黒鷲の旅団
12日目(6)悪くないけど悪巧み
『無茶しよってー』
『もう殴り込もうかと』
ヘリヤ、シャンタルと通信。
何か仕返しがあっても怖い。
安全確保を優先して下さい。
通信で先に無事を知らせた。
魔女達も幾らか落ち着いた様子。
転移は使わない。
街を見ながら歩いて帰る。
包帯を巻いた怪我人。
難民らしい姿も多い。
戦争直後の街だ。
まだまだ傷跡が残っている。
「あ、ああ、良い所に。
いや、恥ずかしながらというか」
途方に暮れたレイニさん。
村の人々を見つける。
どうした。
神聖教会で援助を断られた?
「もう難民で、いっぱいだってさ」
「どこを頼って良いか分からなくて」
ひとまず東下層区のボロ教会へ向かう。
するとシスター・メアリが困り顔。
「もうご存知かも知れませんけれど。
住む所を追われた人々が大勢。
大勢です。街に集まって来ています。
食べる物を買おうにも、お金が。
値段が上がっていて……」
どうやら食料問題は深刻だ。
ひとまず余っている食料を提供。
と、夜露だけでも凌げれば。
レイニさん達に寝床を頼む。
後の食料確保について。
これはこちらでも何か考えてみる。
酒場に足を運ぶ。
既に子供達が集まっていた。
裏手では花人達で農耕魔法。
ガイゼル隊も収穫を手伝ってくれた。
イモや何かで昼飯にする。
女将も食料に困っていた様だ。
調理代はタダにするからと。
自分の分も欲しいという。
昼食……の途中。
異端審問官と神殿騎士団が来訪。
一応、大司教様には許しを得たが?
と、それは知っていて。
休戦宣言に来たと神殿騎士団長。
「一体どういう手を使ったのだ。
この悪魔の手先め。
今は見逃してやるが。
いずれ天罰をくれてやる」
異端審問官ベルトラム。
脅しのつもりか。
気に食わんのはお互い様だ。
遠からず、逆に鉄槌をくれてやる。
お前達の得意分野で勝負してやる。
覚悟しておくと良い。
「不遜な奴め……ええい、忌々しい」
悪態をついて異端審問官達が引き上げる。
入れ違いに大魔女達が集まって来た。
「大丈夫か? 今の奴ら……」
「やっぱり、あたしゃ気に食わないねえ」
「仕返しに行こうよ。名分はあるだろ」
大魔女フリアリーゼ。
レイヴンヒルト、フッケバエナ。
一戦交えるのも辞さない様子だが。
しかし、あんた達が血を流す。
それはそれで見るに堪えない。
そこで仕返しの方法を考えた。
耳を貸せ。絶対外部に漏らすなよ。
初手を間違わなければ奇襲にもなる。
内容。武力は使わずに。
ごにょごにょごにょと。
「ぶっ! ふははは!
なるほど、得意分野だ!」
「目に浮かぶじゃないか。
連中の慌てふためく顔がね」
「良いね、気に入った。
やろうよ!」
大魔女達から賛同を得られた。
心強い事だ。
いかに市民の支持を得られるか。
これがカギとなって来る。
花人隊は魔女協会の敷地へ。
畑を借りて農耕魔法。
食料品の生産に取り掛かってくれ。
魔女協会には資金を1千万提供。
道具の手配、薬の提供と。
人手の確保を頼む。
給金を弾もう。
緘口令を徹底してくれ。
「形はどうあれ、教会とやり合うんだ。
嫌とは言わせんさ」
「地方に出てる子も呼び戻さないと」
レイヴン婆さん、自信ありげ。
フッケちゃんもお願いします。
ガイゼル隊も雇用したいが。
難しいかな。強制はしない。
神聖教会に睨まれるかも知れない。
「良いぜ。あんたには借りがある。
あいつらの治療費、クソ高いしな」
「お高い連中だ。
鼻を明かすのは悪かないね」
頼もしげなガイゼル隊の面々。
雇用費は1人20万を出そう。
当日は市民の誘導を頼む。
直接的な衝突は避けられるだろう。
「おっちゃん、あたしらはー?」
イェンナの問い。
俺達は狩りに出よう。
酒場に掲示されている冒険者の依頼。
食料品の調達が幾つか並んでいた。
俺達の目的は、これの達成じゃない。
冒険者の依頼を出し抜く。
より多く食料を集めたい。
マイナさんはシャンタルが診てくれて。
義足はヘリヤが取りに向かった。
ジルケは念話魔法。
お喋りをして魔法練習だ。
マイナさんにも話してやって。
きっと喜ぶだろう。
フレスさん、何かの時はお願いします。
それと、出掛けにハミルトンの店へ。
調理器具を発注したい。
「何、明日までにだと?
結構な数だが……
ま、おめえさんの頼みだ。
何とか人手を集めてみよう」
材料については錬成魔法で鉱石を提供。
人手は鍛冶屋デトレフも紹介しておく。
東下層区の教会に居る。
良かったら声を掛けてみてくれ。
さて、用意も整った所で。
黒鷲団、出動するぞ。
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