〜暴君と侍女の物語F〜


 やがて、夜が明けると。
 お供の兵隊の姿が、
 ただの1人もありません。

 王子は侍女を問い詰めました。

「俺が気付かないと思っているのか?
 お前が兵たちを殺したのだろう。
 奴らは王妃と親しかった、
 大臣の手の者か?
 大方、俺の命を狙った所を、
 俺を守る為にやったのだろう。
 どうして隠そうとするのだ」

「……失礼いたしました。
 長旅でお疲れもありましょう。
 余計なご心配をかけてはいけないと。
 秘密のうちに対処しようかと」

「それこそ余計な気遣いだ。
 お前が居るというのに、
 一体、何を心配する必要がある。
 まぁ、おかげでよく休めたが。
 旅を続けるぞ。
 城で父上が待っているのだ」

 父親に認められたくて、
 張り切っている王子。

 その気持ちを察している侍女。
 その父王が王子の命を狙っている
 かも知れないとは。
 とても言い出せませんでした。


 王子と侍女は旅を続けます。

 数々の山を登り、谷を越え。
 数々の怪物を退治して。
 数々の遺跡の謎を解き……

 2人はとうとう、
 7つの秘宝を手にしました。

「とうとう7つそろったぞ。
 父上も喜んでくれるであろう。
 しかし侍女よ。
 秘宝がそろったというのに。
 お前はなぜ、そうも、
 浮かない顔をしているのだ?」

「ご心配には及びません。
 ただ、険しい旅路でしたので、
 疲れが溜まっている様です。
 剣を振るう手は痺れ、
 足は痛みに震えています。
 もしお許し頂けるのでしたら。
 どうか帰りの旅は、
 ゆっくり参りませんか」

「そうか、随分と苦労を掛けた。
 もっと早くに言ってくれれば良い物を。
 お前が倒れてしまっては、
 俺も心許無いからな。
 帰りは万全を期し、
 休み休み行くとしよう」



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