黒鷲の旅団
11日目(8)村落防衛戦〜すたこら〜
空間魔法から地図を確認。
真っ直ぐ首都を目指しては危険だ。
魔王軍の後方から追われる事になる。
まずは北東方向、隣村まで後退しよう。
隠密、防音魔法。
近衛隊を伴って裏口から。
村人達が先に脱出する。
「オオユ、オユルシヲ!
グエエエッ!」
ゴブリンリーダーの声。悲鳴?
何か罰でも受けているのか。
窓から様子を見ると。
ブランディエーヌが何やら魔術中。
倒れたゴブリン達が次々に蘇る。
蘇生……いや、アンデッド化の魔法だ。
そう言えば死霊使いだったか。
「よし、我輩とハインリヒ君で時間を稼ぐ。
村人や子供達は先に行くんだ」
協力的なバロンさん。
物見遊山が身上じゃなかったのか?
「なんの。物語のクライマックスだ。
ここを見逃しては堪るまい。
名シーンの為、火の中、水の中、だよ」
ブレないなと笑いつつ、表へ足を向ける。
と、子供達が上着の裾にしがみついて来た。
「え、あ、おっちゃん!
一緒じゃないのか!?」
「ダメだよ!
生き返るっても捕まっちゃうよ!」
子供達が慌てるが、落ち着いて。
確かに簡単には逃げ切れんから。
お前達にも何か手伝って貰うぞ。
青い顔をした村民と子供達。
まずは裏門から退避させる。
俺は正面に出て、返答を告げる。
降伏致しかねるが。
村は明け渡す、でどうか。
「馬鹿め、逃がすと思うか!」
「あっ、お待ちになって!」
デルフィエンヌが追撃の指示。
ブランディエーヌの制止。
何か言いたそうだったが。
動き出したゴブリンゾンビ達。
後退する俺達を追って来る。
俺の閃光魔法、続いてバロンの煙幕。
視覚と嗅覚を塞いだ。
次いで遅延、束縛、植物魔法。
ゴブリンゾンビ前衛が転倒。
構わず後ろから踏み越えて来るが。
それでも多少の距離は稼げた。
教会の中を裏口へ駆ける。
教会内部に撒かれた大量の燃料。
通過、飛び出す俺達と入れ違い。
外で待っていたサンドラちゃん。
炎魔法で燃料に着火。
殺到したゾンビ共は炎上。
教会ごと爆炎に包まれる。
ヨルク……火葬になっちまったかな。
ここらの風習は分からんが。
どうか安らかに。
しかしゴブリンゾンビ共。
幾らか燃え残って追って来る。
更に錬成、燃料魔法を撒く。
急ぎ、森の向こうへ。
と、連中からも火をつけやがった。
急げ。炎に追いつかれたら死ぬぞ。
サンドラを抱え、バロンと走る。
振り返りつつ分解魔法付与。
拳銃ゲットオフショット。
ゾンビ数体、脚を吹っ飛ばす。
転倒させて時間を稼ぐ。
と、バロンも倒木で転倒。
放置できん。
サンドラ、走って。
俺がバロンを援護する。
大太刀の居合い、音速剣。
裂空、横薙ぎで木々を断つ。
立て続けに倒れる木々。
エンヌも少し怯んで見えた。
抜刀術、横一文字スキルを派生。
『習得しますか』のウインドウが邪魔。
後だ。後にして。
バロンを助け起こし、再び敗走へ。
「お兄さん!
こっちこっち!」
「反転! 各隊!
後ろ向いて構えぇーっ!」
「マルカちゃんバック!
イヴェッタさん少し前!」
森を抜けた所にユッタ達。
近衛隊を盾役に。
各隊長の指示で陣形を整えている。
俺達も追いつき、神聖付与と加速。
扇状2つからの挟撃包囲陣形。
足止めは植物魔法と束縛魔法で行う。
錬成付与、複数射。炎魔法で着火。
ありったけ撃って燃やす。
ゾンビの残りを始末する。
燃え落ちるゴブリンゾンビ達。
一難去ったか?
一息つきたいが……敵反応!
デルフィエンヌの姿。
抜けて来ていたか。
レベルが3ケタもある。
森林火災を物ともしない。
いや、ダメージはあるのか?
むせている様にも見える。
追撃だ。ここで使わずに、いつ使う。
バーストレーザー砲、照射。
義手が上下展開して砲口を見せる。
熱と閃光が鋭く空を裂く。
デルフィエンヌは魔法障壁で防御。
押し込んでいるが倒し切れない。
レーザー砲、熱暴走。放熱状態へ。
エンヌは体勢を立て直すが……
まだだ。もう一撃。
もう一手なら考えてある。
燃料・爆薬・精製・濃縮。
煮沸・煮沸……着火。
燃料気化爆発魔法サーモバリック発動。
熱と衝撃、キノコ雲が上がった。
エンヌは……コケた。
少しは効いただろうか。
生きているが負傷している様子。
「な、な、何が一体?」
「エンヌ!
あんた怪我してるじゃない!
ちょっと診せなさい!」
「あ、姉上!?
どうしてここに……」
デルフィアンヌが駆け付けた。
妹?を心配。
心配する後ろで、手ぶり。
早く行けと言っている。
どうやら足止めしてくれる様だ。
隠密魔法展開。
今の内に退かせて貰う。
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