〜魔女と王子の物語E〜
道を急ぐ王子と魔女の子。
その行く手を、
強固な関所が阻んでいました。
関所の門には見張りの兵隊が居ます。
彼らは2人を押し留めようとします。
「こんな時間に子供?」
「こらこら、遊び場じゃないんだぞ」
「通りたいなら許可証が必要だが」
元々、思慮深い魔女の子。
魔法を使うなと言われており、
余計な争いは避けたい所。
ですが許可証を貰う為に、
戻っている余裕はありません。
「ごめんなさい!
私達、急いでいるんです!」
魔女の子は決心すると、
杖を高く振りかざします。
口早に、魔法の呪文を唱えました。
すると大きな爆発が起こります。
吹き飛んだのは兵隊ではなく、
その横の城壁でした。
壁に大きな穴が開きます。
「うわっ、何だ!?」
「大変だ! 関所破りだぞ!」
追って来る兵隊たち。
王子と魔女の子は馬を走らせます。
城壁の穴を抜けて一目散。
王子の馬は稲妻の様に走ります。
ですが、兵隊たちの馬も負けては居ません。
「逃げるのか、卑怯者!」
腰の剣は飾りか!」
「えぇい、恥を知れ、恥を!
名誉を掛けて戦え!」
怒った追っ手たちは、
王子に罵声を浴びせます。
気位の高い王子の事。
馬鹿にされて、
とてもとても悔しく思いました。
しかし魔女の子の存在が、
彼の正気を保ちました。
一刻も早く、お婆さんを助けなければ。
王子は、ひたすら馬を急がせます。
女騎士の城に着くと、
知らせを受けていたのでしょう。
彼女は大きな竜と共に、
城の前で2人を待っていました。
「無茶をしますね、お2人さん。
何か事情があるようですが、
それは、それ。
国境を破った貴方達を、
罰しなければなりません」
「どんな罰も受け入れます!
その代わり、魔女のお婆さんを
どうか助けてください!」
王子たちが説明すると、
竜と女騎士は顔を見合わせます。
「これはどうやら急ぎらしい。
乗れ。話は道すがらにしよう」
竜はそう言うと、
3人と馬を背中に乗せました。
お婆さんの山まで飛んで行きます。
途中、女騎士は王子たちに話をします。
それは魔女のお婆さんが、
山に住む事になった経緯。
「魔女を退治したというのは私の方便です。
仲良く出来ないのならば、
住み分ければいい。
だから、魔女は山から出ない様に。
町の人は山に入らない様にと、
言いつけておいたのですが……
上手く行かなかったみたいですね」
「数が多いからといって、
正しいという物ではない。
町の連中にも何か、
仕置きが必要だと思うが」
と、竜は不貞腐れて言います。
彼は昔ひとりぼっちだった女騎士の友人。
魔女の子に石を投げた人たちが、
どうにも気に入らない様子。
しかし町の人たちをやっつけたとして。
やっぱり魔女たちは、
平和に暮らす事ができません。
やっつけた事を恨まれます。
また石を投げられたりするでしょう。
「騎士様、どうしたらいでしょうか」
「お婆さんは助けられますか?
元通りに暮らせるでしょうか」
「幾らか方法を考えましたが、
全て予定通りに行くかどうか。
まずは戦いを止めて、
お婆さんを助けましょう。
今、約束できるのは、それだけです」
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