黒鷲の旅団
1日目(6)強くなりたい強くしたい
「いらっしゃ……ああ、お帰りー」
女将に出迎えられ、東区の酒場に帰還。
やはり、帰る場所に帰ると安心する。
「ははっ。お帰りー、だって」
「女将、新しい男ー?」
「ばっ、馬鹿言ってんじゃないよ。
あんた達、仕事は?
稼いで来たんだろうね?」
「うおっとぉ、ヤブヘビ!」
「ごめーん、明日! 明日には払うから!」
チョロチョロっと逃げて行く一団。
見た感じ武装していたが……あれは?
冒険者か。家賃滞納組だと。
夕食はサンドラと同席。少し話をしよう。
試験に必要な薬草だが。
品種はともかく数が足りない。
奥地に入れば、群生地もあるらしい。
が、行くかどうか。
奥地に踏み入るに当たって。
問題が幾つかある。
武装したゴブリンが想定より手強かった。
その奥地。より強敵が出る可能性がある。
手数、手札、あるいは頭数が欲しい。
手札……義手のアレは使うのが怖い。
古代文明の何某は、どうだろう。
壊したら直せるか分からんし。
先輩と仲直りは……難しいか。
いや、無理にとは言わない。
代案が浮かべば良いんだ。
足止め。アイテムとか、魔法……魔法は?
サンドラちゃん、使える魔法は無いのか?
炎と雷が……超ちっちゃく出るだけだと。
「精霊との使用契約は、一応。
しゅ、す、済ませてありゅんだけど」
神人に当てはめるなら。
スキルポイントは振ってある?
では、他に何が足りないか。
「魔法の力が、足りないって……」
何年も練習している。
しかし上達しない落ちこぼれ。
せめて昇進したい。昇進すれば。
何か儀式とやらを受けられる。
魔法の力が向上する。
きっと使える様になる……と言うが。
盗賊も追い払えない様な少女が。
盗賊を追い払える力を身に着ける為に。
盗賊の待ち構える街の外へ……
って矛盾してないか。
魔法の力。魔力。パラメータの1つだな。
レベルが上がれば伸びるんだろうか。
神人ウインドウを起動。
マニュアルを探す。
パラメータの強化、強化……
レベルアップ。バフ効果のある薬や魔法。
根本から解決するなら前者だが。
育成、強化、NPC。
この世界の住人、唯人達。
彼ら彼女らにもレベルの概念はある様子。
どうすれば上がるんだ。レベル……
経験値。配分。パーティ内で配分。
NPCをパーティに組み込んでは?
戦いを共にすればレベルが上がる?
しかし、今日はパーティを組んでいた。
依頼上の同行者、ではダメなのか?
本人が戦いに参加する必要があるのかな。
そこら辺の記載が無い……
明日、色々と試してみよう。
さて、プチ家出人・サンドラちゃん。
困ったのは寝床の確保だ。
「ひい、しゅいましぇん!
おかおか、おかにぇは持ってましゅ!
おおお置いてくだしゃい!
追い出さないでくだしゃい!」
「あ、ああー、いや。
お金は後でも良いんだけどさー。
お部屋が空いて……
ああ、いや、待った待った!」
サンドラのベチャベチャした喋り。
これを難無く翻訳する女将。
女将の自室に泊めるとの事で、一段落。
親切な女将さんで良かった。
俺の金払いが順当なのも良かったらしい。
「有志諸君、ご拝聴頂きたい!」
不意に聞いた声がして、騎士団長か。
どうやら募兵活動の様だ。
そうだった。明日また戦争があるんだ。
行くの?とサンドラちゃん。
まぁ、これで傭兵だし。
騎士団長には借りがあってな。
悪いが冒険は午後からだ。
明日は戦争だ。冒険は午後から。
イヤイヤと首を横に振るサンドラ。
俺は神人だから。
よしんば死んでも生き返るハズだが。
それでも死ぬのは嫌? 懐かれた物だ。
じゃあ、そうだな……
未練があれば踏ん張れる。
何か借りられる物は無いか。
生きて帰って、返しに行くから。
サンドラが差し出したのは、本。
初級魔女指南書。
目を通すとウインドウ表示。
また幾つか『習得可能になりました』と。
初期リストに無い魔法。
目にする機会から増やせる様だ。
自分は使えないけど、俺なら、か。
分かった。有難く借りさせて貰う。
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