黒鷲の旅団
10日目(3)盗賊討伐大作戦
〜ネダヤシポイズン〜

 再び捕らえた盗賊ベイルの情報。
 指定先に足を運ぶと、また洞窟だが。
 今度こそ当たりだろう。
 入り口から、見張りの交代かな。
 盗賊らしいのが入って行く。

 洞窟内を探知……
 緑マークの反応。友軍?
 捕虜が居る。となると。
 毒魔法を放り込むワケにもいかない。

 俺が潜入する。
 まずは捕虜をどうにかしたい。
 子供達は散開し、森に隠れて待機。
 探知魔法持ちは警戒を厳に。
 外から敵が来る様なら通信をくれ。

 隠密魔法展開。潜入開始。
 賊は精神魔法で眠らせつつ、やり過ごす。
 やり過ごせんのは短剣で刺殺を……

 ……多いな。縮地や音速剣を発動。
 重力、失血魔法を付与。
 暗黒剣まで上乗せして、手早く殺す。

 息を殺し、奥へ。横道へ。
 目的はボスの寝床じゃない。
 友軍が囚われているのはどこだ?

 脇道が2つ。道が入り組んでいる。
 多層空間がゴチャゴチャだ。
 空間魔法のマップも見辛い。

 嗅覚スキル。
 死臭がする方は違うと思う。

 聴覚スキル。声……
 すすり泣く声が聞こえた。

「だ、誰? 誰なの?」
「う、あうう……」

「来ないで。お願い。
 もう休ませてあげて」

 友軍と思しき気配を辿った先。
 売り飛ばすのか姦淫目的か、女が数人。
 牢に閉じ込められていた。

 一部は魔物女の様だ。
 下半身が蛇とか蜘蛛とか。
 種を越えて慰め合ってる。
 それだけ扱いが悪いのか。

「あ、あうー……」
「ああーい?」

 よく見ると、中には花人の姿も。
 アンゼリシアの名を出したら反応した。
 多分、仲間だろう。

 解錠魔法で牢を解放。
 虜囚の女、花人達を救出する。
 この際、ついでだ。
 ラミアやアラクネも放り出そう。

「ど、どうし……たっ、たす……
 助け、く、くださる?」

 ラミアさん、片言。
 花人より言葉が上手くないのか。
 それとも衰弱して……

 診断する。
 ステータス異常は。重度の性病?
 解毒、浄化、抗血清魔法。
 どうにか異常表示が消えた。
 治癒、活力、鎮静魔法。大丈夫か?

 長い尻尾のラミアさん。大きい。
 担いで行くのも難しいのだが。
 食事も満足でなかったらしい。
 動くだけの体力も無い。
 浮遊魔法で少し浮かせ、押して行く。

「あ、あん……ああん……」

 変な声を出すな、というか。
 そもそも声を出すでない。
 そこ、お尻? すまん。
 ラミアの尻ってどこまでだ。

 索敵を厳に。動く敵は居ないか。
 比較的元気なアラクネさん。
 後方を警戒してくれる。
 ラミアさんにも暗視能力がるのか。
 警戒に役立った。

 他方、足手纏いなのは人間さんで、

「ヒッ!」

 悲鳴。咄嗟に防音魔法を速射。
 どうした。転んだだけ?
 探知魔法に反応は無いが……

 ああ、来る途中で殺した盗賊か。
 死体を踏ん付けたかな。

 俺も見えてるワケじゃない。
 探知や空間の魔法が頼り。
 時々立ち止まって、空間魔法。
 地形を確認する。

 横道も多く、繋がりが分かり難い。
 騒ぎ立てて挟撃されると犠牲者が出る。
 照明魔法を使うワケには行かない。

 入り口が、外の光が見えて来る。
 久しぶりの日の光。

「あーう!」
「あんぜー!」

 花人、アンゼさんを見て駆け出す。
 やはり仲間だったらしい。
 喜び合うのは後にしなさい。

 魔法設置。
 洞窟の入り口に毒魔法ポイズンボム。
 安全圏まで下がる。
 遠巻きに起爆。巻き上がる毒霧。
 これを風魔法で送り込んで……

「あっ、あのっ、な、仲間が。
 友達が、まだ!」

 慌てる元捕虜、人間さん達。

 味方で生存者の反応の数は見た。
 残っていたのはあんた達だけだ。
 死んでない、とすれば。
 どこかへ連れ出された後だろう。

 ……死んでなければ、だが。

 探知魔法。敵反応が消失していく。
 盗賊団駆除、完了だ。



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