黒鷲の旅団
10日目(5)報酬はキミダヨ
盗賊は取りあえず片付いた。
あとは村の周辺を掃除しながら帰ろう。
イノシシとオオカミは見逃すなよ?
村の子供達が腹を空かせているだろう。
帰路の途中、武装ゴブリンに遭遇。
ゴブリン軍の精鋭か、魔王軍の末端か。
どちらにせよ良い兆候じゃない。
街道以外にも手を広げ始めたか。
個々は大した相手でない。
とりあえず阻害魔法。
弓弩を中心に排除。
まだ昼飯には時間があるか?
周辺を空間解析。
集められる食材は、なるべく持ち帰る。
薬草、ハーブ、キノコとか。
小川に雷魔法。
浮いて来た川魚も回収する。
「おじさん! おじさーん!」
不意に駆けて来たのは村の子2人。
グレンとレスター。
トロールが出るのは知ってるハズだが。
危険を冒して……どうした。
「は、早く知らせなきゃと思って!」
「ザイホーが大変なんだよ!」
財宝? とにかく急ぎ村へ戻る。
「ほっほ、何の事ですかな。
これは村の教会で見つかった物。
村付き冒険者が集めて来たのでしょう。
村の為、ありがた〜く使わせて貰う。
冒険者様も、もっと働いて頂かねば」
広場で出迎えた村長フリント。
財宝をバックに上機嫌なのが憎たらしい。
古教会に財宝を転送した後だ。
村の子供知らせに行った。が、
俺達の手柄を知らせようと村長の所へ。
しかしこの腹黒村長。
届いた財宝はマルカ単独の手柄にした。
俺が送ったのは見ていない、と。
確かに証拠は無いが。
村の教会にあったから財宝は村の物。
村付き冒険者マルカの手柄として。
村付きの物は村の物だと没収、か。
盗賊退治もマルカの手柄だと。
財宝自体は、やっても良かったが。
盗賊退治の手柄まで取り上げられた。
マルカには小遣い程度の報酬。
銀貨数枚ぽっちを握らせて。
俺達に追加報酬は出さない。
フリント村長、悪知恵の回る爺様だ。
盗賊退治、捕虜解放。
ルアンヌさんとデュプレーさんの証言。
これも無関係の盗賊団だろうと言う。
村に関係無いから報酬は出さんのだと。
今朝の防衛戦の報酬も食料提供が精々。
仕方ない。泣き出すマルカ。
彼女の手を引いて、教会に戻る。
「違うんだ、あたし……
そんなつもりじゃなくて……」
「泣かない泣かない。
大丈夫だよー?」
「でも、でも……
う、うわあああん!
ごめんよぉ……!」
「貴方のせいではありません。
分かってます」
まんまと利用された。
責任を感じてしまったマルカ。
フェドラやレーネが慰めるが。
その優しさがかえって辛い様だ。
「ずるしたら、いけないんです!
どんなに貧しくても!
ずるしたら、いけないんです!」
憤懣遣る方無い、といった子供達。
特にカリマが凄く怒っている。
ああ、うん……落ち着け。
飯食いながら、どうしようか考えよう。
良くない村ですわね、とルアンヌさん。
そうだな。食事は同席頂こうか。
村の子達も集まって来た。
口々に謝ったり憤ったり。
総意として、大人達は汚い。
許せない、といった様相。
清く正しい子供達。
マイナさんの教えが良いのだろうか。
「くそ……あああー、くそー!」
遅れてレイニさんが戻って来た。
彼女からも抗議した様だが。
功を成さなかった様子。
レイニさん。改めて。
報酬の話をしても良いか。
当然、報酬は貰う。貰うのだが。
村長達は難癖付けて金を払わない。
そこで当初の提案に戻る。
マイナさんと子供達を貰って行く。
「え、ちょ……そそそんな。
あたし心の準備とかががが」
「え〜、マ〜ジでぇ〜。
困っちゃうな、でへ、でへへへ」
落ち着け、マルカ。変な意味じゃない。
ティルアは何で嬉しそうなんだ。
マルカ、ティルア、カリマ。
一緒に村を離れないか。
正式に俺の仲間になって欲しい。
新しく故郷と呼べる場所を探しに行こう。
「やるよ! みんなに借りを返すんだ!」
「どーせ元々、孤児だもんね。
あたしも賛成」
「マイナお姉ちゃんも一緒?
私も行くです!」
他の子達も連れて行く。
人質半分、避難半分だ。
南から魔王軍が迫っている。
戦い方を教えながら一時避難しよう。
落ち着いたら、後で戻っても構わない。
「やった、戦いだ!」
「武器くれるの?」
「後で帰っても良いなら……」
「私、行くー」
「街に行ったお姉ちゃんに会いたい」
概ね賛成の様だ。
あとはマイナさんだが……
姿が見えないな。
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