黒鷲の旅団
10日目(9)例え焼け石でも
花人はアンゼリシア隊を防衛強化に。
村の周囲に茨のバリケードを設置。
ベゴニエッタ隊は農耕魔法を担当。
食料の生産をお願いします。
ユッタ達で村の子に指導。
最低限度の武器の使い方。
終わったら野菜の収穫だ。
手伝ってあげてくれ。
俺はバロンさんの馬を借りた。
近衛隊と偵察に出る。
最初は上手く乗れなかったのだが。
見かねた近衛隊員ジゼルさん。
『初級馬術指南書』を貸してくれた。
騎乗スキルを習得。
何とか乗れる様に。
早駆、突進、騎射、騎乗戦闘。
騎馬跳躍スキルも取る。
少し乗り回して……面白いな。
後で子供達にも馬を買ってやりたい。
行軍がとても楽になる。
竜騎兵や弓騎兵として育てるのも良い。
しかし、馬を持つ。厩舎とか必要か。
家の購入を考えた方が良いだろうか。
ともあれ、偵察だ。
ゴブリンの小陣地。
野盗の溜まり場。
不安要素を潰して回る。
連中は脱出の時の邪魔になる。
それと、丘の上に登って探知魔法。
魔王軍の動向を見る。
探知情報。遠方に赤い光点。
敵マークの塊が複数。
周辺に魔王軍が居るのは確実だ。
南東方向は多分ジュスティアーヌ達。
北西と西南西にも大きな塊がある。
こいつらは村を避けて行くのか。
それとも村に寄ってから東へ向かうのか。
頑強に守れば面倒になって避けて行くか。
ムキになって突っ込んで来るのか。
ジュスティアーヌに通信。
近隣の陣容を教えてくれないか。
また魔法を提供するという約束。
快諾してくれた。
北西が人類迫害派閥の魔人管理下。
西南西は統治・擁護派の連合軍。
どっちが来るか、現時点では分からん。
両者がぶつかり合う事もあり得ると。
仮に迫害派閥が乗り込んで来るとして。
例えば先にお前さんらに投降したら。
襲撃をやり過ごす事は出来ないか。
『んー……前に失敗してるんだよねぇ……』
ジュスティアーヌ達も決戦には参加する。
悠長に捕虜を連れ歩く事は出来ない。
そして目を離した隙に何をされるか。
以前、人類迫害派を相手取り。
支配下の集落に接触された。
そいつは食料の提供を要求。
食料ぐらいならと応じたのが大間違い。
集落の住人を食い散らかして行ったとか。
なるほど、仮にも魔王軍。
そして仮にも対立派閥か。
関係者だと知らせる。
それもあるいはヤブヘビになる。
興味を持たれてしまう。
嫌がらせで殺しに来るかも分からん。
慈悲を期待するのは現実的ではない。
ちなみに、魔王軍の方針について。
決戦ギリギリまで流通を阻害したい様子。
街道は魔物がウヨウヨしている。
強行突破は危険、村で守った方がマシだと。
一度避難を促しておいて、と謝られるが。
情勢は常に変わる。気遣いに感謝する。
『ちょっとちょっとー。
何でジュス姉とばっかり話すのぉー?』
デルフィアンヌが割り込んで来た。
丁度良い所に。首都側の状況を聞きたい。
『ふふん、私が先でも良かったのよ?』
話を振るや、アンヌは途端に上機嫌に。
首都は人類側。
腕自慢が集まって来ている様だ。
プレイヤーイベントの参加希望者か。
既に魔王軍との小競り合いが発生。
もう少し集まれば?
いい勝負になるかも知れない?
いい勝負……
誰かがコケて恥をかく程度には。
失態の責任者が呼び戻されて。
その弁解を求められる程度には。
そして魔王軍は派閥で割れている。
足の引っ張り合い。
一時撤退の惨事もあり得る。
少し希望が見えて来たかな。
ありがとう。とても参考になった。
また手が空いた時にでも。
魔法の遣り取りをしよう。
村に戻って状況を確認する。
植物魔法、茨のバリケードは順調に設置。
ユッタ達の新人指導は?
使い方までは理解したと思われる。
ただ、練度・精度となると微妙か。
実践経験を積ませる余裕が無かった。
魔王軍、特にトロールの出歩く街道。
レベル1を連れ歩くのは不安がある。
襲撃への応戦。
ぶっつけ本番でも不安は不安だが。
村の子達の様子は。
グレン達はクロスボウを覚えて得意げ。
あまり過信するなよ?
戦場では何が起こるか分からん。
怖がっているリンダとロジーナ。
怖くていい。怖いから考えるんだ。
どうやったら生き延びられるか。
生き残らせる事が出来るのか……
近衛隊が外部の偵察に出る。
俺達はまた防衛強化に勤しもう。
前へ
/トップへ
/次へ
|