黒鷲の旅団
10日目(1)盗賊討伐大作戦
〜早朝の襲撃失敗〜
「はよーっす」
「おっちゃ、おはよ」
「お、おはようございます……」
朝食。村の子供達が集まって来る。
どれだけ亜人の子と遊ぶなと言われても。
魔物の野菜は気味が悪いと言われても。
マルカ達が信頼されているのか。
あるいは大人達が信用を失っているのか。
施しによる魂の研鑽。
スキルポイントが溜まるのは良いのだが。
食料の方は、すぐに無くなってしまう。
朝食は農耕魔法、イモをメインに。
「イモが良いよー」
「イモんまい」
揃ってフライドポテトに魅了状態の様子。
問題は、食用油の調達だな。
イェンナの買い溜めにも限界がある。
しかし通信魔法は声を一方的に送るだけだ。
道具屋に丁度魔女が居れば良いが。
今は居ない様子。
転移魔法3位、センドストレージ。
任意の相手に物品を送る魔法を併用する。
ドリスさんに通信。
多分起きているだろう。
紙に用件、食用油の購入数を記載。
必要な金と併せて送る。
俺の名義にして貰って……
転移魔法。コールストレージ。
食用油、確かに届きました。
食後、レイニさんは村長達の所へ。
報酬について、引き続き抗議と交渉を。
俺も顔を出そうかと腰を上げ……
索敵スキルに感。赤マークが多数。
魔王軍ではない?
詳しく見よう。
探知、空間、解析魔法。
敵は魔物じゃない。盗賊か敗残兵。
戸惑う村の子、イヴェッタ達だが。
落ち着いて戦闘用意だ。
盗賊……団と呼ぶ規模。総勢30人弱。
方角は東、南北を走る街道ではない。
教会の裏手、村を囲む森の方から来る。
子供らを家に帰す余裕は無いか。
一先ず教会で匿おう。
全員に隠密魔法。潜伏。
隊を2つに分けて、裏門の両脇で待機。
門の中に設置魔法の罠。
3、2、1……行くぞ!
設置の神経麻痺魔法が発動。
盗賊団の先方に炸裂した。
更に閃光や幻惑、昏倒魔法。
連中は大混乱に陥る。
慌てて立ち止まる中・後列。
そこに矢弾の雨を浴びせる。
麻痺した奴は一人残してトドメ。
積み重なる死体が30弱だ。
「捕まえました!」
「た、た、助けてくれえええ……」
1人捕縛したか。
レーネが引っ張って来る。
情報を聞き出そう。
生き残りの盗賊、名前はベイル。
そう遠くない場所にアジトがある様だ。
街道に魔物が増えた。
連中も仕事が出来ない。
そこで狙いを行商人から村に変えたのか。
組織の規模は?
数千からの……って、盛ってるな。
洞察スキルは目が泳いだのを見逃さない。
自白魔法。嘘ですスイマセンと白状した。
あまり抵抗しなかった。
仲間意識も薄いのだろう。
アジトの場所を聞く。目的は殲滅。
盗賊がウロウロしている。
これもこの村が貧しい一因だ。
村が貧しいのでは報酬も渋られるまま。
村の経済状況を改善しなくては。
ベイルは開放する。
自分で選ばせてやる。
戻って知らせて一緒に死ぬか。
それともこのまま逃げ出すか。
と、つい、習慣なのか。
イェンナとカーチャ。
死体から剥ぎ取りを始めている。
すぐ出るから、程々にな。
念の為、弓兵隊と花人隊を警護に残す。
レイニさんが戻ったら伝えてくれ。
俺達は探索に出る。
探知魔法、方位を絞って範囲拡大。
盗賊の情報を元にアジトの方角を選定。
ザコ敵を蹴散らし、盗賊討伐に向かう。
盗賊のアジトは洞窟だと言うが……さて。
1つ目の洞窟を見つける。
空間、探知、解析。
こいつはゴブリンの巣だな。
探している盗賊のアジトではない。
しかし放置も出来ない。
突入しますかとレーネだが、待て。
ゴブリン全部が馬鹿とも限らん。
閉所。相手の数も数。
待ち伏せが予想される。
入るよりも、出て来て貰おうか。
入り口で毒、蒸気、黒煙魔法。
これを風魔法で送り込む。
ゴブリンが燻されて出て来る。
扇型包囲陣形で射殺、射殺。
内部の調査は後だ。
解毒魔法を放り込んでみる。
浸透するまで時間も掛かるだろう。
調査は帰りに順番にやる。
続けて進軍するが、ゴブリンばかり。
洞窟の2つ目。ゴブリン在住。
外にゴブリンの小陣地が3つ。
それぞれ処理するけれども。
「あいつ、嘘言ったんじゃ……」
イェンナの懸念。
それも否定できない。
話し始めた所で、俺も自白魔法を止めた。
ベイルは早々に白状した。
喋る様に促され、喋って。
内容は嘘だらけだっただろうか。
探知魔法の範囲を広げよう。
他に敵反応、赤い点が集まる所は……
……元居た村だと!?
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