黒鷲の旅団
10日目(10)副産物と悪い予感

「ま、魔女……
 子供達の先生さん、ですか?
 ハインさんとは、どういう……」

「え、ええと、その……
 シスターさん、ですよね?
 彼がこちらに……?」

 村にフレスさん一行が到着。
 魔女は神聖教会と相性が悪いんだった。
 マイナさんとフレスさん。
 シドロモドロ合戦になってる。

「ねえねえ、その人って何?
 現地妻?」

 ヘリヤさん、失礼な事を言わない。
 マイナさんはマルカ達の保護者。
 お母さん代わりだった人だよ。

 それから、魔法特許について報告。

 抗血清魔法はAクラス治癒魔法。
 消臭魔法は生活B。
 爆薬魔法は多目的B。
 解熱魔法は治癒C。
 燻製魔法は生活Cクラスに認定。

 Cクラス魔法の特許は今回が初めて。
 伝承料金は10万なので、取り分は半々。
 5万ずつという事で。

 それから売り上げだが。
 1240万。ちょっと待て。
 いきなりケタが増えたが、何があった。

「それはほら、アレ。
 魔王軍をやっつけろ作戦?
 首都に神人が集まってるだろ?」

 魔王軍討伐、思わぬ副産物、だな。

 商人、職人、冒険者、探検家。
 戦争に興味が無いプレイヤー。
 それも景品目当てで集まった。
 集まって、俺の魔法を買って行った。

 ABクラス、合わせて89件か。
 売り上げた数と一緒。
 スキルポイントが入って来る。
 巡回戦闘で稼いだ分と合わせる。
 ポイントは193に到達。
 30ずつ割り振って伝授可能レベル。
 特許申請を可能にする。

 熱閃、地裂、芳香、防音と。
 精製魔法も特許申請に回した。
 まだ少しポイントはあるが。
 急ぐ物と思えないので後回し。
 急に伝授する必要が出ないとも限らない。

「防音に精製か。
 あっ、ちょっと待って」

 シャンタルが可愛い手帳を見せてくれた。
 手帳? 何の気無しに鑑定。
 名前がズバリ『シャンタルの手帳』と。
 個人的に集めた魔法が書いてある様だ。
 数ページ見ただけで興味を引く。
 濾過魔法、濃縮魔法、拡声魔法。
 まずはこの辺から頂戴しよう。

「んふふ、お役に立てそうかい?
 暫く貸しておくから。
 きっと返しに来てね」

 返す相手の方も、どうか無事で。
 魔女達はホウキに乗って帰還。
 俺達は防衛準備に戻ろう。

 防衛準備。
 装備の手入れ、弓矢作り。
 と、植物魔法持ちのツェンタ。
 花人の防柵作りを手伝いに行く。

 街道以外、側面は茨で埋める。
 村を通る街道を残すのは、退路。
 あるいは、敵の進路を限定する為に。

『ダメ! ダメだよ!』
『うわ、子供!?』
『下がって! 危ないよ!』

 ツェンタの通信。
 通信の先で誰かと喋っている。
 駆け付けてみると、神人の一団。
 イベント参加希望者達か。

 花人が村を襲っていると思われた様だ。
 茨だらけで何事か、だな。
 戦闘になりそうな所だった。
 ツェンタが制止していた。

 事情を話す。花人達は俺の従者だ。
 魔王軍に村が襲われそうなんだ。
 対応策として罠を張っている。

 神人達は花人達に謝罪。
 彼らは幸運を祈ると言って。
 そのまま村を抜けて行った。

 こっちに加わってくれたら助かったが。
 しかし、強制はするまい。

 公主の方が報酬を積んでいる。
 高レベル保持者。
 魔王軍本隊と戦って欲しくもある。

 他にも神人が接触して来るかも知れない。
 花人隊には交代で子供達を随行させる。
 探知魔法も展開。
 誰か来たら、こっちから出迎えよう。

 案の定、後から神人のチームが4組。
 村に来ては、首都へと通過して行く。

 村を守ろうという者も居たのだが。
 村に、まだ村を諦めていない者も居る。
 レベル不足、素行の悪い者。
 これはかえって不安要素にもなる。
 ここは俺が見ておくから。
 イベントの方を頼むよ。

 ふと、偵察から戻ったか。
 近衛隊員ジゼルとザビーネ。
 特に問題は無いと言うが。
 何か顔色が悪いな。

「大丈夫です。問題ありません」
「どうか、ご心配なく」

 妙に機械的に喋る彼女らの上。
 頭の上に何かのアイコン。
 神人にしか見えない表示か。
 システム的な物だと思うのだが。
 バロンさんに聞く。
 彼には見えていない様子。

 解析魔法をアイコンへ。
 ステータス異常、暗示。
 質問。バロンさん。
 暗示状態って何ぞや?

「むっ、そうか!
 ハインリヒ君は医療スキル……
 っとと、医学の心得があったな!
 技能が無いと分からん奴だ!」

 幸い、サンドラちゃん。
 対応する治療薬の知識があり。
 近衛隊2人の暗示は無事に解除された。
 それは良いとして。

 斥候が暗示を掛けられて戻って来た。
 こりゃ、襲撃が来るのは確定したかな。



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