〜暴君と侍女の物語M〜


 暴君の戦争は止まりません。

 南の国を侵略し。
 東の国を蹂躙し。
 西の国を併合し。
 彼の国は、強く大きくなりました。

 そうして国が大きくなるにつれて。
 周りの国々は協力して、
 彼の国に立ち向かう様になります。

「どうせ上辺だけの同盟だ。
 密偵を送り込み、悪評を流し、
 疑心暗鬼にさせてやれ」
 他人を信じられないのは、
 私も奴らも同じハズだ」

 優れた武器を作る国も、
 優れた兵士を持った国も。
 知略を尽くす暴君の敵ではありません。


 ですが、ただ1国だけ。

 彼が長く攻めているのに。
 どうしても
 陥落させられない国がありました。


 広がった暴君の国と、相手の国。

 その国境付近に、1人の女領主が住む城。
 小さくも強固な城がありました。

 大して強くも大きくもない国。
 その城さえ陥落させてしまば。
 勝利は、あっという間のハズでした。

 しかし女領主が苦境に立たされる度。
 大きな竜、隣国の魔女、
 荒野の魔王さえもが。
 彼女を助けにやってきます。

 やがて、とうとう暴君の国は、
 攻め切れなくなりました。
 暴君は女領主の国と、
 停戦交渉をする事にします。


「忌々しい女領主め。
 何故こうも手こずるのだ。

 取り立てて学も無いと聞く。
 その女の戦い方が、
 俺と比べて、どう優れていたのだ?

 かくなる上は、毒でも盛るか。
 暗殺者でも放つか……
 いずれにせよ、
 一度その顔を見てやるとするか」


 暴君は大勢のお供を連れて、
 停戦交渉の場に臨みます。



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