〜暴君と侍女の物語D〜
命を救われた王子は、
侍女に尋ねました。
「どうして俺を助ける。
1人で逃げても良い物を」
「王子様に亡くなられたりしては。
私はとても、幸せになどなれません」
「……面倒な奴だ。好きにしろ。
だが、2人こうして生き残ったからには。
まず父上に、事情を説明しなければ」
やがて2人は王様に呼ばれました。
その晩、何があったかを聞かれます。
妃を殺した理由。
毒の入った酒とグラス。
事情を聴いた王様は、
2人の罪を不問とします。
しかし内心、疑っていました。
「妃と不仲であった、
あの乱暴な王子の事だ。
気に入らぬからと
殺してしまったのではないか?
あの賢い侍女は、
それを庇っているのではないか?」
疑念の晴れない王様の耳に、
1人の大臣が囁きます。
「あの様なご子息を、
放っておいてはなりません。
次は御身が危険なのではありませんか」
「跡継ぎは、もう1人居ります。
心優しい弟君が。
こちらに跡を継いで頂いた方が、
民たちも安心でしょう」
「民の未来の為、奥方の仇を討つ。
これは正義の行いですぞ?」
「何、事が公にならねば良いのです。
子殺しとて、陛下のお名前に
傷がつく事などありますまい」
言葉巧みに王子暗殺をほのめかす大臣。
彼の正体は、死んだ王妃の兄でした。
素性を隠し、王妃の口添えで出世。
その王妃を殺した王子の事を、
とても憎んでいたのです。
そうとは知らない王様。
大臣に言われるままに、
王子に難題を課します。
「王子よ、優秀なそなたにこそ、
我が跡を継いで欲しい。
しかし、それには条件がある。
7つの秘境を巡り、
7つの秘宝を手にするのだ。
そなたの知恵と力を示した時。
わしはそなたに、王位を譲る事にしよう」
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