黒鷲の旅団
11日目(12)長い一日を越えて

 敵は、と、飛び起きて。
 気が付くとベッドの上。

 俺は廃屋のベッドに寝かされていた。
 もう日が落ちている。
 いつの間に。
 どれだけ意識を失ってしまった。

「あっ、気が付いた!」
「おっちゃんが起きたぞー!」

 ユッタが駆け寄って来て。
 イェンナは皆に知らせに行った。
 ユッタ、状況は?

「あ、えっと、魔力切れだって」

 俺の状況を説明されてしまった。
 それは後でも大丈夫だけれども。
 心配してくれたんだろう。
 ありがとうよ。

 死んだ村人達はマイナさんが供養。
 生き残りの村人達と共に丘の上。
 埋葬しに行ったらしい。
 もう戻って来ている?
 食事の支度に掛かっている。

 魔人ブランディエーヌは。
 迎えが来て帰ったらしい。
 アンヌともう1人。
 ボブカットの男の子口調。
 これはジュスティアーヌかな。
 また来るって、と言うユッタ。
 その顔は何か複雑そう。

 ブラン達の反応には疑問も残った。
 人類擁護派という話だったが。
 どこまで擁護しているのか。
 人間に一方的に興味を持っていて。
 しかし研究不足にも思われた。
 単に殲滅派と対立する者の集まりか?

 ただ、それでも。
 歩み寄ろうという意思はある。
 邪険にするよりは対話。
 交渉の窓口として利用したい。
 ブランなど箱入りだというし。
 うまく誘導出来ると良いが。

 それから……シュテルン軍。
 リュドミラ達はどうしただろう。
 公主に通信は取った?
 分からない、とユッタ。

 通信魔法、イーディス公主。
 北方からシュテルン公国が……

『どっせええええい!』

 公主、騎馬突撃中。
 邪魔しちゃ悪い。
 後で掛け直そう。

 敵には人間が見えた。
 シュテルン公国に対応中だろう。

「まだ寝てなくて良いのかい?」

 照明魔法の灯りと共に。
 巡回中か、上級魔女シャンタル。
 フレスヴェーナ派。
 フレスさんやヘリヤ。
 他派閥は大魔女フッケバエナ。
 フリアリーゼも来ている様子。

「何かねー、フレスたんが居ても立っても」
「ああっ、こら、シャンタル!」
「わーい、逃っげろー♪」

 頬を赤らめ、フレスさんが追う。
 逃げ回るシャンタル。
 夜遅くまで元気だな。

 と、フッケちゃんから。
 気を落とさない様に言われる。
 損害状況について耳に入れた様だ。

 シャンタルも、アレは意図的か。
 賑やかしているんだろうか。
 単にふざけているのかも分からんが。

 戦況。南は魔王軍。
 ブルガリアの半ばまで後退した。
 北方はシュテルン公国。
 挟撃は出遅れた模様。
 イベント参加組からも参戦があった。
 押し返しつつある。
 今、公主様が暴れているのが、それ。

「そっ、それはそうと新魔法なのだが」
「そ、そだそだ、凄い爆発した奴」

 フリアとフッケに詰め寄られる。
 わざわざ大魔女が3人出向いて来た。
 そんなウワサにでもなっているのか?

 先に売り上げとスキルポイント。
 販売数77件。売り上げは905万。
 またブッ飛んでるな。

 スキルポイントが77追加。
 現在197になっている。
 ここから30ずつ振る。
 伝授可能レベルを6件追加する。

 まずは興味対象。
 燃料気化爆発魔法を第1に。
 伝授の為、村外れで披露して見せる。
 爆風、爆音、キノコ雲が上がった。
 節制発動でも結構音が大きい。

「うわっ!」
「何だ何だ!」
「て、敵襲!? 敵襲ーっ!」

 子供達が集まって来てしまった。
 ごめん。ホントごめん。
 説明してから始めれば良かった。

 引き続き、披露と特許申請依頼。
 対アンデッドは除霊魔法と鎮魂魔法。
 治癒術は骨折を治す整復魔法。
 測量魔法、空調魔法も追加する。
 燃料魔法もレベル上げてある。
 申請しておこう。

 溶解魔法、圧殺魔法と。
 窒息魔法も、またの機会に。
 怒りに任せて作った虐殺の魔法だ。
 本音を言えば、あまり広めたくない。

「魔女の攻撃魔法。搦め手。
 アリだと思うんだけど。
 ま、派手なのが1つ入ったから良い。
 あの、エンリョー……何とか?
 メイアとかいう奴、知ってる?
 負けてらんないじゃん」

 フッケバエナ、賞賛。
 燃料気化爆発魔法。

 聞けばロードメイア。
 派手な新魔法を作ったらしい。
 天地鳴動魔法?
 名前だけで凄そうだな。
 字数は勝ってるよって。
 そこは重要でないと思うが。

 ともあれ、武闘派フッケバエナ。
 攻撃魔法まだまだ募集中だそうな。

 ちなみに昨日の申請結果。
 閃熱魔法が攻撃Aクラス。
 地裂魔法、防音魔法、多目的B。
 芳香魔法は生活B。
 精製魔法は生活Aクラス。
 それぞれ特許取得に成功した。

「ではな。次は首都で会おう」
「帰る途中で、すっ転ばないでよー?」

 魔女達は2人。
 フリアリーゼ、フッケバエナが帰還。
 フレスヴェーナ派は残留。
 周辺警戒に参加してくれる。

 交代で休もう。
 家に帰るまでが遠足だ。
 厄介な2泊3日だったな……



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