〜魔女と王子の物語B〜
女の子とお婆さんの暮らす小屋。
外から見ても怪しいのですが、
中はもっと怪しげでした。
壁には何かの干物や薬草。
鍋には不気味な色の液体。
棚には怪しい本が並んでいます。
「ふふん。坊や、
色々聞きたそうな顔だが、話は後だ。
こいつが助からないと、
あの子が人殺しになっちまう」
黒焦げ男をベッドに寝かせ、
お婆さんは治療を始めます。
「雷を使ったのは失敗だが、
焼き加減は悪くない。
どうにか助かるだろう。
坊や、うちの子を呼んでおいで。
そろそろ終わった頃だ。
お説教をしてやらないとねぇ」
お婆さんにそう言われて、
王子が様子を見に行きます。
すると、森に町の人たちが
集まって来ていました。
彼らは女の子を取り囲み、
口々に彼女を責め立てます。
「あんな風に雷が落ちるなんて、
おかしいと思ったんだ!」
「今度は何を企んでいるんだ」
「大変な事になる前に、
退治した方がいいんじゃないか?」
「出て行け、悪い魔女め!
わしらの山から出て行け!」
人々は女の子に、厳しい言葉を投げ掛け、
石を投げつけました。
あまりの痛みと恐ろしさに、
立ち尽くしている女の子。
理不尽に思った王子は、
間に割って入ります。
「止めるんだ! 石を投げるなんて、
酷いと思わないのか?
雨を呼んだのだって、
火を消す為じゃないか。
一体、何がいけないんだ!」
「何だい、この子供は」
「僕はこの国の王子だ!
今すぐ石を投げるのを止めろ!
でないと牢屋に入れてしまうぞ!」
王子が怒鳴りつけると、
町の人たちは顔を見合わせます。
「そりゃ、おかしいですぜ。
悪い奴を懲らしめて、
どうして牢屋に入れられるんです?」
「だって、王子様。
こいつは魔女なんですよ。
私、見たんです」
「放っておくと大変な事になる。
そうなってからじゃ遅いんです」
「魔女は昔から、
悪い物だと決まっているのです!」
町の人たちは口々に、
魔女は悪い物だと言います。
ですが、王子は納得出来ません。
町の人たちの方こそが、
間違っていると思います。
しかし、それを証明する方法が
思い浮かびません。
勉強を嫌っていた事を、
王子は後悔しました。
王子が言い返せないでいると、
町の人たちは苛立ちます。
彼らは王子の事も疑い始めます。
「本当に王子様なんだろうね?」
「魔女の仲間が化けてるんじゃないのか?」
町の人たちは、
王子にも石を投げ始めます。
あまりの痛さに、
とうとう堪らなくなりました。
王子は女の子の手を引いて、
お婆さんの家に逃げ帰りました。
泣き腫らした顔の女の子。
それを見ると、お婆さん。
無言で彼女を抱き締め、
頭を撫で付けました。
「ああ、ああ、怖かったねぇ。
酷い事をするモンだ。
分かったら、もう人前で
魔法を使うんじゃないよ。
ロクな事になりゃしない。
坊やも、巻き込んじまって悪かったね。
突っ立ってないで中へお入り。
手当てをしてやらないと」
前へ
/トップに戻る
/次へ
|