〜暴君と侍女の物語E〜


 疎遠だった父王に期待されている。
 王子は意気揚々と、
 旅支度を整えました。

 そして王子の旅のお供には、
 頼もしげな10人の兵隊たち。
 それと、どこか不安な顔をした、
 忠実な侍女が1人でした。

 侍女は考えます。

「あの大臣、死んだ王妃と
 親しくしていたのを見た事がある。
 それが昨夜、王陛下に呼ばれて行った。
 王妃の復讐など、
 企んで居なければ良いのですが……」


 しかし残念な事に、
 侍女の悪い予感は当たりました。


 秘宝を探す旅は、
 とても長い道のりでした。
 やがて夜になります。

 最初の晩、
 王子たちは宿屋に泊りました。

 王子が寝てしまうと、
 兵隊の2人が忍び寄り。
 王子目掛けて剣を振り上げます。

 ですが寝たフリをしていた侍女。
 風の様に駆け、隠した短剣で
 2人を殺してしまいました。


 翌朝、王子は侍女に尋ねます。

「2人減ったな。
 何かあったのか?」

「つらい道のりです。
 逃げ出してしまったものかと」

「ふん、まぁいい。
 足手纏いなど、居るだけ邪魔だからな」


 次の晩は、村の民家。
 狩人の家に泊めて貰いました。

 王子が夜風に当たりに外へ出た所。
 3人の兵隊が後をつけます。

 それに気付いた侍女は、
 狩人の家から弓を借ります。
 稲妻の様に矢を放ち、
 3人を次々に殺しました。


 翌朝、王子は侍女に尋ねます。

「今度は3人か。
 どこへ行ったのだ?」

「詳しくは聞いておりませぬが……
 1人が病に倒れ、
 他の2人が運んで行ったものかと」

「村で養生させても良かろうに。
 まぁ、病気が感染しても困るだけだな」


 その次の晩は野宿でした。
 人里離れた森の中で、
 泊まれる所がありません。
 王子は木のうろに隠れて眠り、
 他の者が見張りをします。

「侍女殿、この所、
 よく眠れていないのでは?」

「我らが代わりを務めます。
 どうか今夜は、ごゆっくりと」

「王子もお年頃です。
 女性が寄り添っていたら、
 緊張してしまいませんかな?」

 兵隊たちは、あの手この手。
 侍女を王子から引き離そうとします。

 ですが侍女は頑として、
 王子の側を離れません。

 やがて業を煮やした兵隊たち。
 本性を現し、
 王子と侍女に襲い掛かります。

 侍女は寝ている王子の剣を借り、
 烈火の如く剣を振るいます。
 瞬く間に兵隊たちを、
 一人残らず斬り伏せてしまいました。



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