熱意。
 本当は優しい王子の思い遣り。
 それを知ったお城の人々は、
 協力を惜しみませんでした。

 やがて成長した侍女の女の子。
 お城の誰よりも強く、
 誰よりも賢い侍女になりました。


「もう侍女なんか辞めて、
 何にでもなれそうだな。
 騎士団長は部下に欲しいと言う。
 学者の連中と、
 調理場も来てほしいそうだ。
 お前、他に何か、
 やってみたい仕事は無いのか?」

「私がお仕えするのは、
 王子様、ただ1人にございます」

「ふん、物好きな奴だ。好きにしろ。
 これだけ実力があるのだ。
 あとは、もう、何が起きた所で……」



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