黒鷲の旅団
10日目(6)割れる農村

 レイニさんにはマイナさんを探して貰う。
 俺達は新人の装備を整えよう。

 中継役を頼もうと、フレスさんに通信。
 すると、現在こちらの村に急行中だという。
 代わりに門弟3人。
 マヌエラ、カティヤ、ルーティエを派遣。
 それぞれ道具屋、仕立屋、鍛冶屋へ。
 これで通信しながら通信販売が出来る。

『オッケー、任せといてよ』
『面白い事考えるよねー』

 仕立屋カーラに依頼。
 旅の装いセットを12人分手配。
 採寸が済んだ子から武器を選ぼう。
 うちの子達は魔法練習。
 道具屋ドリスから矢弾や薬を買う。

 木こりの次男グレン、地主の長男ユーリ。
 宿屋の次男レスターと3男エーベル。
 男の子のチーム4名。
 クロスボウを持って貰う。
 いずれ素手で弦を引けるのが理想だが。
 まずは手巻きハンドルを使おう。

 お嬢様イヴェッタ、木こりの次女ポーラ。
 機織りの長女ロジーナ、次女テレサ。
 農家の長女リンダ。
 弓を使った事があると言う。
 ロングボウを購入した。
 こんな長い弓、は使った事が無い?
 大丈夫。教える。
 腕力強化の魔法だってある。

 もう1軒の農家の次女アウドラ。
 3女ジルケ、次男ヨルク。
 小銃ウィンチェスターを持たせる。
 不慣れだろうが先輩達も助ける。
 説明を良く聞いて。
 姉弟でも教え合って欲しい。

 それと……ハミルトン爺さん。
 剣を見せてくれないか。
 森で乱戦を強いられた時、銃では辛い。
 俺の武器から追加して皆にも回す。

 曲刀をタルワールに新調。
 余ったシャムシールはカーチャに。

 片手剣を新調。
 シュヴァイツァーサーベル。
 余ったロングソードは……
 マルカのショートソードと交換。
 目をキラキラさせるマルカ。
 剣とか好きかね。

 細剣を新調。
 パンツァーシュテッヒャー。
 元のレイピアは……マリナが欲しいか。
 あげよう。使える?

「すんすん、すんすん」
「あんま分かんねーや」

 何故にグリップの臭いを嗅ぐ。
 そんな使い込んでないよ。臭くないよ。

 臭い方が良かったとか言う。
 どういう趣味だ。何かの冗談か。

 新規、騎兵剣レイテルパラッシュ。
 突撃槍代わり。長物。
 両手細剣メルパッターベモー。
 曲短剣チラニュム、波状短剣クリス。

 広義では片手剣や短剣だが。
 派生武器にも専用武器スキルがある。
 専用スキルさえ取ればストック出来る。
 スキル経験値は分散してしまうが。
 しかし今は武器の数が欲しい。
 スキル枠にストックする、
 呼び出すのに転移が要らない。

 あと、壁に掛かってるデカい奴をクダサイ。
 ハミルトン爺さんが笑う
 返品は出来ねえぞと。

 大物。野太刀と呼ばれる大型の東洋刀だ。
 前々から少し気になっていた。
 この機に買ってみようかと。

 子供達の採寸は終わっただろうか。
 カーラさんが呼んでいたと言う。
 通信先を交代。
 レザーコートをお勧めされた。

 コート自体は持っていたのだが。
 背中に刺繍。猛禽類かな。
 子供達のケープとお揃い。
 俺用の……ちょっと照れくさいけど。
 まあ、折角だ。頂こうか。

 あとはドリスの店。
 俺も薬や矢弾を買いたいが。
 ストックが厳しいのは相変わらずか。

 鍛冶屋達も弾薬を製造してくれている。
 しかし、手作業。生産が追い付かない。
 東西の流通ルートは魔王軍の影響下。
 北の公国から買うとして。
 それも値を吊り上げられている。

 矢弾が無いと、俺達も死活問題だ。
 村に金が落ちるのも少々癪だが。
 仕方無い。当たってみよう。
 子供達は教会に集合させておく。
 俺は村の道具屋へ向かう。

「おー、来た来た来た。
 待ってましたよー」

 道具屋……って。
 火をつけられた家だった。

 道具屋ブシュラさん。すまん。
 消化の際、魔法。屋根に付いた霜。
 そのままにしてしまっていた。
 大丈夫とは言ってくれるが。
 詫び代わりに買い物を。

 買い物がてら、世間話。
 ブシュラさん曰く。
 村では意見が割れている様だ。

 意見1つ目。
 ゴブリンや盗賊は退治させるが。
 報酬は出したくない。
 貧しい。金は村の為にこそ使いたい。
 村の利益を最優先とする。
 付けられる難癖は幾らも付ける。
 この意見は村長が中心になっている。

 意見2つ目。
 せっかく来てくれたのだ。
 優遇するべきだ、という声。
 村付き就任の可能性も考える。
 関係の悪化は避けたい。
 農夫ゼールバッハが中心となっている。
 鍛冶屋のデトレフとか。
 ブシュラさんも所属。それはどうも。

 意見3つ目。静観を決め込んでいる。
 保留。要はどっちつかず。
 助けられた借りはあるが。
 しかし村長から睨まれたくもなし。
 木こりのボガード。
 昨日助けたモーソンが入っている。
 吹き込んだ毒は多少効いたと見るか。

 分かった。話をありがとう。
 矢弾と回復薬を幾つか購入する。

 魔力薬は……無いか。
 術者が居ない村だものな。
 需要が無いので置いていなかった様だ。
 素材を集めて自作するかな。

 一応、ブシュラさん。
 定住の線は薄いと言っておく。
 だよねアハハと乾いた笑い。
 既に関係が悪化しつつある。
 お察しの通りだ。

『お兄さん、大変だよ!」』
『おっちゃん!』
『早く戻って来て!』

 ユッタ達から通信。
 混線してるな。

 何があった。
 いや、一度に喋るな。
 すぐに向かう。



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